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胃ろうか鼻からチューブか 人生会議で決めましょう

2019年03月02日(土)

きらめきプラス3月号の連載は、胃ろうか鼻からチューブで
迷っている人からのご質問に答えた。→こちら
しっかり「人生会議」をしてください。
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きらめきプラス3月号
 
Q)今回は香川県高松市にお住いの女性(59歳)からのご相談です。
よろしくお願いいたします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
85歳になる母の自宅での看取りについてアドバイスをいただきたいのですが。
母は、3年前に脳梗塞による左半身不随のため要介護5の寝たきりになり、5カ月の入院を経て老健施設へ入所しましたが、半年前から口から食事をとることができなくなり、病院の介護病棟へ移りました。現在、医師の勧めで経鼻チューブで栄養補給しています。入院時には意識がはっきりしていた母ですが、最近では話しかけても単語の発語はあるものの、ほとんど無表情のままです。医師からは、意識の回復の見込みは難しいとの説明がありました。そこで、以前から聞いていた母の希望を基に、家族(夫と二人の娘)で話し合った結果、なるべく早い時期に自宅へ連れて帰り、チューブを外し、自宅で看取るという方向で意見がまとまりました。病院にも家族の意向を伝え、了解を得ております。自宅で介護するにあたりどの程度のサービスが受けられるのでしょうか。また、どのような準備や覚悟が必要か、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
A)
そもそも「経鼻チューブ」は苦しいですよね。口の奥に常に管が通っていて気持ち悪いので食べられる人でも食べられなくなります。もし自分自身が鼻から管を入れられたままなら、食べられないどころか、死にたいと思うかもしれません。こんな方法に代わって「胃ろう」という人工栄養法が開発されたのが25年前のことです。しかし昨今の報道で「胃ろう=悪」という誤った認識が広がった結果、胃ろうを嫌がる人や家族が増えてしまいました。その結果、現在、胃ろう栄養の人は減少傾向ですが、経鼻チューブ栄養の人は再び増加傾向で、複雑な気持ちです。貴方のお母さまもその一人かと思いました。
 
臨床現場では一時的に経鼻チューブ栄養を用いることは日常的にあり得ます。しかし半年以上も経鼻チューブ栄養を続けることは私的には考えらません。だから主治医がこれまで胃ろう造設を勧めなかった理由を知りたいところです。いずれにせよ経鼻チューブ栄養を半年以上続けて口から一切食べさせなかったら、お母さまのように発語が少なくなり表情は消えるのは当たり前の経過です。最初から予想されたコースをたどっているだけです。
 
「死んでもいいから自宅に帰って管を外してあげたい」と願う家族がこれまで30人以上、相談に来られました。実際に家に帰ってきた約20人のうち3月以内に亡くなったのは3人でした。残りは口から食べだして、死ぬどころかどんどん元気になったのです。「家に帰ったらすぐに死ぬ」と言われて病院を退院した後、3年以上、自宅で口から食べて生きた人が数名います。だから「自宅に帰る=看取り」ではないことを最初にアドバイスしておきます。
 
家に帰る準備としては、事前の相談で貴方の想いを受け止めてくれる在宅主治医を探すことです。もしかしたらあまりいないかもしれません。私を頼って来てくれた人もみな何ケ所か断られてから来ています。多くの医師は訴訟リスクを恐れて引き受けないのではないかと想像します。貴方は良くても、兄弟や遠くの親戚が反対するかもしれません。まずは家族内で意見を統一する話し合いが必要です。そしてなによりも、リビングウイルを表明するようなお母さまですから、そして今も意思疎通が可能なようですから、病棟内で本人を含めて家族一同と主治医や関係者一同が集まって今後のことを腹を割って話し合っておきましょう。それを「人生会議」と呼びます。死を覚悟して家に帰ること、管を外し口から食べることにトライするという選択について、みんなが納得、満足するかしっかり確認をしあいましょう。
 
