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医療事故報告書が裁判に使われる!

2017年11月04日(土)

「医療事故報告書が裁判に使われる!」の意味が分かる人が増えて欲しい。
それがどうした、と思う人がいるだろうが、ツケは結局市民に回ってくる。
医療崩壊で困るのは市民のほうなのだが、理解できる人はほとんどいない。
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以下、坂根先生がMRICに書かれた文章。


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恐れてきたことが起きた 医療事故報告書が裁判に使われる!
~全国の医療機関は、センター報告の見合わせを~
 
つくば市 坂根Mクリニック
坂根 みち子
(医法協 現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会委員長)
 
2017年11月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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2017年10月07日読売onlineに以下のような記事が掲載された(記事ではすべて実名のため一部加工)。
○市の産婦人科医院で1月、無痛分娩をした女性が死亡した事件で、専門医らでつくる医療事故調査委員会が報告書をまとめ、院長○○容疑者(業務上過失致死容疑で書類送検)による容体急変時の処置について「蘇生に有効とはいえなかった」と指摘していたことが、わかった。警察も緊急対応に過失があったとしており、医学的見地からもミスが裏付けられた(1)。
その前には、次のような報道もあった。(同様に一部加工)
豊胸手術死亡で名古屋市がクリニック立ち入り 産経ニュース2017年3月9日
豊胸手術を受けていた女性会社員(32)が意識不明になり死亡した事故で、名古屋市は9日、手術をした○○区の「○○クリニック」を立ち入り検査した。(中略)
また医療事故調査制度に基づく第三者機関への報告をしていなかったため、届け出るよう要請した。女性は2月27日夜、同クリニックで豊胸手術中に意識不明になり、搬送先の病院で死亡。愛知県警が28日、業務上過失致死容疑でクリニックを現場検証した(2)。
 
2015年に始まった医療事故調査制度は、世界の医療安全の原則に則り、個人が特定されないように、個人の責任が追求されないように定めた上で開始された制度である。
そのために、報告書はどこの誰のことかわからないように「非識別化」することが省令で求められている。ところが読売新聞の記事は、報告書を元に書いており、公開されてはならないはずの個人情報と行った医療の評価が公にされてしまった。報告書が入手出来るルートは非常に限られている。制度の根幹を揺るがす重大な局面である。医療安全調査機構には徹底した調査を求める。
そして、この事例に関わった医療事故調査委員は再研修が必要である。紛争化している最中に、行った医療の評価をして過誤を認めれば、その報告書は裁判において決定的な証拠として使われてしまう可能性があること、その点も考慮して報告書の「非識別化」が求められていたことを理解していなかったからである。
また読売の記者もスクープのようにこれを報道することが何故問題なのか、永年にわたる医療安全の議論、責任追及でなく再発防止に主眼をおかないと結局医療安全は高まらない、そのためにこの制度が出来たということを全く勉強していない。他の先進国ならこのような報道はされなかったであろう。誠に残念な事態である。
同様に、医療安全推進の流れに水を浴びせかけたような警察の介入にも失望した。故意の犯罪ならまだしも、医療の結果責任を問うような業過罪の適応は世界の流れに逆行している。日本で刑法を変えるのは非常にハードルが高い。分娩施設が危機的状況まで減少する中で、このようなやり方は角を矯めて牛を殺してしまう。永年まじめにお産に取り組んできた医療機関が、何かある度にお産の取り扱いを止めてしまったらどうなるのか、社会全体で真剣に考えなければいけない問題である。必要なのは、刑罰に処してお産を扱わないようにするのではなく、より安全なお産が出来るようサポートすることである。
 
名古屋の事例は紛争化している最中に、こともあろうか市の職員が、医療事故調査制度に届け出(正確には報告)するよう要請している。この制度による報告は「加えた医療による予期せぬ死であると医療機関の管理者が認めた時」にするもので、市の職員に報告要請の権限はない。まして紛争化している時に前述のような不適切な報告書が出来上がり、それが処罰のための証拠として使われてしまったら、一体名古屋市はどのようにして責任を取るつもりであろう。制度をよく知らないクリニック側が言われた通りにするのは目に見えている。
万が一にも、市の職員が警察と協議の上、報告を要請したものでないことを祈る。
 
私たちはかねてより、今回の制度は未来の患者のための制度であり、紛争化したら この制度にのせるのは一旦待つように主張してきた(3)。また当初より、報告書が個人の処罰に使われないよう、報告書の書き方に注意を促し、報告書を手渡さないようガイドラインに記載してきた(4)。
全国医学部長病院長会議でも、紛争化事例の報告は一旦停止するよう、日本医療安全調査機構の医療事故調査支援センターに同様の申し入れをしている(5)。
ところが、センター幹部 木村壮介常任理事や運営委員会委員長の樋口範雄氏は全く聞く耳を持たず、紛争化している事例であろうが報告するよう広報してきた(6)。
今年の1月31日に開催された委員会の記事(7)を挙げる。
日本医療安全調査機構は1月31日、2016年度の第2回医療事故調査・支援事業運営委員会を開催、係争中の事例であっても、医療事故調査制度におけるセンター調査を実施することを確認した。センター調査は、再発防止策策定のために行うものであり、「そもそもそうしたこと(紛争等)と関係しない制度としてスタートしたのだから、係争中だからと言って、手を引くのはどうか」(運営委員会委員長を務める、東京大学大学院法学政治学研究科教授の樋口範雄氏(肩書きは当時))。
 
