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がん遺族からみた終末期鎮静の是非

2019年08月22日(木)

がん遺族会が、がん遺族を対象に終末期における鎮静の
是非を問うアンケート調査を行いその結果が公表された。
その論文では「鎮静は行わないのが最善」と結論づけた。

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『日本ホスピス・在宅ケア研究会 2019Vol.27,No1』

ホスピスケアと在宅ケア

がん遺族にとっての終末期鎮静の意味 中野貞彦  →こちら


在宅現場での鎮静率は、0~5%程度。
一方、病院やホスピスでは一桁多い。



その差について「在宅では簡単な症例しか診ていない」とか
「高齢者ばかり見ているので低い」と言う病院の医師がいる。

しかしその説明は間違っている。

在宅ホスピスは受け身だから、年齢で選ぶことはしない。
30代、40代、50代のがん患者さんも診て、看取っている。


私の想像では、病院では延命治療を最期までするので
「患者が苦しいから」という理由で鎮静に迫れるのでは。


末期がん患者さんに対して
1)1日2ℓの高カロリー(1200Kcal)点滴をするのと
2)全く点滴をしない、ば場合を比較してみよう。


1日2ℓの点滴を最期まですると、
・心不全、肺水腫による咳や痰
・胸水、腹水による呼吸困難、で苦しむことになる。

おまけに、高濃度のブドウ糖は、がん細胞の恰好のエサになる。
我先にとがん細胞がブドウ糖を取り込みがんが急速に増大する。


つまり、
。溺れる、ことに加えて
・がんを育てて、がんの症状を悪化させている。

当然、苦しい(痰や咳や呼吸困難やはんの痛み)ので
苦痛を緩和するために鎮静をしようと、いう話になる。

つまり医者が苦しめておいて、なおかつ
最期の大切な時間を眠らて奪おうと、する。


鎮静が緩和ケアの専門性であると自慢する医師もいる。

私には、自作自演の悪いドラマに映る。

滑稽なのは、医者自身、いや大病院の大勢いる医療職全員が
自分たちが冒している患者さんの尊厳に気が付いていない事。


一方、2)=在宅平穏死は、枯れているので鎮静需要は少ない。

枯れると、最期まで
・何かしら口から食べられる
・最期まで話ができる
・何よりも苦痛が少ない
・なおかつ、長生きできる、などいいことだらけ。


1)と2)なら、誰でも2)のほうがいいに決まっている。

しかし病院では、たいていが1)となる。
それは、点滴の「やめどき」という概念が無いから。

「枯れる」ことを
「待つ」、というを知らないからだ。

それを知ってもらうために、これでもかと本を書いて、
日本中を講演をして回っているが、一向に変わらない。


以上のような議論は、いくら医者同志がしても、論点が合わない。

なぜなら、病院の多くの医師は、平穏死を一度も見たことがないから。
見たことがないものは信じない、町医者の言う事など信じられないと。

私もかつては、1)であった。
2)をまったく知らなかった。

甲田療法で枯れた患者さんが運ばれてきたら
「こりゃ酷い医者だ」と思っていたのが35年前。


今回、患者会、遺族会がアンケート調査を行い、
立派な論文にまとめた事は、インパクトがある。

「鎮静をしないのが最善」という結論を読み
なんともシンプルな提言だなあと感心をした。

考えてみれば、犬や猫や鳥や象は、終末期になれば食べない。
枯れて静かに、穏やかに、この世から消えていく。

しかし人間だけが、「脱水だ!点滴だ!」「鎮静だ!」と騒いでいる。
しかし死に向かうメカニズムは、人間も動物も同じはずである。

残念ながら、そんな当たり前の摂理にさえ気が付かないくらい
医療界の視野は狭小化している。むしろ患者の方が知っている。


今回の論文で、今後、医療界がなすべき課題が少し見えたのではないか。



8月31日(土)、鎮静を巡るトークショーを神戸で開催する。

「終末期鎮静は医療か、犯罪か?」→こちら
残席わずか。


PS)
10日間もの留守中に、病院死も含めてなんと9名の患者さんが旅立った。
あらためてご冥福をおお祈り申し上げるとともに生きている奇跡に感謝。

その生まれ変わりのように、毎日2人ずつ新しい在宅患者さんが加わる。
輪廻転生ではないが、不思議なことに、1人亡くなれば、1人新患が出る。
























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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

私の父方の祖父は直腸癌(膵臓癌?)だったと聞いている。「聞いている」のは、他所様の女性と生活した人で、病院へ運び込まれて亡くなったので、血縁者は誰も真相を知らない。酒浸りだったそうだ。
私の母方の血縁者に胃癌で亡くなった人がいると聞いている。奈良県の農家の人で、熱いお粥をよく食べていたとか。
私の父は食道癌に罹ったが抗がん剤と放射線治療でその後、自力で飲食して8年ほど生きた。私の父の場合は、その前の脳梗塞後に血液サラサラの薬を指示通りきちんと5年間飲み続けたことが、食道癌の引き金になったと、私は確信している。本人も「この薬を飲むと(胃の)調子が悪い」と言っていた。まあ、昭和初期の日本男子の典型通り、酒タバコはエンドレスだったが。

家系的に婦人科系の癌が多い、という人を何人か知っている。だから、おそらく遺伝というのはあるのだと思う。が、それも100%遺伝するわけではないと思う。

おそらく、私たちの身体では、癌は常時的に発生しているのだと思う。癌検査なるものを受けると、60歳代後半にさしかかった私も、なんらかの癌が見つかると思う。見つけてどうする??? 
常時発生している癌は、そのままだったり大きくなったりする。私たち自身の身体がその癌をやっつけて癌が消えることもある、と、私は確信している。必要なのは「やっつける自分のチカラ」だと思う。

私の父の食道癌の時点では、私は医学界の構図に全く無知だった。また、父の場合は「あと3ヶ月で食道が癌で塞がる」まで、医者へ行かなかった人なので、緊急を要するゆえに敷かれたルートに乗ることしか考えられなかった。「放射線治療を試みる価値はある」という最初の医師の言葉を信じ、紹介された大学病院医師の「手術のお勧め」から逃げまくって生きながらえた。

私は標準治療を受けない。
現在の癌患者のおそらく50%くらいは、標準治療による自然治癒力削減の被害者だと、私は感じている。
しかし標準治療以外の癌治療は自費である。少なくとも4百万から5百万を覚悟しないといけない。カネをかき集めて癌の自費治療を受ける患者を、標準治療信者の医師たちは「宣伝に惑わされ無益な治療に大金を使う愚か者」と断じる。
私は近藤誠医師の信者ではないが、一律に標準治療を勧める医者を、私は信用しない。

長寿大国とすれば、60歳代半ばというのは「まだ若い」のであろうが、
他人様に介助してもらうこともなく入院もせず身体にメスを入れることもなく、これまでやってこれたのは、ひとえに「医者嫌い」の家庭に育ったおかげだと思っている。

Posted by 匿名 at 2019年08月22日 03:12 | 返信

長尾先生、初めてコメントさせていただきます。
トリおんなと申します。大学病院研修医です。

先日、(会場は伏せさせていただきますが)先生のご講演を拝聴しました。
感想記事を私のブログに書かせていただきました。
https://ameblo.jp/tori-onna/entry-12508265640.html
たいへん勉強になりました。

Posted by 研修医トリおんな at 2019年08月22日 09:28 | 返信

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