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進行しない認知症
2018年09月20日(木)
それはアルツハイマ型ではなく、神経原線維変化型老年期認知症。
結構誤診されているような気がするが、みなさま如何でしょうか?
金沢大学の西村先生がは発見した、神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)とは。
アルツハイマー病(AD)に似ているが、アミロイドβ(Aβ)の沈着をほとんど認めない
認知症として、1990年代に発見された神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)がある。
臨床的にADと診断される患者の2割前後がAβが陰性で、その中で
SD-NFTがかなりの部分を占めることが近年、明らかになってきた。
SD-NFTは、ADと比較して進行が非常に緩徐で、
記憶障害以外の症状を生じにくいなどの特徴がある。
SD-NFTは、海馬領域に多量の神経原線維変化(NFT)を有するが、
海馬領域以外に病変が広がらずAβ沈着をほとんど認めない認知症。
高齢になるほど発症しやすく、90歳以上の認知症発症例の約2割を占める。
ADと診断される患者の2割前後がAβ沈着がなく、SD-NFTが含まれている。
PETや脳脊髄液マーカーを用いた検査で病理を推定できるようになったが
SD-NFTでは、これらの検査でAβは陰性あるいは正常レベルを示す。
ADは進行する認知症で、記憶障害に加えて、見当識障害や遂行機能障害、
視空間障害などの記憶以外の認知機能障害も加わってくる疾患である。
一方、SD-NFTは、記憶障害が主な症状で、それ以外の認知機能障害は
あまり目立たないし、進行も非常に緩徐であるのが特徴である。
たとえば、10年間も全く進行しないADはあり得ない。
それはADではなくSD-NFTのような他の疾患である。
海馬領域に病変が限定するため、記憶障害はあっても性格の変化
が少なく、理性を保つことができるのが、SD-NFTの特徴である。
「もの忘れはあるけど、高齢だから仕方がない」と家族などの周囲が受け止めてしまえば、
病院を受診して認知症との診断を受けないまま寿命を迎える高齢SD-NFT患者もいるかも。
Aβを標的とした治療薬を開発する上でADなのか、Aβの沈着を認めないSD-NFTなどの
他の疾患かを鑑別する必要があるものの、80歳を超えた認知症患者では非典型例が多い。
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アルツハイマー型認知症では無いので、抗認知症薬の適応は無い。
もし間違って処方したら、大変なことになるだろう。
この一点だけでも、この病気を知っておく意味がある。
しかし経過を見ないと、鑑別ができないこともある。
私もこれ?
あなたもこれ??
話は変わるが、犬のアルツハイマー型認知症を知っているか?
そして進行するとどんな症状が出るのか、知っていたほうがいい。
ところで犬に神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)はあるのだろうか?
たぶん、無いのではないか。
犬には「短期記憶」という概念が無い。
犬には「自分」が無い、という話を昨夜の国立認知症大学で講義した。
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犬の認知症の末期症状2つ →こちら
高齢の犬には人間同様に身体の老化現象がみられます。筋肉が細くなったり、被毛の艶も失ってパサついた感じになったり白くなったり、食が細くなったり、逆に今までと同じ量を食べているのに太ってきたり、と老化の症状は様々です。
また加齢とともに脳細胞も変性していきます。人の場合も加齢により脳細胞が老化することで物忘れが起こったりしますが、犬の脳細胞の変性は人のアルツハイマー病と同様に神経細胞の変性や脱落などが発生することで起こります。
アルツハイマー病は脳の細胞自体が変化してしまうため、記憶障害から始まりさまざまな障害へと発展していく可逆性の無い病気です。犬の認知症の場合、アルツハイマー病と似た病変が見つかっていることから、進行性でありその進むスピードをゆっくりにすることはできても治すことができないと考えられています。
「認知症」の症状
人のアルツハイマー病の主な症状は「記憶障害」「判断力の低下」「言語理解力の低下」「時間・空間感覚の低下」が挙げられます。これが進行していくと、徘徊やせん妄、うつなどが起こったり、感情の制御ができずに激昂しやすい性格になってしまったりします。
犬の場合も同様で、認知症を発症すると徐々に今までとは違った行動をするようになります。
主な症状は
✔睡眠障害(周期が変化)
✔性格の激変
✔排泄行動の変化
などです。これらが一気に現れるわけではなく、初期はぼうっとしていて名前を呼んでも反応が遅い、遊びに対する意欲が低くなる、ちょっとトイレを失敗するなど、ひとつふたつのささいな変化として現れます。
「認知症」の末期症状
脳のどの部分に変性が多いかで顕著に表れる症状が異なりますが、末期では昼夜逆転が起こって夜泣きをしたり、徘徊(旋回)をしたりといった行動が出てきます。
ここでは末期に良く現れる症状についてまとめてみましょう。
睡眠障害
健康な犬は一日に12時間から14時間の睡眠をとると言われています。主に人が活動している日中に起きて、夜は熟睡するという睡眠リズムで生活していますが、認知症が進むとこのリズムが崩れてしまう場合がとても多いです。
睡眠のリズムが狂うと日中熟睡をしていて夜に目が覚めてしまう「昼夜逆転」の生活となっていきます。ただぼうっと起きていてくれるならまだ良いのですが、睡眠障害が出る場合は夜泣きもセットで現れることが多く対応がとても難しい状況に陥ります。
