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患者は黙っとれ、延命治療は医者が決める!?       

2019年03月04日(月)

「患者は黙っとれ、延命治療は医者が決める!?」
信じられないだろうが、これが内閣府の公式見解である。
このあたりの事情を「公論」3月号に書いた。→こちら

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公論3月号 患者は黙っとれ、延命治療は医者が決める!
      世界で笑いもののニッポンの「患者の権利」
 
患者は意思表示するな!

 「人生の最終章での延命治療はゴメンだ」「管だらけの最期、スパゲッテイ症候群だけは嫌だ」、多くの高齢者は内心そう願っている。それを実現するためにはその意思を元気なうちに文書で書き残しておく必要がある。その文書を「リビング・ウイル(LW)」と呼ぶ。その一法として日本尊厳死協会に入会してLWを表明している人が11万人もいる。同協会はLWの普及・啓発とLWの登録・管理を行う団体である。40年以上に及ぶLWの普及啓発活動の結果、多くの病院や介護施設や自治体が独自のLWを作成するようになった。現在、日本人におけるLW保有率は3.2%と推計されている。この数字はLWが当たり前のものとして法的担保されている欧米諸国より1ケタ以上低い。アジアでは2000年に法的担保を終えた台湾でも、同じく2016年に法的担保を終えた韓国でもLWは当たり前の国民の権利として定着している。

 現在は、認知症になった時を想定して家族や代理人も署名も入った「事前指示書型のLW」が一般的になっている。しかし我が国は世界の先進国のなかでLWの法的担保がなされていない唯一の国である。そんななか、様々なLW啓発が全国各地で広がっている。たとえ法的担保がなされていない現状とはいえ日本においてもようやく患者が自己主張をし始めた。
そもそも国はLWに関してどんなスタンスなのだろうか?結論から申すならば、この1月までは「患者は黙っとれ、延命治療は医者が決める」が内閣府の公式見解であった。「患者がLWを表明すると医師の訴訟リスクが増す」がその理由であった。誰でも「今どき、そんな・・・」と思うだろうが、本当の話である。私たちも当然逆だと思うからこそ、LWの普及活動をボランテイアで続けてきた。しかし「LWは困る」という国の公式声明を聞いた2年前、思わず耳を疑った。「え?本人が意思表示しちゃいけないの?そんなバカな」。政府のLWへの公式見解が果たして妥当かどうかの判断を、司法の場に委ねることにした。

 
「リビング・ウイル裁判」の行方
 
 2015年一般財団法人・日本尊厳死協会は公益認定申請を行った。しかし内閣府は「LW普及に公益性は無い」と二度にわたり却下した。その論拠とは「LWがあると医師の訴訟リスクが高まる」であった。そこで2016年、東京地裁に行政裁判を起こした。2年に及ぶ公判での争点は「LWがあると本当に医師の訴訟リスクが高まるかどうか」であった。これは刑事や民事訴訟とは違い、判断の是非を問う裁判である。原告は日本尊厳死協会理事長の岩尾総一郎氏で被告は安倍晋三内閣総理大臣だ。長い議論を経て2019年1月18日、東京地裁で言い渡された判決は、私たちの主張が認められ、国(内閣府)は敗訴した。以下、時事ドットコムニュースから引用する。

一般財団法人「日本尊厳死協会」(東京)が公益認定を得られないのは不当だとして、国に不認定処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が21日までに、東京地裁であった。古田孝夫裁判長は「不特定多数の利益の増進に寄与する公益目的事業を行っている」と述べ、処分を取り消した。認定義務付けの訴えは退けた。判決によると、日本尊厳死協会は終末期の延命治療の拒否を意思表示する「リビング・ウィル(尊厳死の宣言書)」の普及・管理事業を実施。2015年に公益認定を申請したが、国は16年、「認定すれば国が事業に積極的評価を与えたと認識され、医療判断に大きな影響を与える可能性が高まる」と認めなかった。古田裁判長は「認定は行政庁が事業に賛同したことを意味せず、医療判断に影響が生ずるとは認められない」と判断した。内閣府大臣官房公益法人行政担当室の話 遺憾だ。判決内容を精査し今後の対応を検討したい。(2019/01/21-17:51)
 