そして危惧した通りのことが起きてしまった。当事者の秘匿性と非懲罰性の担保という大原則が無視され、医療安全の推進どころか、当事者が第2の被害者になろうとしている。
私はこのような事例が一例でも出れば、制度は実質瓦解するであろうと警告してきた。罰せられるのなら報告しなくなるのは当たり前である。
医療安全調査機構は医療事故調査制度のセンターとして不適格である。
医療事故調査制度には、他にも日本医療機能評価機構が行っている医療事故情報等収集事業がある。組織の生き残りをかけて事故調のセンターポジションを確保した日本医療安全調査機構は潔く撤退されれば良い。
 
全国の医療機関の管理者は、警察や市の職員、センターの要請で事故報告することがあってはならない。報告するかどうかの判断は管理者自身であり、その判断により罪に問われることはない。むしろ報告書の書き方やどういった事例を報告するかをミスリードしているセンターの言う通りにすると、医療安全の推進どころか、医療機関の存続に関わる問題となり、かつ残りの人生をかけて民事と刑事訴訟で闘わなくてはいけなくなることが今回のことではっきりした。
この国では、未だに再発防止のための制度と責任追及のための制度の切り分けが出来ていないのである。

参考
(1)http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20171007-OYO1T50015.html?from=tw
(2)http://www.sankei.com/affairs/news/170309/afr1703090035-n1.html
(3) Vol.004 「木村壮介氏は辞任せよ」~医療事故調査・支援センター・木村壮介先生へ医療現場から辞任のお願い~ http://medg.jp/mt/?p=7245
(4)医療事故調運用ガイドラインhttps://www.herusu-shuppan.co.jp/874-2/
(5)「裁判になれば、事故調制度は停止を」全国医学部長病院長会議が申し入れhttps://www.m3.com/news/iryoishin/462895
(6)紛争・訴訟事例でも“センター調査”実施 ? 木村壯介・日本医療安全調査機構常務理事に聞くhttps://www.m3.com/news/iryoishin/476931
(7)“事故調”、係争例もセンター調査の対象に 日本医療安全調査機構、運営委員会で確認
https://www.m3.com/news/iryoishin/499221
 

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この記事へのコメント

医療の不確実性の原則に則り、医療界自らでは
悪質な処置、重大な過失のある処理を排除出来なかった。

皆が、安全な医療のために!と思って・・・
医者は、「匿名性・罰することなく、」
警察は、「繰り返させないために、」
市民は、「事実の共有が改善に繋がる。」

そして、医療が壊れていく・・・というストーリーでしょうか?

Posted by うーん at 2017年11月04日 08:31 | 返信

「医療事故報告問題」で困るのは、医療者か市民かと、単純には論じられない。
「死者」当事者に、登場してもらいたい。
どこかのドラマではないが、「死者」の声を聞いてみたい。

去年5月、オバマが「核ボタン」を原爆ドームの前に持ち込んだように、
1年後の今日、旧US占領軍ゴルフ場内に、トランプが同じその黒カバンを持ち込んで、
ポチ・シンゾウとのゴルフに興じていた。
去年、「オバマ美談」に酔い痴れたひとびとは、イバンカや、
トランプ夫人の、胸の「谷間」にしか、関心がないのだろうか。
日米の似た者同士の正体が、地球の「首吊り士」のように、見える。

石破が、日本核武装技術と材料の確保のため、原発再稼働はゼロにはできないと、
巨大与党のホンネを語った。

Posted by 鍵山いさお at 2017年11月05日 11:19 | 返信

・・・ツケは結局市民に回ってくる。
医療崩壊で困るのは、医療者ではなく、実は市民のほうが被害甚大なのだ・・・
こういった記述は誤解を招くと思いませんか?

長尾先生は、けして医療者保護のお立場ではないと存じます。
しかし、「医療者側に甘い」主張となっていることにお気づきではない。
まあ、ご自身が「訴えられるかもしれない恐怖」を常に感じておられるからでしょうが、
訴訟を起こす側にはそれなりの理由があります。

その理由の大半は、「医療者の傲慢さ」であり「医療者の反省の無さ」に対する憤りです。賠償金が絡んでくるのは、一般市民だけでは訴訟を起こすことが困難だから、どうしても弁護士や少額訴訟であれば司法書士、などの訴訟の専門家を介することになります。
彼らは医師のように税金でごはんを食べているわけではないので、どこからか生活費をもらう必要があり賠償金の何%かが成功報酬となる。至極当然のハナシです。

訴訟を起こす側が求めているのは、医療者側の反省であり誠意であり良心であり真心であり今後の改善へ向けた努力志向であります。

訴訟が増えても医療は崩壊しませんよ。
訴訟が増えることは、医療を一般市民の手に取り戻し市民が自分達の問題として改善を試みていく良い機会が増えることなので歓迎すべきです。
医療訴訟を怖がるのは、後ろめたい医療者だけだと思います。

Posted by 匿名 at 2017年11月07日 03:06 | 返信

匿名様
同感です。
「後ろめたさ」があるから医療訴訟を非難するのでは?

