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救急隊が現場でDNARを示されたとき

2018年08月25日(土)

救急隊が現場でDNARを示されたときの対応は、地域でかなり異なる。
本人意思を尊重する自治体があれば、一切無視するという自治体もある。
日本救急医学会の理事長は「本人意思など邪魔だ、迷惑だ」と公言した。

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救急隊が現場でDNARを示されたとき
   〜地域で異なる対応、今後に向けての議論~
 
 7月13日、消防庁「救急業務のあり方に関する検討会」平成30年度第
1回の会合が開催された。示された6項目の検討事項のうち「傷病者の
意思に沿った救急現場における心肺蘇生の実施」については、すでに2
回の検討部会(WG)が行われている。
 
▽救急隊員の17%が、書面によって心肺蘇生を希望しない意思を示した
心肺停止事例を経験、▽各消防本部においてDNARを表明している傷病者
への救急隊の対応が異なっている、▽約8割の都道府県及び地域メディカ
ルコントロール(以下、MC)協議会が、DNARプロトコルを策定して
いない、などの過去の調査結果が示された。現在、全国の728消防本部、
及び都道府県や地域のMC協議会を対象に実態調査を実施中である。
 
 2017年4月に日本臨床救急医学会から公表された「人生の最終段階に
ある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生等のあり方に関する提
言」では、傷病者が心肺蘇生等を希望していない旨を現場で伝えられた
場合の、救急隊の対処に関する基本的な対応手順をフローチャートに示
している。
 
まずは心肺蘇生を開始するが、かかりつけ医等に連絡し、具体的指示を
直接確認できれば、その指示に基づいて心肺蘇生等を中止する。
心肺蘇生を希望していない場合は119番通報をしないのが望ましいと
しつつも、救命のためには一刻も早い通報が必要であり、心肺蘇生等
を望むか否かを確認してからでは遅いため、通報の後で心肺蘇生等を望
まないことが明らかになる事例の発生はやむを得ないと付記している。
 
 この提言を踏まえ、埼玉西部消防局では、2006年から実施してきた
「救急隊員が行う救急救命処置に関する要望書」による運用をあらため、
2017年12月から「DNARプロトコール」を運用していると報告された。
 
DNARの申し出は、2018年5月末までの6か月間で11件あり、うち4件が
処置を中止して搬送、2件が不搬送となっており、処置の中止が過半数
(54.5%)を占めた。この割合は、旧手順による2017年1月〜11月末では
39.1%、2013〜2016年の4年間では、39.6%となっている。
 
 一方、大阪市消防局からは、2015年2月に発出した「DNARを告げられ
た場合の救急活動について」において “家族や関係者に消防法に基づく
救急活動を遂行しなければならない旨を十分に説明のうえ、必要な応急
処置を継続して医療機関に搬送すること” としているが、増えてきている
DNAR事案に対してどう対応するのか、ICや書面のことをどこまで現場
で聴取するのか、救急隊員の悩みがあると報告された。
 
 現在では、終末期の治療差し控えに対し、一定の手続きを踏めば刑事
責任は問われないといえる時代になっている(日本医師会第XV次生命倫
理懇談会答申)。人生の最終段階に向けて、かかりつけ医には、意思決
定支援(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)とともに、その意
思が完遂されるための支援も求められている。
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<ご参考>
総務省消防庁 救急業務のあり方に関する検討会
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h30/kyukyu_arikata/index.html
 傷病者の意思に沿った救急現場における心肺蘇生の実施に関する検討部会(WG)
 http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h30/kyukyu_arikata/syoubyousya/index.html
日本臨床救急医学会 人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生等のあり方に関する提言
http://jsem.me/wp-content/uploads/2017/04/臨床救急医学会提言(公表用).pdf
救急現場で遭遇する DNAR の現状と問題点
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/20/1/20_64/_pdf/-char/ja
日本医師会 第 XV 次 生命倫理懇談会 答申 超高齢社会と終末期医療
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20171206_1.pdf
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検討会資料(第2回WG、埼玉西部消防局)によると
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h30/kyukyu_arikata/syoubyousya/02/shiryo2.pdf
現場の滞在時間は、通常のCPA事案(17分36秒)と比べて、
DNAR申し出による処置中止事案では、平均約10分延長しており、
このあたり、救急隊の出動件数の増加が大きな課題となっている大阪では、
やや画一的?な対応となるのも、やむを得ないのかな、という意見もありました…。
 