沈黙するメデイア
 
 当たり前といえば当たり前の判決であろう。患者は自己主張するな、という国家など地球上どこにも存在しない。そもそも国は1月18日まで憲法違反の判断を続けていた。自分の幸せを追求する幸福追求権(憲法13条)やそれを自由に書き表す表現の自由(憲法19条)に抵触する。しかしこれほど大切な判例をテレビなどのマスメデイアは報じなかった。読売新聞が小さく扱っただけであった。医療界における反響もまさにゼロ。

 メデイアの沈黙だけでなく医療界が無反応であることに今度はショックを受けた。「患者の権利」という言葉はあるが、終末期医療においては国が否定してきた。医療界でも日本救急医学会は今も否定している。そんな現状をなぜメデイアが伝えないのか。新聞や週刊誌は必ず終活やエンデイングノートに関する話題を組みいれている。昨年、国策になった「アドバンスケアプラニング(ACP)」は、「人生会議」という愛称も決まりそれに関する記事一色である。しかし見出しには「本人の意思尊重」と書きながらも記事本文ではLWは何故か一切登場しない。それは国が「患者は黙っとれ!終末期は医者が決める」と言ってきたからなのか。いわば、「見せかけの本人の意思尊重」であった。ヒポクラテスの時代からの医療の大原則「本人意思尊重」が通用しない世界で唯一の国。世界から笑いものになっている不思議の国、ニッポン。昨今、若者たちが安楽死を自由に論ずる光景を頼もしく眺めている。しかしそもそも医療は誰のものか、患者の権利は尊重されるのかという議論から始めてほしい。情けないことに我が国はまだそんな段階。そのためにも今回の判決を国が真摯に受け止めることを切に願っている。
 


PS)
実は、今日3月4日17時から衆議院第二会館で、
国会議員さんら50名に講演をすることになった。

食支援の講演を依頼されたのだが、この話も加える。
たぶん、議員さんも全く知らないだろう。

今夜の診察は、休診せざるを得なくなった。
患者さんには大変な迷惑をおかけして、申し訳ない。




 

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この記事へのコメント

がん医療に限ってとしますが、患者の考え方を我々腫瘍内科医・緩和ケア医が正しく導かなければならない(時には誘導してもよい)という考えで動いていると見える医師グループが存在しているようです。がんになった患者は慌てふためいているので正しく判断できないそうです。正しい治療を受け、正しい時に正しく諦め、残される家族のために良き想い出とお金を残して、正しく死んでいくべきなんだそうです。そう言っているように見えます。最近は、少しでも長く生きるというコンセプトも加わったようです。
一見、妥当な主張かもしれませんが、出征兵士が笑顔で出征していくように、強制し続けた昭和の軍部と似ていませんか?
生死の問題も治療の問題も、患者本人が決めたいものです。

Posted by 樫の木 at 2019年03月04日 03:37 | 返信

自由でも民主でもなく、東アジアの他国と同じ強権的国家体制であることがよくわかりますね。
「庶民はお上の言うことに黙って従え」という精神は古来から根ついていて誰も疑問に感じないのか。
医療というのは本来患者と家族が主導で考えるべきであるのに、国民皆保険制度をたてに厚労省(国家)の決めたルールに全員強制的に盲従しろというのがこの国の現行の医療の本質だと思います。
生活保護の後発品処方の例とか認知症の薬の例のように、医者もそのルールに強制的に従わなければ罰せられるわけで、医者個人の裁量は無きに等しい。この件に関しては患者の生前意志よりも、カリフォルニアからやってくる親戚クレーマーの意志が尊重されるべきという事なのでしょうか?反論しない国民だから、理不尽な内容でも国家や権力者の父権主義的なやり方がまかり通るのでしょうね。

