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救急医が台無しにしやがって・・・

2018年02月19日(月)

「救急医が台無しにしやがって」という少し前の記事がある。→こちら
読売新聞電子版yomiDr.のなかの「延命治療」に関する記事だ。
今、救急医療は良き終末期医療との狭間で激しく揺れている。


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以下は藤田保健衛生大学の岩田充永教授が
2016年8月のyomiDr.に書かれた記事。

【延命治療】救急医が台無しにしやがって……

テーマ:「延命治療」とは何か? 無意味な治療と必要な治療を分けるもの

 救急医は本能的に、苦痛を感じている患者さんを目の前にすると、「苦痛を取り除きたい」「救命したい」という本能を持っている人種です。夜中の救急外来で多忙を極める時など、冷静な判断力が低下しているときほど本能が前面に出てくるものです。

 ずいぶん前になりますが、救急外来で勤務をしている後輩救急医から午前2時に「心不全の治療で悩んでいます」と電話がありました。

 50歳代の男性が夜中に息苦しくなって救急車で搬送されたとのことです。血圧が非常に高く、血液中の酸素濃度も非常に悪い。胸部エックス線写真では肺に血液がうっ滞している肺水腫という状態で、急性心不全としては典型的な病状です。

 緊急の治療が必要な状態なのですが、呼吸状態を改善するためにNPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation:非侵襲的陽圧換気というマスクによって行う人工呼吸)を行い、血管を広げる薬剤を投与すれば、多くの場合は数時間で状態は良くなる――。この治療方針は、数年の救急医療のトレーニングを積めば迷いなくできるはずです。

 救急専門医の彼が、夜中に心不全の治療で悩むとはどういうことなのだろうと、不思議に思いながらさらに話を聞くと……。

 この方は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気で、年齢は若いのですが、ベッド上での生活をされていました。病状が進行すると呼吸筋も働かなくなって、呼吸をすることも十分でなくなり、亡くなる可能性がある病気です。

 ALSという病気は尊厳死、あるいは終末期医療で必ず話題になる病気です。この方の場合、かかりつけの医師、ご家族、本人との話で、ちょうど3か月前に、「気管に管を通すなんてとんでもない。マスクによるNPPVを含めて人工呼吸器の装着は望まない。心臓が止まった時も蘇生治療は行わない」という方針が確認されている、とご家族からはっきり聞いている。ただ、正式な書面は確認できていません。

 つまり、呼吸をする筋力が低下して息苦しくなっても、「人工呼吸器をつけるということはしません」という意思表示をしている人が、心不全で息苦しいという症状で受診した症例なのです。

 現場の救急医は、「今回、息苦しくなった原因は、ALSによる呼吸をする筋力の低下ではなくて、心不全によるところの方が大きいのではないかと判断できる。この状態であれば、心不全の治療を実施することで息苦しさが改善する可能性が高い。NPPVを数時間装着すれば、8割以上の可能性で良くなり、もう一度NPPVを外すことができるのではないか」と考えました。

 しかし、NPPVの装着は望まないという意思確認が、これまでの患者さんと医療者間の協議で行われています。この方にもしNPPVを装着し、「自分の予想が外れて、NPPVを外せない状況になったらどうしよう、今後の治療はどうしたらいいのか」と後輩は悩みました。家族からも「その機械は使わないことになっていますから」とはっきり言われているので、どうすべきか意見を聞きたい――という相談でした。

 救急医としては治療を行えば80%以上の高い確率で、症状は改善しNPPVも外すことができると考えているが、患者さん本人は苦しんでいて、コミュニケーションを図るのも困難な状況です。家族には「今回の病態はNPPVを装着しても、朝までに外せると思うのですが」と説明しても、「やめてください」という返答です。

 

私たちはどうすべきか? 電話で数分間ですが、以下のような議論を行い頭の中を整理しました。

 行おうとする治療は医学的に妥当か?

 医学的には、急性心不全で呼吸が苦しいのであれば絶対にNPPVを装着するべきです。患者さんの意向は「つけない」ということですが、それはALSで苦しくなった場合ならつけないということであって、心不全の場合の話し合いはなされていません。

 治療によって、その後のQOL(生活の質)はどうなるか?

 治療をすることで、80%以上の可能性で救急搬送される前の状態には回復することができるでしょう。しかし、呼吸状態が改善しなければ、NPPVを外すことができず、気管に管を通す行為(気管挿管や気管切開)など、本人が望まない状態になることもあり得ます。

 では、治療をしなかったとしたらどうなるか?

