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数ケ所の診療科にかかっているけど主治医がいない患者さん

2019年07月09日(火)

何ケ所かの病院や数ケ所の診療科にかっているけれども
主治医と呼べる人がいない患者さんが、相談に来られる。
一番大切なものに誰も気が付いていないことが、 ある。

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ケース1  なんのための抗がん剤治療?

肺がんで、A病院呼吸器外科で手術(成功?)
咽頭がんで、A病院耳鼻科で手術(成功?)
肝臓がんで、B病院でカテーテル塞栓術を繰り返している
狭心症で、C病院の循環器科でカテーテル治療を繰り返している
パーキンソン病で、C病院の神経内科で投薬過料中
以上に加えて、原発不明がんでA病院で抗がん剤治療中、という患者さん。

「私は、なんのために抗がん剤をやっているのでしょうか?
 やったほうがいいのでしょうかいいのでしょうか?」との質問。

診ると、要介護1くらいの状態でとても抗がん剤入院の対象ではない。
思わず、「やめたほうがいいと思いますが・・・」と言ってしまった。

「PET検査を受けたことある?」と聞くと
「数えきれないくらいうけ受けました」と。

沢山の名医にかかっているが、主治医と呼べる人がいない。
ほぼ同時性三重複癌なのだが、名医同士の連携は無いよう。



ケース2 誰も本質に気が付いていない?

意識消失発作を繰り返す透析患者さん。

腎不全は透析医が診て
意識消失発作は神経内科医が診て
肝臓がんは放射線科医が塞栓術を繰り返し
肝硬変症と診断されているが、データでは肝機能は正常。


私の診たては、本質は、先天性アンモニアサイクルの酵素欠損症で
クレアチニン2台で自尿もあるので透析離脱の可能性あり、と診断。

要はそれぞれの専門医はいるが、前医からの診断を引き継ぎ、
同じ治療が漫然と続き、みな自分の専門領域しか診ていない

でも、病態の本質には誰も気が付いていない・・・・



いつから医療がここまで臓器別に細分化されたのか。

それに違和感を覚えない医療界に、強い違和感を覚える。


田舎や離島で総合診療は必要だが、私は都会の混沌とした
医療事情の中での総合診療に挑戦している孤独な町医者だ。


「一人の患者を何人もの専門医が診るのが最高の医療だ!」
 と言って、頭や体をボコボコに殴ってきた医師会の幹部。

都会で総合診療をやれば暴行されても泣き寝入りの世界。
総合診療を否定するものが医師会の幹部に昇進する世界。

まさに命がけの挑戦。


総合診療を目指したのは19歳の時だ。
大学入学した日から無医地区研究会に。

日野原先生の本を貪るように読み、24歳の時、講演に招いた。
大学祭では、「プライマリケアと総合診療の未来」を企画した。

あれから40年。

何も変わらないどころか、臓器別細分化は加速するばかり。
医者も患者も臓器別専門医が一番偉い、と信じている時代。

総合診療への道は、長く、険しい。

最低10年位は、どんな科でもいいから専門性を高めて欲しい。
総合診療を目指すのはいいが、いきなり総合診療医はなれない。

救急、麻酔、全身管理、外科系などを最低1年はしないと。
人を助けることができない医者に看取る資格は無いと思う。

医学部を卒業していきなり緩和ケアや総合診療に行く人がいる。
プライマリケア連合学会は大歓迎だろうが、私は、賛成しない。

毎日、もどかしい。

40年かかって培ってきたこうした総合診療への想いを
どうすれば研修医や若い医師たちに伝えられるのだろう。


多分、無理だろう。

半分、諦めている。


コミュニケーションをできない医者が、人生会議なんてできるはずがない。

でもそんなこと言っても、なにも伝わらないしなあ。

今週、「在宅医療の9割はコミュミケーション」という講演をする。
しかしそんなことを言っても土台が無ければ、医療とは呼べないし。

自分を頼ってくる患者さんをしっかり診る。

不思議なご縁が、また新たな不思議なご縁を招く。

まさに曼荼羅医療。

それが町医者道。
それに徹する事。

































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この記事へのコメント

目の前の患者のために、頑張ってくれるお医者さん、長尾先生がおられることに感謝します。
始めから緩和ケアを目指すというのは、患者としても不思議な選択だと感じます。よほど、個人的な経験があって、その結果の選択なら理解できますが。
人はいつか死にますが、その前に、救える患者を死から救う医療がやはり必要だと感じます。そこを目指す人数が薄くなるのは何故でしょう。
緩和ケア医のお医者も大事ですが、虫垂炎や腫瘍の手術はなさらないでしょうから。

Posted by 樫の木 at 2019年07月09日 04:41 | 返信

治る病気なら臓器別が一番良いのでしょう。
治らない病気なら早い話如何にして楽に生きて楽に死ぬか、ということになるので、名医(笑)が臓器毎に細かくあれこれするよりも、苦しそうだからとりあえず麻薬をガンガンぶっ込むわ、みたいな医者の方が患者にはありがたいですね。
高齢化社会には治す医療の役割はあんまりないですからね。そもそも老化なんだから何やっても治らんですから。

Posted by 匿名 at 2019年07月13日 10:57 | 返信

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