「そんな医師は見つからない」「どうやって探せばいいのか分からない」というならば、地域のケアマネさんに探してもらうといいでしょう。評判のいいケアマネさんに相談して、貴方の願いに理解がある医師を紹介してもらうという手もあります。いずれにせよ、自宅に帰るためには最低限、介護認定と介護ベッドが必要です。お母さまの状態は要介護5です。在宅主治医と訪問看護師以外に、もし食べられる可能性があるようならば嚥下リハビリのための言語聴覚士や食材の工夫のため訪問薬剤師や訪問栄養士のお世話になることも心づもりしておきましょう。なお医師以外はすべて介護保険制度下です。
 
もし私が主治医ならば、家に帰ってすぐに管を抜きます。驚かなくてもいいです。もし考えが変わったらまた入れたらいいだけですから、抜くことに私は抵抗はありません。管を抜いて少しお喋りして話ができるかどうか、どんな発音であるのかで、口から食べられる可能性を探ります。歯科医や耳鼻科医による嚥下内視鏡の所見は少しは参考にしますが、絶対的なものではありません。これまでに嚥下内視鏡で、「口から食べられる可能性はゼロです」と宣告されても家に帰った日から100%食べている人を何人も経験しているので、たいへん失礼ながら「絶対、○○できません」という宣告は信用していません。
 
ある研究によると、そのようにして食べさせた結果、約3分の2は口から食べられたそうです。つまり日本に何十万人もいる胃ろうや経鼻チューブ栄養患者さんの3人に2人は、口から食べられるのに食べさせてもらえないままあの世に旅立っているというのです。もっとはっきり言うならば、これは「誤診」です。この「誤診」の多さについては拙書「胃ろうという選択、しない選択」(セブン&アイ出版社)に詳しく述べましたので参考にしてください。この本の中で私は「ハッピーな胃ろう、アンハッピーな胃ろう」という表現をしています。貴方のお母さまは経鼻チューブ栄養で半年以上経過しているため既に食べることを忘れているかもしれません。私が述べたとおりにならない可能性が十分あります。しかし管を抜いて氷のかけらを口に入れてみてください。多少時間がかかっても「ゴクッ」と嚥下できれば少しでも食べられる可能性があります。人間には生きようとする生命力が備わっていますから、余力が残っていれば少しずつでも食べられる可能性があります。万一、一切食べられなければ7~10日間で死にます。しかし1日200mlでも口から入るならば、すぐには死にません。つい先日、そのような症例がありましたが、結局、2ケ月後に亡くなりました。しかしご家族はお正月を一緒に過ごせて、お屠蘇も飲まれたので大満足でした。頑張って、まずは理解のある医師を探してアドバイスを受けてください。

@@@@@@@@@@@@@@


PS)

昨日は、伊丹市医師会に呼んで頂き、ACP(人生会議)の講演をした。

と言っても、与えられた時間は当初は30分だったが、司会の先生の挨拶などで
私が話す時間は、正味15分しか無くなってしまい、かなり焦った。

3時間で話すべき内容を15分で話したので、上手く話せなかった。
まあ、仕方がないか。

そのあとのレスキュー犬の話がメインだった、ようなので、
どうやら私は前座だったことに、終わってから気が付いた。

まあ、前座にはなったのかな、と思う

 
 

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この記事へのコメント

私は看護師です。84才の父を最近自宅で送りました。脊椎菅狭窄しょうで、徐々に動けなくなり、感染症で、筋力低下、廃用症候群で、栄養低下となり、鼻腔栄養から、いろうにしました。鼻になくなると、口から、食べるようになり、水分と少しの注入で、あとは、おきにり、果物、ヨーグルト、味噌汁など食べましたよ。いろうから、水分が入るので、保つことできたとおもいます。いろうは悪ではありません。ギリギリに作るから、腸管がはたらかないんです。必要なければ、閉じればいいし、つかわなくてもいいとおもいます。

Posted by あらきとしこ at 2019年03月02日 09:08 | 返信

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