これを回避する(緩和する)ためには、日中になるべく多くの時間コミュニケーションをとったり日光浴をしてもらうなどして起きていてもらうしかありません。
徘徊
人間の認知症の場合も問題になりやすい「徘徊」ですが、犬の場合はただアテもなく歩くだけではなく、認知症が進行すると方向転換ができない状態に陥ってしまいます。障害物があっても後ずさって方向転換をすることができず、まっすぐ歩こうとして狭いところや部屋の隅っこにはまって動けなくなってしまうのです。
徘徊の症状は認知症が進行すると「旋回」という同じところをぐるぐる回り続ける行動に変化します。これは自分では止めることが出来なくなっている状態です。ベッドの位置や居場所へ誘導し、腰を落ち着けてあげましょう。
また室内の環境も、滑りにくい床材に変更してあげたり、隙間や角に入り込まないように柔らかい素材で柵などを作って侵入できないようにしたりしてあげましょう。
外出で目を離す際にはやわらかい素材のマット(バスマットや赤ちゃん用のコルクマットなど)でサークルを作り旋回を行っても怪我をしない、どこかへ迷いこませないといった工夫も必要です。転倒防止にマットのサークルの外側をベビーサークルなどで囲うと良いでしょう。
まとめ
脳細胞の変性というのは知能、精神のみでなく運動能力をも低下させます。脳細胞の病変が脳全体に広がることで、体の各機能は徐々に失われ臓器の機能不全が起こり寝たきりになっていきます。
現在の医療では一度進行してしまうと、犬の認知症の状態を劇的に良くする方法はほとんどありません。早期に対処して進行を遅らせることが一番効果的とされています。末期症状ですと余命等の個体差もありますが、急速に症状が悪くなることもあるそうです。
しかし認知症が進行して体が辛そうになったとしても、飼い主さんの介護の工夫で犬の生活の質を向上させてあげることは可能です。犬にとっては飼い主さんがそばにいてくれることが何よりの幸せですから、日々のコミュニケーションや栄養管理を大切に、犬と一緒の生活を過ごしてくださいね。
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この記事へのコメント
私の母は、父が定年退職をして家に居るようになってから、ひどい不整脈に悩まされました。
だから脳梗塞性の認知症だと思いました。であるから、早く適格な診断をしてもらって、脳梗塞のお薬を飲んだら、認知症の進行を遅らせると思ったのです。
でもその脳神経外科医が、MRI写真を撮っただけで「あんたはアルツハイマーや!!アリセプトを飲むように。MRI写真は患者の持たせたら危険やから、宅急便で紹介内科に送る」と言いました。
私の隣の奥さんもその脳神経外科医に「アルツハイマーや!」と言われたそうです。その奥さんは、友達の紹介で別のお医者さんに診てもらったら「ごく初期の脳梗塞ですから、アルバイトも、趣味の音楽も続けて良いですよ。でも車の運転は止めて下さい」と言われたのだそうです。私の母もそのお医者さんに診て貰いたかったのに、なかなか母が行くと言わなかったのです。やっと母を連れてそのクリニックに行った時はそのお医者さんは実家の横浜に帰ってしまっていたのです。
母は不整脈があった時も、循環器科のお医者さんに「ペースメーカーをつけませんか」と勧められていたのに、何故か頑固に拒否したのです。その時は、「将来脳梗塞になるかもしれない」と思いましたが、ただの脳梗塞なのに「アルツハイマーや!!」と怒鳴られる状況になるとは思いもよりませんでした。
早く良いお医者さんに診てもらいたいと思いながら、母も83歳と高齢でしたし、父の葬式や五十日祭(法事)に疲れて二度めのヘルペスが出てしまう状態でしたので、あまり東京や大阪などの遠くには行けない状態でした。年寄りの認知症は、身体的にも精神的にも弱ってしまった状態で出てくるので、良いお医者さんに診てもらうのが困難です。それで近所の「誰にでもアルツハイマーや!」と怒鳴り付けるお医者さんにしか見て貰えないのが宿命なんだと思います。
多くの人が市役所に文句を言いに行ったそうですけど、今でも平気で診療していらっしゃいます。ある市会議員のお母さんには丁寧な診察をして下さったそうです。患者によって全く診察態度が違うみたいです。母も自分の状態を甘く見ていたし、私もバカな娘だったと思います。
Posted by にゃんにゃん at 2018年09月21日 01:50 | 返信
神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)のご紹介、ありがとうございます。
わたしは、このSD-NFTタイプの認知症をセミナー・研修会で説明するとき、「あの『きんも100歳、ぎんも100歳』のきんさん、ぎんさんをイメージしてみてください」と説明するようにしています。
すると、受講者の皆様には、概ね理解しやすいようです。(ただし、ネットで調べてはみるのですが、なかなか確証は得られません。けれど、多分間違いないでしょう)
わたしは、最大限の敬意を込めて「スーパー・ばあちゃん」と呼んでいるのですが、まだ4~5人(低く見積もって)しかお世話したことがありません。最もお世話のやり甲斐のある超高齢者です。ちなみに、介護現場での経験から超高齢者の数%くらいの頻度でしょうか。
一方、「スーパー・じいちゃん」はと言えば、まだ1人です。男性は、女性に比べて寿命が短いこと、脳血管障害を生じやすいことも一因かと推測しています。
Posted by YOSHIKI at 2018年09月22日 01:35 | 返信
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