 心肺蘇生を希望していない場合は119番通報をしないのが望ましい
先ずは、ここの徹底が、大切だろうとなりました。

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この問題に関しては、日本救急医学会は、否定的な見解である。
一方、日本臨床救急医会は、肯定的な見解である。

同じ救急医の団体であっても、スタンスはマチマチで
個人攻撃をするのは、個人的な勘違いが多い印象だ。

日本救急医学会の理事長や幹部が「リビングウイルなど邪魔だ」と
公言する理由は「そんなものがあると助かるものも助からない」だ。

じゃあ、本人意志はどうでもいいの?
彼らは、「そんなことは救急の専門医が決める」との見解である。

咋年日本在宅救急研究会を立ち上げた。
その場で、かなりの議論が交わされた。


この研究研究会は、今度、学会としてやることになった。
地域差があるので、今後は各地域別にやるべきだと思う。

今年の第1回日本在宅救急医学会は11月17日(土)に開催する。→こちら
私はその前に大阪で2つの講演の予定があるので参加できず、残念。

今年こそエラい救急医から前向きな発言を、期待している。
正直、咋年は、あまりのレベルの低さに唖然としたからだ。

この研究会は、市民も聞いているのだ。
同じ医師として本当に恥ずかしかった。


PS)
昨夜は停電後、風が怖かった。
自然の脅威に人間は勝てない。

今日の午後は、名古屋の隣の長久手市で講演する。
長久手市で話すのは、たぶん4回目くらいになる。

「元気で長生きする人、ボケて寝たきりになる人」
という珍しいタイトルだがきっと漫談になるはず。




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この記事へのコメント

救急車がらみで昨日読んだ記事が記憶に鮮明です。呆れるというか逼迫した現実を知らない平和ボケ日本人はほんとにボケるしかないのか、と。

「病院で待つの面倒」「ヘルパー来ず」119番
https://www.yomiuri.co.jp/national/20180824-OYT1T50033.html
「2016年の山梨県内の救急車の出動件数は約4万件で、うち約4割は入院の不要な軽症者だった。」
「甲府地区消防本部南消防署によると、119番した理由の中には「病院で長く待つのが面倒なので呼んだ」「ヘルパーを呼んだが来てくれなかったので、代わりに救急車を呼んだ」というものもあった。担当者は「119番があった場合、トラブルを避けるために、救急車の出動を断ることができない」と話す。」

救急車の出動を断っても良いのではないかしら?
「このような場合には要請があっても出動しません」と具体的に列挙して全国的に周知すればいかがでしょうか?

Posted by 匿名 at 2018年08月25日 02:04 | 返信

日本救急医学会の会長さんが本当にそんなこと言ってたのなら、かなりたちの悪いジョーク。どなたかは存じませんが、今頃深く反省しているはずです。手術に夢中になって、患者が麻酔不十分で痛いと言ってるのに、うるさい黙ってろとどなりつけてた医者の話を聞いたことがあります。患者を救うための手術なのに、すっかりその目的を忘れ、何のため、だれのためにやっているのかわからなくなっている、愚かな行為です。いつのまにか、患者のためが、すっぽり抜けて、医者の自己満足のためにやっているというケース。日野原先生だったらきっと、その先生に、あなたは救急医療のために良く頑張ってきました、その基本は人間愛ですよ、そのことを忘れてしまったら、それはもはや医療とは呼べない、人体実験になってしまいます、このことをこれからも肝に銘じて、よろしくお願いします、な~んてことをおっしゃってくれるのではないでしょうか。

Posted by 遠い声 at 2018年08月25日 08:18 | 返信

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