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透析中に急変したら・・・
2019年05月08日(水)
私は長年透析を受けている患者さんも、何人か診ている。
多くは在宅医療であるが終末期のことを気にかけている。
なかには透析中に急変した時に心肺蘇生不要を望む人も。
多くは在宅医療であるが終末期のことを気にかけている。
なかには透析中に急変した時に心肺蘇生不要を望む人も。
透析患者=延命治療や終末期、ではない。
元気な慢性腎不全なら透析は、車いすや松葉杖と同じ。
しかし透析患者さんも、開始後10年ないし何十年後になれば、
腎臓以外の臓器、つまり心臓や肝臓や脳の機能も低下してくる。
つまり、「多臓器不全」に陥った透析患者さんが、終末期なのだ。
まず、ここを大前提として押さえておいて欲しい。
どんなに頑張っても医療の力の限界が近くなった患者さんは
こんな質問を投げかけてくる。
・いつまで透析するの? 死ぬ日まで? 死の瞬間まで?
・もし透析中に心臓が止まったらそのままにして欲しいけど。
透析を受けている患者さんも「最期は自宅で死にたい」という。
だから「透析中に急変したら自宅か長尾クリニックに連れて行って」と。
透析病院の主治医に、そうお願いしたら、透析医はなんと答えるのか。
「そんなことはできません。そんなことをしたら毎日新聞に叩かれて
当院が犯罪者扱いされて倒産してしまうので、病院搬送しかできません」
「いいえ、長尾先生が在宅主治医です。だから長尾先生に連絡してください。
最期はなんとしても自宅で迎えたいのです。だからお願いします。」
「それは絶対に無理無理です。東京の病院のようになりたくありません。
世間の常識に反することは絶対にできません」
「患者の希望は通らないのですか?」
「新聞に叩かれるようなことは絶対にできません。」
「とても納得できません・・・」
「じゃあ、当院の顧問弁護士と」
そんな相談を本人と家族から受けた。
以下は、仲介人からのメールである。(本物です)
-----------------
娘様からのメール
↓
お世話になっています。先程まで○○病院で話し合いがありましたが、東京の事件を受けて心配してるようです。
緊急体制の無い長尾クリニックに搬送するのは社会通念上受け入れられないという事でした。
刑事事件で取調べられたく無いという事です。○○病院の顧問弁護士に相談すると言ってました。
弁護士と長尾先生との話し合いになるかもしれません。
透析は延命治療のボーダーラインにあるから、既に延命治療を受けているという認識のようです。
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自分の家に連れて帰ってもらえない。
リビングウイルを聞き入れてもらえない。
心肺蘇生を拒否できない。
平穏死できない。
実は、毎日新聞の報道以来、そんな相談が増えている。
「死ぬまで止められないのなら透析導入は絶対イヤだ」
「家で死ねないのであれば、今日から透析に行かない」
フェイクニュースを垂れ流した毎日新聞は、以上の疑問に答える義務がある。
一連の記事を書いた矢澤記者に直接そう進言したが、今のところ反応は無い。
私は、自分の患者さんにはこう答えている。
「病院の透析医が悪いわけではない。新聞がそうさせただけ。
だから病院の先生にいくら詰め寄っても時間の無駄ですよ。
急変時は救急搬送されてもいいから、とにかく長尾に電話すること。
救命センターの医師と直接相談しながら、話し合いで決めるしかない。」
つまり、「とりあえずの救命措置を受けながら病状を確認して相談をする」なのだ。
やるかやらないか、という問題ではない。
たとえば頻拍性不整脈であれば簡単な処置で回復することもある。
要はケースバイケースで単純化できないのが、透析医療の終末期だ。
救急医も「これは無理だ」と言えば、救急車で自宅に帰ればいい。
昔、そんな患者さんが長尾クリニックに救急搬送されたことがある。
点滴室のベッドに1時間ほど横になり、そのまま息を引き取った。
無床診療所での看取り。
死亡診断書の死亡場所には、「診療所」に丸をした。
ええ?診療所でお看取りしていいの?