司法が入らなければ、不法行為に市民は泣き寝入りするしかなくなるのでは。(充分、医療過誤は専門性が高くいまだに泣き寝入りするしかない人も多いでしょうが)

もし、あなた自身やあなたの大切な人が
教育現場で、学校内でいじめや学校行事で不審な亡くなり方をしたら、
職場でパワハラや長時間労働で過労死したら、
歩行中に仕事中のトラックにはねられたら、
何かのサービスや製品(商品を)使用後に大きな障害や死亡したら、
もし、飲食店で飲食後に食中毒をおこし死亡したら、、、

それが仮に疑いであっても「○○(例えば、教育業界や飲食産業)産業や業界が萎縮する。」という理由、原因の解明や訴訟をおこす事ができなければ、どのように感じるでしょうか。

改善することはその業界の質の改善にもつながります。
また、そうでなけば独裁政権と同じです。

Posted by イチゴ at 2017年11月07日 04:36 | 返信

ADRというのがあります。
Alternatie Dispute Resolution
代替的紛争解決とでも訳すのかしら、と思っていたら、
国民生活センターのHPでは「裁判外紛争解決手続」とありました。
http://www.kokusen.go.jp/adr/

医療ADRというのもあります。
https://www.toben.or.jp/bengoshi/adr/qa/patients.html
(例として)質問No.60
母が病院で急変して死亡しました。私は、病院にお金を請求するつもりはありませんが、第三者の立ち会っている場で、母の死因について、医師から説明を受けたいと希望しています。「あっせん人の立ち会っている場で、説明することを求める」という内容の申立でも、受け付けてもらえますか。
回答
医療ADRは、医療紛争に関する当事者間の自主的な紛争解決を支援する手続であり、金銭請求もできますが、それ以外の事項についても話し合うことができます。
診療経過や死因・後遺障害の原因について説明を求めて申し立てることもできます。

私は法律関係者ではありません。職無しで年金が出るまで預金をちょびちょび使って半額生活をモットーにしている下流老人予備軍です。
そんなおばさんでも、医師に対して、医師を中心とする医療者集団に対して、黙って耐えてはいけないと感じる深い思いが、たくさん、あります。
私が欲しいのは賠償金ではありません。
医師が、心から謝罪し反省し、今後の業務において、患者一人一人の人権を考え、患者の人生に寄り添った医療を行うために、何をどうすればよいのか、真剣に考えてほしいのです。
市民による市民のための医療改革、その手段として、訴訟があり、ADRがあります。

Posted by 匿名 at 2017年11月08日 02:25 | 返信

医療関係者では無い、介護学院生です。
本 匿名さんは感情的にならずに書き込めると思っているのですが、以下本題。

当該箇所の意味を一般市民が理解できない事も問題の根源であり、
医療界側もその状況を一部は悪意に、多くは善意にした行為で、
不信感が増しているのでは無いか?と考えています。

医療者側は、ヒポクラテスの誓い 時代から 不確実性を前提にして侵襲行為を行っています。
そこには、過失や重過失でさえも(個人的には重過失は疑問ですが)免責。
あくまで、今後の医療安全・医療技術の進歩の為に 事故報告を収集して改善に繋げよう。
という趣旨です。
ここが解らない警察は介入してはいけない。解る警察のみにしないと。

端折りますが、その先に市民の利益があり・・・
そこが崩れると、医療者は安心して医療行為が出来ない。(医療者不足や医療拒否対応せざる・・・)

想像していただきたいが、
警察やマスコミに監視された状況での緊急手術を、萎縮せずに行える医師が溢れているとお思いか?
でも、それは「その状況に意を唱えない」一般市民も加担しているのでは無いですか?・・・と。
以下省略

これは、トクメイから匿名への返信 at 2017年11月08日 07:21 | 返信

少なくたもこの記事を批判されている御大が福島県立大野病院事件から何も学んでいないことだけはよくわかりました。
誰も責任取ってないですよね。福島県の周産期医療崩壊。
10年経った今でも崩壊しっぱなしの現実も見ようとしないのですね。

Posted by 匿名 at 2017年11月10日 04:17 | 返信

感覚ではなく、何らかの事案に基づく意見であるのは分かりました。
色々な立場の人に考えを深めるキッカケになるでしょうか?

ケースメソッドとして、あの事件のどの部分が「学ぶべき」と考えられますか?

誰かが責任を取る事案か否か?の判断があるべきで、
その前にいきなり、医師個人の責任を問うた病院の
(経営者の)対応に驚愕した記憶がありますが。

これは、トクメイから匿名への返信 at 2017年11月10日 10:10 | 返信

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