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認知症の経過中にがんが発覚したら・・・

2018年11月20日(火)

認知症の経過中にがんが発覚することが時々ある。
長生きすれば、認知症にもがんにもなるのは当たり前。
そんなことを「きらめきプラス12月号」に、書いた。→こちら
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きらめきプラス12月号


沖縄市にお住いの53歳独身男性会社員の方からのご相談です。

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5年前に母親が認知症に認定されて以来、近くにいる叔母や近所の人たちに助けてもらいながら市営住宅で74歳の母親と二人で生活をしています。
父親は私が子どもの頃に事故で亡くなり、母親が一人息子の私を育ててくれました。
母親が認知症になってからは辛いこともたくさんありましたが、いつのまにか母親を介護することは私の日常生活の一部になっていました。また、今までは毎日ただただ認知症と向き合う日々でしたので母親の最後に対してはどこか他人事の様な気持ちでおりました。
しかし、7月に母親に大腸癌が見つかり、手術は無事終えたのですが、肺に転移が見られ医師から余命1年余りと言われました。その時病院からは入院することを勧められましたが、母の希望もあり、病院には家で母親を看取りたいと告げ、母親と一緒に自宅に戻りました。
今はほとんどベットで横になっている母親ですが、時々思い出したように私の仕事のことを聞き、笑顔で無理をしないようにと話してくれます。少量ですが私の作った食事も美味しそうに食べてくれます。
母親には残りの時間をおだやかに過ごしてもらい、そして母親の最後を見届けるためにも私がもっとしっかりしなければならないと考えてはいるのですが、正直これから先のことを考えると不安でたまりません。
先生のご意見、アドバイスなどをいただければありがたいのですが、よろしくお願いいたします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


A)
認知症で療養中に大腸がんで弱ったお母さまを自宅で最期まで支えることを決意された貴方の選択を是非とも応援したいと思います。
 
お母さまは認知症があるとはいえ、自分がそう長くないことを感じて、それでもなお余生を自宅で一人息子と普通に暮らしたいと願っているのでしょう。母一人子一人で頑張ってこられた2人の絆を温める1年になることでしょう。医師が告げた余命は大きく外れることがあります。特に大腸がんは「のんびりがん」なので、1年という数字はあくまで大まかな目安と考えてください。
 
貴方がまず1番にすべきことは、最期まで自宅で診てくれるいいお医者さんをお近くで探すことです。朝日新聞社が発行している「さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん」というムック本を買ってよく読んでください。私が監修した本でネットでも買えます。看取りの実績が多い=緩和ケアの技術に長けている、と考えていいかと思います。ご近所でそのような医師を選び、相談に行ってください。たいてい相談機能を持っています。お母さまや貴方との相性を確かめてから依頼してください。
 
その次にやるべきことは介護認定の申請とケアマネ選びです。認知症と末期がんなら要介護1か2と認定されるはずです。在宅医に相談してからケアマネを選んでもいいし、口コミでいいケアマネを探してからいいお医者さんを決めてもいいかと思います。今後1年程度、介護者が就労と介護を両立させようと思えば介護保険の力を借りなくてはいけません。
 
今後1年間、もっとも頼りになるのは訪問看護師さんでしょう。これは在宅主治医とチームを組んでいる訪問看護チームを教えてもらいましょう。私自身も自分の法人の訪問看護師だけでなくいろいろな訪問看護ステーションと患者さんごとにチームを組んでケアしています。
 
意外に思われるかもしれませんが、リハビリも大切です。日々の生活を少しでも自立して楽しむためです。これはケアマネと医師によく相談して、通所リハビリや訪問リハビリの活用を検討してください。リハビリ制度は複雑なので、相談しながら決める以外に方法はありません。
 
食事量が減ってきているようですが、自然に任せてください。その結果、「枯れる」ことでたとえがん性腹膜炎と言われても最期までなにかしら食べられます。「自然な脱水」を見守ることで腸閉塞や腹水とも無縁になります。これについては拙書「平穏死・10の条件」などを参考にしてください。大腸がんは在宅で最期まで診ることに向いているがんです。同様の症例をたくさん経験しましたが肺転移の症状もほとんど出ないはずです。多少の呼吸困難が出ても自然な脱水が勝手に相殺してくれます。高カロリー輸液や在宅酸素は不要どころか、痛みや呼吸困難や吐き気を強めということを知っておいてください。万一、病院の主治医から勧められても拒否してください。
 
病院の主治医からは、「自宅では無理」と、私とは真反対のことを言われるかもしれませんが気にしないでください。多くの病院主治医は在宅看取りや平穏死を見たことも聞いたこともないので仕方がないことです。過剰医療で苦しめたうえに最期は「苦しむから」という理由で深い持続的鎮静を半数以上の患者さんに行っている病院もあります。在宅では認知症の末期がんへの深い持続的鎮静は考えられません。認知症があると幸いなことにがんの痛みも軽いことが分かっています。無用な不安も無いので認知症の効用もあります。自然な寿命より少しだけ短くなるだけと思ってください。なにより備える時間があるので決して運が悪いわけではありません。
 
最後に貴方の「不安」についてです。初めての経験で、まして相手は「がん」と聞くと、不安でたまらないでしょう。しかし知識さえあれば必ず最期まで看ることができます。もし私が主治医なら家族が入院を希望しない限り、100%自宅で最期まで看るのが日常です。
 
「平穏死という親孝行」(徳間書店)という拙書を是非参考にしてください。貴方は親から受けた御恩を在宅介護という形でお返ししようと思案されています。そうした行動は人間としてとても尊いものだと思います。10人息子さんがいたら、そんな人は1人くらいでしょうか。しかしそのような選択をされたことは決して後悔しないと思います。私のクリニックでは年に一度、在宅看取りをされたご家族をお招きして「振り返りの会」を開催しています。ご家族の率直な感想にスタッフ一同が耳を傾けます。なかには貴方のように息子さんが母親を看取ったケースもありますが、皆さん「在宅を選んで良かった!」と言われます。親孝行を成し遂げた満足げな笑顔がそこにあります。だから自信を持って前に進んでください。1年間は長いです。何度も旅行や外食もできるはずなので、諦めずに残された日々を噛みしめながら、楽しんでください。

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リンク記事には、先日の歌舞伎町での孤独死イベントのレポートも載っている。→こちら

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この記事へのコメント

「自宅」という概念は、時代によって文化によって年齢によって異なると思う。
長年同じ場所に住んでいる人もいればあちこち転居している人もいる。
自分の持ち家に長年住んでいれば、それこそ柱の傷ひとつにも思い出がある。そのような生活であれば、「在宅」とはまさしく「家という建物」が重要になる。
一方、最近は持ち家よりも借家を移り住む生活スタイルも確立しつつあり、「建物」にそれほど愛着が無い場合の「在宅」は、「自分の自由意志で生活できる」意味ではないだろうか。その意味で現在の「病院」は真逆だ。

「死ぬ間際まで自分の自由意志で生活できて、常に近くに医療者が待機して苦痛を取り除き急変に迅速に対応してくれる場所」で死ねれば理想的だと思う。つまりは「ホスピス」がもっと増えれば、本人も家族も自由で幸せな時間を過ごせるのではないだろうか。

Posted by 匿名 at 2018年11月26日 01:45 | 返信

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