Posted by マッドネス at 2019年03月05日 11:50 | 返信

「そもそも医療は誰のものか、患者の権利は尊重されるのかという議論から始めてほしい。情けないことに我が国はまだそんな段階。」

日本国民が「情けないそんな段階」から抜けきれない状態が、現政権にとっては都合がよいのです。
「医療は医者のものである。医療は医者を頂点として医者に服従する看護師や介護師などコメディカルのものである。医療は製薬企業のものである。医療は医療産業発展のために存在する。医療産業発展のたに患者を苦しませてもかまわない。医療産業発展以外に、日本経済の未来はナイのだ。」これが現政権の本音である。

今現在、大半の国民は医療依存である。ちょっと熱があると内科医を受診する。ちょっと膝が痛いと整形外科へ。ちょっと口の中にプツッとできると口内炎かも、もしかしたら癌かも・・・
「お医者様へ行って診察してもらって検査してもらって、お医者様が「大丈夫」と言ってくだされば安心でしょ? だからお医者様へ行きましょう。お薬もらって飲みましょう。お医者様の言う通りに生活しましょう。・・・・・・死ぬ時も、もちろんお医者様の言う通りに、ね。」

この現状が変わるとどうなるか?
大半の国民が医療依存から脱却する。医者はガラ空き。クスリは在庫の山。病院のベッドにはカビが生える。
膨大な数の、食いっぱぐれがナイはずのコメディカルの給料を、どうやって払うの???

だから、現政権は、国民が未来永劫、「お医者様の言う通り」に生活するように仕向けている。
医者を批判するとそれだけで村八分になる。
ヤンチャな学童まで「お医者様」を受診して「おとなしくなるクスリ」を飲むように仕向ける。「クスリを飲まないなら学校に来るな」!!! 今の教師は教育者ではない。医者の手先だ。

日本尊厳死協会の活動は、不治かつ末期の医療問題だけではなく、まさしく「医療は誰のものか」という、国策に関わる問題であります。ゆえに、現政権は控訴したのです。「医療は国のもの、国民の生き死には国家資格者である医者が決める、日本国民は医者に隷属する」そのようなクニが、今の日本です。
多くの日本人は、自分たちが人権も自由も無いクニで生活している自覚さえ持っていない。
日本人の団体行動習癖、それを利用して洗脳してきた現政権、それに加担しているマスコミの責任は大きい。日本のジャーナリズムはすでに死んでいる。


Posted by 匿名 at 2019年03月05日 06:14 | 返信

私の父が、「死ぬときは、あんな管を一杯入れた身体で死にたくないからね。静かに死にたいからそうしてね」と言っていたのに、在宅で介護していた筈なのに、風邪ひきから肺炎になって、在宅医が雲隠れしたので、救急病院に入院させてしまった。院内感染MRSAに罹患して中心静脈栄養を入れて苦しむながら死なせてしまいました。父が死んだ時は、悪い事をしてしまったと思い、お骨や霊璽を置いた机を見るのも怖かった。その後、私自身は介護支援専門員協会で長尾先生から尊厳死協会を教えて頂いて、早速入会しました。私自身の死ぬときは、どうなることやら分かりません。なんでも保証人がいないと入院もできなきくなったそうです。病気になったら、もう自分の家で静かに死にたいと思っています。
東京の叔母は病気で入院した時、意識が無いのに「平穏に死なせてください!」とお医者さんに大声で叫んでいたそうです。お医者さんが「分かりました、分かりました。安心した下さい」と仰ったそうです。今は家で元気にしています(笑)。
家で死にたいと思っていたら、病院で死ぬことになったり、病院で死ぬとおもっていたら家で死ねたり、細木数子さんも「死ぬ時」は予言できないと仰っていました。
私は、親不孝であったし、あんまり功徳を積んでいませんので、ロクな死に方はできないと覚悟しています。

Posted by にゃんにゃん at 2019年03月06日 09:15 | 返信

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