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日本人死因の第三位・肺炎の中身

2017年12月02日(土)

日本人死因の第三位は肺炎であるが、
「治さない肺炎」とは何なのか?
月刊公論の2017年12月号に書いた。→こちら

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公論12月号  日本人死因の第三位の中身
       「治さない肺炎」とは何か?
 
死因の第三位は肺炎
 現在、日本人の死亡原因の第三位は肺炎である。肺炎の原因として細菌やウイルスなどが知られている。一方、超高齢者の肺炎の9割以上は誤嚥性肺炎である。これは食事内容の誤嚥というよりも夜間睡眠中に口腔内の唾液などが気管に垂れ落ちて起きるものだ。肺炎の自覚症状は発熱や咳・痰だが、高齢者においてはそれらの症状に乏しいことがある。高齢者においてはなんとなく元気がない、食欲がないと肺炎も疑う。レントゲン所見や採血で白血球やCRP値で肺炎と確定する。薬物治療は抗生剤の注射や内服である。
 今年4月、日本呼吸器学会から「成人肺炎診療ガイドライン2017」が公表された。そのなかに「終末期の治さない肺炎」という新しい概念が示された。しかし多くの市民からその趣旨に関する質問が寄せられた。そもそも肺炎を薬剤だけで治そうとしても限界がある。その土台に横たわる脱水や低栄養や電解質異常を是正しないと治るものも治らない。しかし多くの誤嚥性肺炎が高度急性期病院に救急搬送されている。時には集中治療室で最期まで濃厚に加療されているのが現状だ。医療システム的にも医療経済的という観点から、また病院の機能分化という観点からも高度急性期病院以外の場での加療を考えないといけない。超高齢者社会における肺炎医療にもパラダイムシフトが迫られている。
 
 
「治さない肺炎」の意味
 「治さない肺炎」とはどのような意味か。以下は私の勝手な推測である。大病院の呼吸器内科は誤嚥性肺炎の患者さんの入院受け入れに四苦八苦している。呼吸器内科病棟は誤嚥性肺炎の患者さんが多くを占める。そこで呼吸器内科を標榜している高度急性期病院のなかには「誤嚥性肺炎は呼吸器内科では扱いません」と公言しているところもある。そうしないと肺がんや間質性肺炎などの患者さんを診ることができないくらい誤嚥性肺炎で一杯になるのだ。誤嚥性肺炎は抗生剤の投与により一旦は改善することが多い。しかし何度も繰り返すことが特徴で、最後には抗生剤も効かなくなる。一方、WHOから日本国内の抗生剤の使用総量の削減を求められているという事情もある。
 では誤嚥性肺炎で入院加療が必要になった時、市民はどうすればいいのか。もちろん治療を受けるべきだ。「治さない肺炎」に対して日本慢性期医療協会がいち早く反応した。武久洋三会長は「我々の療養病床が治す」と述べた。同慢協とは療養病床の集まりで高齢者医療に特化している。千を超える病院が会員になり年々、存在感を増している。同協会は従来の老人病院の「姥捨て山」や「何もしないでただ寝かしておくだけ」というイメージを覆してきた。老衰や肺炎だけでなく人工呼吸器や人工栄養が必要な患者さんも積極的に受け入れて、緩和ケアや終末期医療にも力を入れている。だから誤嚥性肺炎も「治せるものは治す」と宣言し、そのエビデンスを示した。
 
 
肺炎診断の遅れに2千万円
一方最近、病院や施設において肺炎で亡くなった後に遺族が診断や治療の遅れに対して訴えるケースを散見する。裁判や調停の結果、約1千万~2千万円の賠償金や和解金で決着している。しかし肺炎訴訟の報道を見るたび悲しくなる。原告の多くは子孫であるが、90歳を超えた親の肺炎死で医療者を訴えて多額の賠償金を払っていたら医療は間違いなく崩壊する。肺炎訴訟の増加は必ず市民にしっぺ返しとなる。そんな状況のなかで「治さない肺炎」が発表されたのだが。
今回のガイドラインは医療界が丁寧に国民に説明しないといけない。誤解が広がらないよう説明を尽くすべきだと思う。そもそも誤嚥性肺炎は治しても治しても繰り返して起こることが最大の特徴である。そしていつか抗生剤が効かなくなり治せない時が必ず来ることは当然だ。その時を「終末期」と呼ぶ。私は「平穏死」と題する書籍を数冊書いてきたが、「肺炎を治療するな」とか「人工栄養を行うな」と主張しているわけではない。あくまで終末期以降は過剰な治療を差し控えると穏やかな最期が叶うという事実を主張してきた。つまり問題の本質は、「肺炎を治療するか、しないか」という二者択一ではなく、「肺炎治療のやめどき」にあるのではないだろうか。肺炎を繰り返す例では、治療の「やめどき」を本人・家族と何度も慎重に議論すべきであろう。
 
 
認知症なのか、肺炎なのか
 認知症の増加が著しい。認知症とその予備軍合わせて約800万人という数字から、もはや認知症を「国民病」と呼んでもいいだろう。進行性の病気である認知症の根本治療法はまだ開発されていない。多くは10~10数年の経過を経て死に至る病気である。これだけ一般的な病気の割には死亡診断書の死因欄に「認知症」という病名を見ることは稀である。家族がこの病名を嫌がることに配慮するからであろうか。もしそうであれば、認知症への偏見がこんなところにも垣間見ることができる。
ではどんな病名が書かれているのか?私の勝手な想像だが、超高齢者であれば「老衰」と書かれるのではないか。あるいは「肺炎」と書かれる場合も少なくないだろう。しかし長年在宅医療で診ていた認知症の人が最後に肺炎を起こして治療の甲斐無く亡くなられた場合、死亡診断書に認知症と書くか、肺炎と書くか迷うことが時にある。もし肺炎と書けば、家族から「入院しなかったから死んだ」とクレームがつく恐れがある時がある。一方「呼吸不全」という漠然とした病名を書く場合もあるだろう。実際がんで亡くなられた大橋巨泉さんも105歳で亡くなられた日野原重明さんも、死因は「呼吸不全」であった。死亡診断書に書かれる死因は多分に社会的病名であり主治医の裁量がある。だから死亡統計は実態を反映しにくい。私は老衰死のなかに「誤嚥性肺炎」も含まれると考える。

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この記事へのコメント

「WHOから日本国内の抗生剤の使用総量の削減を求められている」からそれを実行するために高齢者の抗生剤をケチる。
なるほど。

いつの、どのニュースだったかは記憶していませんが、またリンクを探すゆとりは今はないですが、
日本の向精神薬の多剤大量長期処方ならびに精神科長期入院の異常性は世界的に突出していて、多方面から非難を浴びています。
また、向精神薬を長期服用すると若い人でも誤嚥を引き起こします。高齢者であればなおさら誤嚥性肺炎を引き起こす原因となる。

にもかかわらず、なぜ、高齢者への向精神薬投与を規制せずに抗生剤の投与をケチるのですか?
高齢者によけいなクスリを飲ませて肺炎にさせて治療せずに早く死なせるのかしら?
向精神薬はケチらず抗生剤はケチるの?

Posted by 匿名 at 2017年12月04日 07:47 | 返信

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