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在宅医療の仕組み

2019年11月20日(水)

きらめきプラス12月号は「在宅医療の仕組み」で書いた。→こちら
必要に迫られないと勉強しない分野であろうが、
基礎知識として知っておいたほうがいいかもね。

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きらめきプラス2019年12月号
 
Q)今回は青森でリンゴ園を営んでいらっしゃるご家族からのご相談です。

79歳になる母が、肺がんで余命1年を宣告され、現在入院中です。先日、病院から「差額ベット料がかかるが治療上の都合により4人部屋から個室に移ってほしい」と言われました。私たちは、母はもう長くはないと病院が判断してのことだろうと思い、母のことを考え個室に移りましたが、それから1週間ほどしてから、今度は病院から「ご家族の方で24時間付き添ってほしい」と言われました。しばらく昼は父が、夜は私たち夫婦が交代で付き添っていましたが、父が体調をくずしてしまったこともあり、このままでは母より先に私たちが倒れてしまうのではないかと不安になり病院に相談したところ、病院からは、「昼もそうですが特に夜は看護師が不足しているので他の皆さんにも付き添いをお願いしているので」と言われるだけで、詳しい説明もなく相談にも乗ってもらえませんでした。病院の対応をみているとどうしても疑問を感じてしまうのですが、他の病院でもこんなものなのでしょうか。夫は「母のためにも病院のいう通りにしよう」と言い、子供たちは「こんな病院は信用できない。おばあちゃんは意識もはっきりしていて、話もできるのだから、家に戻してみんなで面倒をみよう」と言っています。母のお世話をしてくださっている担当の先生には大変申し訳ないのですが、私も息子たちと同じ考えで、母を家で看取りたいと考えています。家族と今後のことを相談するためにも何かアドバイスをいただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。


 
A)
どうぞ家に帰ってください。そのまま病院にいてもなにもいいことは無いと思います。病院は24時間看護だと言っても、24時間看護師が病院にいるだけで、24時間患者さんの横にいるわけではありません。患者さんが不穏になったりして常に目が離せない状態だと判断された場合、家族に夜間の付き添いをお願いすることはよくあることです。夜間は看護師が手薄です。昔はどの病院にも一晩いくらでボンボンベッドに泊まってくれる女性がいましたが現在はほぼ見かけません。そもそも急性期病院では2~3週間しか入院させてもらえないはず。しかし長期入院が可能なように思えたので慢性期病院(療養病床)におられるのでしょうか。前者は患者7人に1人の看護師が配置されていますが、後者であれば患者20人か25人に対して1人の看護師しかいないので、さらに手薄になります。

 さて実際に家に帰るに際して在宅主治医を探してください。まずは週刊朝日ムック「さいごまで自宅でみてくれるいいお医者さん」をネット等で購入してください。在宅医療の仕組みや医療費について勉強してください。この雑誌は私が編集しています。平穏死についても分かり易く解説しています。在宅療養支援診療所のリストの中から家の近くの「看取りの実績のある医師」をピックアップしそれぞれのホームページを調べてみましょう。あるいは病院の地域連携室のスタッフに良質な在宅医療を提供している医療機関を紹介してもらうのもいいでしょう。

 現在、がんが死亡原因の1位で、臓器別では肺がんが1位です。すなわちお母さまは一番多い病気になられたと理解してください。肺がんの在宅療養の基礎知識として知っておいて欲しいポイントを挙げます。

1)平均在宅期間は1.5ケ月であること。ほんと、あっという間です。大変なのは「最期の1週間」です。しかしお母さまは余命1年と説明されているので、今退院された後に本当に在宅医療が必要かどうかは疑問です。外来通院で十分な可能性があります。通えなくなった時点から在宅医療に移行すればいいだけです。

2)肺がんの看取り経験が豊富な医師を選んでください。痛みの治療、緩和ケアの技術に長けている医師を選ぶことが大切です。がんの緩和ケアの実績がよく分からなければ医師に直接聞いてみるのもいいでしょう。最終的には相性も大切です。拙書「痛い在宅医」は肺がんの在宅看取りがうまくいかなかった子供さんのドキュメンタリーで、参考になるはずです。

  • 肺がんの在宅療養においても「脱水は友」です。たくさんの肺がん患者さんを看取っていますが、胸水を抜くことはありません。自然な脱水を見守る智慧を拙書「平穏死・10の条件」で勉強しておいてください。自然な脱水があれば咳や痰で苦しまないので吸引器が不要な場合がほとんどです。こうした事実は呼吸器専門医でも知らない場合があるので注意してください。だから私は患者さんの同意を得て在宅看取りまでテレビで取材・放映して頂いたり、日本肺がん学会で肺がんの専門家にそのような講演をしてきました。
  • ちなみに肺がん=在宅酸素と思っている人が多いですが、私が診てきた肺がんの患者さんの在宅酸素はゼロです。在宅酸素療法の適応はタバコ病のCOPDと慢性心不全です。もしCOPDの呼吸困難が前面に出ているのであれば在宅酸素療法の対象です。一般にがん細胞が一番喜ぶのはブドウ糖と酸素です。がん細胞と酸素の関係については最近、日本人がノール賞を受賞しましたね。
  • ある程度衰弱していれば介護認定を申し込んでください。介護ベッドを借りたほうがいいかもしれないからです。まだお元気そうなので要支援と判定されるかもしれませんが、それでも転倒予防の手すりなどは設置できるはず。地元の地域包括支援センターで相談しましょう。ちなみに介護認定の有無と在宅医療の開始時期は直接には関係しません。がんは、最期の最期まで結構動けます。だから「要介護」と判定されない人もいます。介護保険の申請から介護認定調査まで2週間、そして審査会の判定が出るまで2週間、合計1ケ月もかかります。一方、平均在宅期間が1.5ケ月なので介護認定結果が出た時には亡くなっていた、ということは稀ではありません。介護保険に関しては早めに準備しておきましょう。
 

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