そんな質問をしてきた医師がいた。
いいに決まっているじゃん。
診療所も立派な医療機関なのだ。
道端で看取るよりもいいでしょう。
看護師や医師もいるしね・・・・
しかし、だ。
毎日新聞の悪意に満ちたニゼの報道以来、それも叶わなくなった。
マズメデイアの暴力は社会悪である。人間の尊厳を奪ってしまう。
今、ある、かなり進行したALSの患者さんを診ている。
何度も説得して胃ろうは付けて頂き、満足されている。
しかし迫る来る人工呼吸器の装着は、かたくなに拒否されている。
「だって、呼吸器っていったん付けたら、死ぬまで外せないでしょう」
そう、「いったん開始したら中止できない」と思わせてしまったのだ。
「やめどき」という言葉の存在をも否定する、自称人権派の知識人よ。
みなさんの奇麗ごとが、どれだけ多くの人の尊厳を奪っているのか
一度、考え直して欲しい。
私は、人工呼吸器を装着しているALSはじめ神経難病の患者さんを
常に何人か診ているので、自信を持って言えることがある。
「終わりは自己決定できるから、安心して開始できる」
人工呼吸器を装着しているALS患者さんが尊厳死協会に入会している。
実は多くのALS患者さんが、密かに「リビングウイル」を書いている。
なぜ「密か」なのか、聞いてみた。
すると驚くような答えが返ってきた。
「リビングウイルを書いたり尊厳死協会に入会したのがバレると、ALS協会や
その幹部から村八分になるので、みんな内緒で入って情報交換している」と。
要は、「隠れキリシタン」ならぬ「隠れ尊厳死協会員」がたくさんいるという。
なんてこった。
「なんのためのALS協会なんでしょうね?」と、
ALS協会の幹部が苦笑いして打ち明けてくれた。
福生病院を非難している人は、こうした意見にどう反応するのか。
「いや、意識が無くても可能性を諦めないことが何より大切である。
人の命は地球より重いから最期まで医療の手を緩めてはいけない」。
6月8日(土)18:30~新宿のロフトプラスワンで
「透析中止を考える」というトークイベントをやるよ。
ゲストは透析を受けているグレート義太夫さんと玉袋筋太郎さん。
MCは、元・日経新聞の浅川澄一さん、という豪華キャストでやる。→
PS)
明日は13時の飛行機で上京して、16時から新宿で「糖尿病と膵臓がん」の講演。
18:30から「認知症の24時間見守り」の研究会に出て、最終電車で帰阪する。
深夜の往診や看取りが年々増えているので、出張はなるべく日帰りにしている。
私は、「夜回り先生」でもある。
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この記事へのコメント
患者予備軍のひとりとして、福生病院にはお尋ねしたいことが10点ばかりありますが、
日大理事長と同様、公立病院長も公開記者会見から逃げ回っておられるようですので、
「病院は悪くない」「病院は優しくない」という、医療側の「医学的根拠」を読み漁ってみました。
結果、ぼくが引っかかっている最大の問題点が、やっと見えてきました。
最大の問題点は、病院側が「苦痛を除くのか」「透析を再開するのか」という「二者択一」を迫ったことです。
最大の問題点は、「苦痛を除く」ため「鎮静剤」を使用することで「意識をブロック」したことです。
最大の問題点は、「意識をブロック」することで、「意思の撤回」の自由をはく奪したことです。
行政や学会が「同意書の有無」のみに終始して、幕引きをはかることは許されません。
欧米の「安楽死法」でさえ、近年「意思撤回の自由」を無視した事案は違法とされているとか。
「福生事件」が、「病院VS新聞」という問題にすり替えられてはなりません。
今こそ「中庸」的視点に立ち返るべきではないでしょうか。
『藪の中』から出られないようでは、「尊厳死」法制化は、権力にとんでもない「同調圧力」を与えかねません。
現時点では、法制化は断念し、「自然死」「平穏死」「涅槃死」市民運動の原点回帰を望みます。
法制化運動にも、「やめ時」があります。
Posted by 鍵山いさお at 2019年05月11日 04:57 | 返信
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