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119番したばかりに・・・

2019年06月27日(木)

先日、患者さんからの依頼で、ある急性期病院にお見舞いに行った。
その患者さんは末期がんで在宅療養中であったが、転倒し119番。
4本の管に繋がれた苦悶一杯の表情で、「助けて!」と懇願された。
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鼻からイレウス管が入っている人を見たのは、10年ぶりかな。

在宅でイレウス菅を見ることは、ない。
「枯れて」いるから、サブイレウスに留まり、最期まで食べられる。

末期がんに、酸素の管を見ることもない。
酸素はがん細胞を喜ばすから不要である。

末期がんに高カロリー点滴を見ることも、無い。
大量のブドウ糖で大喜びするのは、がん細胞だ。

輸液ポンプ、酸素飽和度の機械、心電図、尿の管、
なんか、管と線だらけなので、とにかく驚いた。

自分も、35年前はそうだった。

沢山管をつけるほど、医療に頑張っているような錯覚に、陥っていた。
いや、自己満足で患者さんを苦しめる、という犯罪に手を染めていた。


「もうあかんでしょう」

患者さんは、泣きそうな声で投げやりに、そう呟いた。

返す言葉に困っていると、次の言葉が飛んできた。

「助けて!」

また言葉が見つからず、間が空いてしまった。すると、

「殺して!」

思わず、東海大学病院事件や射水市民病院事件が頭をよぎった。
まあ、私はただの見舞い客にすぎず、傍観者でしかないのだが。

見渡せば、同じような管だかけの人たちが恨めしそうに私を見ていた。

そうか、ここは、みんなそうなんや。
ここは、そういう場所なんや。

みんな「溺れて」いるんや。
食べるどころか、笑うどころか、死を待っているだけなんや。

普段、まったく違う世界に身を置いていることを痛感した。
同じ日本でも、場によって、終末期の姿は天と地ほど違う。


これだけ苦しんでいる人たちがうめき声をあげていても、若い医師や看護師は
平然と詰め所でパソコンと睨めっこで、時にテレビドラマの様に談笑している。

僕も35年前はそうだった。

しかし今は、かなり、違う。


ご家族はこう聞いてきた。

「どうしてこんな姿になったのでしょうか?」

「・・・・・・」  また、言葉が出ない。

「私が119番したからでしょうか?」

「・・・・・」

仕方がないので、微かに頷いたら、その途端に家族は号泣した。



大量の点滴をやめない限り、死ぬまで管は取れないし、食べられない。
難しい理屈を説明しても、もはや意味がないと判断して、こう呟いた。

「万一、家に帰ったらその瞬間からすべての管を外します」

でも極度の不安症の本人と家族には、そんな決断はできないことを知っていた。

重い時間が流れた。


ルビコン川・・・

戻れない橋をもう渡ってしまった、ようだ。
そう言わなくても、患者さんも家族も悟っていた。

十分な人生会議ができていなかった僕が悪い。
あまりにも調子がいいいので、119番の話をしていなかった僕が悪い。

もう会うことはない、かも、

駐車場に帰る道でそう直感した。

いや、毎日でも会いに行ってあげるのが元・主治医の務めじゃないか。

そんな天の声が聞こえて、引き返して、ご家族にホスピスの話をした・・・・


明日(今日や)、鹿児島市医師会でそんな話をする予定。→こちら

しかし、まもなく台風が鹿児島に向かって来るらしい。
ならば飛行機ではなく、朝一で新幹線で行くべきかも。

しかし13:30から尼崎市医師会の代議員会があり出席しないといけない。
あまり書かないが、公務と本業の合間を縫って、ギリギリで講演をしている。

昨夜は、21;30まで地域包括ケア委員会だったし、
今日は、介護認定審査委員会や役所に頼まれた雑用も。

公務と本業と講演の間に、台風が挟まると本当に困る。
もっと困ったことに明後日は東京に行かないといけない。

尊厳死協会の理事会と評議員会がある。
11万人もの市民の信託を受けている。


つまり、今朝誕生予定の台風3号に向かって西へ移動して
今度は、それをそれを乗り越えて東に移動という不安定さ。

まあ、なんとかなる。


























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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

末期がんの方を救急搬送することを家族が望まれる場合もあります。
少しでも生きてほしいと願っておられると思います。
長尾先生が医療介護連携をいっぱいされておられます。
私を尼崎に戻してください。

Posted by 峯 通子 at 2019年06月27日 07:41 | 返信

読ませていただいて 泣けてきました

うちの利用者さまも同様なことが起きてしまいました
94歳の男性のことです
いろんなご病気を抱えながらも穏やかにご家族を一緒におうちで過ごしていました
ある夜中のこと…
いつものようにトイレまでお一人で歩いて行ったんです
ドッカン!と音がして 娘さんが飛び起きて 見に行ったら
玄関に落ちて 頭から血だれけになっていました
うちの訪問看護に緊急コールがあり 頭部からの出血がひどく ご本人、ご家族と相談し
救急搬送、救急車を呼ぶ選択をしました
ご本人はしっかりお話もされています
翌日 入院先に伺ったら 頸部骨折していました
娘さんは 悩みます 手術すべきか 保存的治療でいくのか…
考えた末、保存的治療を選択しました …となると
主治医は 落ち着いたところで転院していただきますと話しが出ました
(これはいつものことです 急性期病院なので 手術をしないんだったら早く出てってくださいということなんです)そんなことを言われてしまった家族は困惑します
そうこうしているうちに
絶食中ですが 誤嚥性肺炎になってしまいました
胃瘻の話も出ましたが 円背もあり対象ではなかったです
そして 経鼻カテーテルも挿入できず IVHも鼠径からしか入れることができなく
見事に管だらけにさせられていました
「おそばが食べたい」
「家に帰りたい」
手にはミトンをつけらて 頸部骨折しているのに 首を振って 酸素マスクを外そうとしている姿を見ると
泣けてきます
これって 医療という名の拷問だよね!…と叫びたくなります

最後は 高熱を出し(IVHからの感染か?)旅立ちました

これでいいのだ…だなんて思えなかった
だからといって
娘さんに 家に連れて帰ろうよ…なんて言えなかった

なんなんでしょうね…

タラタラと文章を書いてしまいました すみません

長尾先生…
無理しないでくださいね

Posted by 宮ちゃん at 2019年06月27日 11:57 | 返信

デイサービススタッフです。ウチも本人は「入院したくない。これで終わりにしたい」と話してますが家族はそうでもないようで何かあったら救急搬送です。ウチのデイサービスは看取りはしてません。体調が悪くても自分の意思が伝えられる今、家族、ケアマネに話して欲しいと思いますが私の立場からは申し上げられなく歯痒く思います。

Posted by gako at 2019年06月30日 08:24 | 返信

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