 息苦しさだけをとるためには塩酸モルヒネなど呼吸苦を改善する薬剤を使用することを検討しなければならない。ただし、苦しさは改善できますが、ALSで呼吸をする筋力が弱っていたとすると薬剤によって呼吸停止、あるいは呼吸がさらに弱まり、死期が早まる可能性があります。

 1~2分の議論でしたが、私は「8割以上の確率で治療をすべきと思ったのであれば、それは、やりなさい。その後に、なにか問題が生じたら責任者の私が対応するから」と言いました。

 結局、現場の救急医はNPPVを装着しました。この方は、幸運に数時間で呼吸苦は改善し、朝にはNPPVは外すことができました。

 しかし、ご家族としては当然、納得がいきません。つけないと言っていた機械を救急外来で初めて出会った医者に装着されたのですから……。

 かかりつけ医に連絡がいき、
 「先生、NPPVを外せなかったら、どう責任をとるんですか? これまで本人やご家族と話し合ってきたことを台無しにする延命治療になってしまうのですよ」とお小言を 頂戴ちょうだい しました。

 ずっと長く関係を築かれているかかりつけ医の先生に違うお考えはあることも理解できますが、救急医の立場としては、現場の医師が8割以上、この治療をすれば苦痛がとれる、という見込みがあってやった判断は、夜中の2時としては正しかったのではないかとも感じます。もしも、この事例でNPPVを外すことが出来なかったら――。私は後輩と一緒に患者さんやご家族、かかりつけ医の先生にただ頭を下げて謝罪することしかできませんし、「これまでのことを台無しにした延命治療」の代償は謝罪で許していただけるものではないのだろうと思います。

 しかし、「お前が診ているのは、その人の人生のほんの一瞬だけで、それで、何がわかると言うのか」というお叱りがあることも覚悟して述べますが、目の前に呼吸苦の人が現れ、適切な治療を行えば、苦痛を取り去って、救命することができる可能性が高い――。このような状況では、救急医は本能的にその方向に動いてしまう習性があります。たとえ、それが望まれないことであっても、予想しない悪い結果につながったとしても。

 救急の現場では、インフォームドコンセント(十分な説明を受けたうえでの同意)のために十分な時間を割くことが困難な場合があります。説明もままならず、理解や同意が得られない状況で、家族が望まない治療を、医師が「改善する可能性が高いから」と始めてしまったら、それは延命治療でしょうか?


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


とてもいい記事だと思う。
岩田先生は、日本尊厳死協会の本も執筆されている尊敬する救急医だ。

私も、もし救急現場にいれば同じように悩むだろう。
みんなで共有すべき課題だと思う。


そして
2月14日の読売新聞の第一面と三面の記事も秀逸だ→こちら

ヤフーニュースにもある。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180216-00010000-yomidr-sctch


日本救急医学会らは、「終末期患者さんへの対応ガイドライン」を公表している。→こちら
そこには「本人の意思表示がある場合は、それを尊重する」と書いてある。

と、私は思っていた・・・・

しかし咋年開催した日本・在宅救急研究会の席では、日本救急医学会の
横田理事長や太田理事らは、私に向けて以下のような趣旨の発言をした。

「平穏死が独り歩きして、私たちはとても困っている」

「リビングウイルは救急医には迷惑だからやめて欲しい」・・・



私は耳を疑ったが、大勢の参加者も聞いている。
ここで日本救急医学会の建前と本音は真反対であることがよく分かった。

他の医学会同様に、耳障りのいいガイドラインを出しておきながらも、
本人の希望やリビングウイルを全否定しているのが日本救急医学会だ。


たしかに難しい問題である。
しかし、公の席での暴言にもほどがある、とただただ呆れた。


リビングイイルが法的担保されていないことは救急現場にも影響が大きい。
法律の世界では、救急隊員や救急医はなにはともあれ救急蘇生法が優先だ。

3月10日の第117回近畿救急医学研究会の特別講演では
このあたりの現状や課題について述べてみようと考えている。→こちら


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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

ほんとに難しいです

いろんなお立場の方がいるので 考え方が違って当然のことです
「責任をとる」とよく耳します
もちろん わたしも責任を持って仕事をしています

看護師なので 自分が行った看護に関しての責任はとれますが その方の人生に対しての責任をとるなんて
恐れ多くて 発言できません
だからこそ
ご本人と関わり ご本人が選択したことであれば 遺された人も後悔は残るかもしれませんが
納得することができます

医者も看護師も…やれることがあるなら 勧めてみたいと思ってしまいますよね
本当に難しいです

Posted by 宮ちゃん at 2018年02月20日 09:27 | 返信

よく分かりませんけれど、「救急医が、台無しにしやがって」とはどなたも仰っていないのでしょう。
素人の私には、岩田先生のご指示も正しいし、救急現場の医師のなさった事も正しいように思えます。
ASLの患者さんは、普通どのような経過を辿られるのかは存じませんけれど、妥当な処置のようにおもえます。
むしろ、かかりつけ医師と、患者さんのご家族はどのような感想をお持ちなのか、不明ですけど、知りたいです。「救命医が台無しにしやがって」とは仰って無いと思いますけど、不満そうなお顔をなさったのでしょうか?今後、また再び救急車で来られたら、どう対応するのか、患者さん、患者さんのご家族、かかりつけ医と救急現場とがよく話し合っておかないと、こじれると大変な事になりそうです。
このケースでは、一時的にNPPVを使っても、的確に蘇生できたのですし、NPPVは外せたのですから、感謝させて当然と思います。しかし、家族さんのお気持ち、かかりつけ医の方針が、よく分かりません。
先日もケアマネジャーに対してクレームや裁判沙汰になりそうなケースのお話を聞いて、震え上がりました。

Posted by にゃんにゃん at 2018年02月21日 04:32 | 返信

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