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午前3時のベッドから転落コール

2019年11月19日(火)

時に「ベッドから落ちた。助けて!」という電話が深夜にかかってくる。
独居の末期がんの患者が多く、在宅医がベッドに抱えて上がるしかない。
そう、在宅医は看護師も介護士の仕事も兼ねている。

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さあ寝よう、とした瞬間の電話は辛い。
まあ、拷問である。

「先生、ベッドから落ちた。今すぐ抱き上げに来て!」


と独居の末期がんの患者さんから電話が鳴った。
午前3時である。

「ええええ!?自力でベッドに上がれないの?」


「自力では無理です。今すぐ助けに来てください!」

「明日の朝、看護師さんが行くから待っていてね」

「先生。電話したらすぐ来てくれるっていう約束じゃないの?約束違反やわ」

「すぐ行くではないよ。電話を受けるということで、時間がかかる時もある」

「いや、すぐ来てくれないと困る。来ないなら救急車を呼ぶから」

「分かりました。行きます」

そして行っている途中に、勝手に救急車を呼ばれることもある。
行ってみたら家は抜け殻では困るので、早く行かないと!

再び服を着て、さっき帰ったばかりの道を引き返す。
運転しながら、心臓がドキドキしている。


深夜の夜道を彷徨いながら、患者宅に到着。
空き缶の鍵を探しドアを開けて静かに入る。

部屋に入った途端、どうやら患者の手を踏んだようだ。
「ごめん、ごめん」とあやまりながら、灯りをつける。

患者さんはベッドからかなり離れた畳のに寝ていた。
お話はできるが、体はピクリとも動かない、ようだ。

重い身体を持ち上げて、ベッドに戻す。
終わったら、服にウンコがついていた。

考えてみれば、午前3時に動いてくれるヘルパーはまずいない。
動いているのは、事業主の医者と看護師くらいで、わずかだ。

でも私の携帯電話に毎晩、何度も電話をかけてくる。
看護師を起こすのも気の毒なので私が行くしかない。

医者は看護師にも介護士にもなれる。
薬剤師にも放射線技師にもなれるし。


というわけで、午前3時に、介護士になった。

「こんなことしてたら死ぬわね」と帰り道に思う。

実際にこんな深夜往診が年に何度か回ってくる。
24時間対応には、こんな雑用(?)も含まれる。

深夜になると、何も無いのに携帯を鳴らす人がいる。
なんとなく不安で、電話するようだがこちらは辛い。

「独居の末期がんの在宅看取りは簡単」と言っているが、
なかには独特のキャラの人もいて病院も在宅も困らせる。


本当の緊急電話と、緊急ではない不安電話が入り混じる。

「この患者さんに殺される、かも・・・」

そんな恐怖が頭をよぎる。

こんなことを繰り返している60代はいないだろう。
でも若い世代には、もっとあり得ないだろう。

24時間365日対応は本当に辛い。

でも、24年間、なんとかやってきた。

そろそろ、引退しようかな。

そんな考えが頭をよぎる午前3時。























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この記事へのコメント

頭が下がります。

Posted by 匿名 at 2019年11月20日 11:59 | 返信

フツーの24時間365日対応の在宅診療所というのは、患者が電話をしても電話に出るのは「お当番」の事務員です。看護師ならまだマシだけど「事務員」がファーストコールを受けるのですよ。その事務員が「医師あるいは看護師に連絡する必要がある」と判断した場合だけ、その事務員が医師あるいは看護師と話をしてその回答を患者に伝える。
これがフツー。これが一番安上がり。これで不満なら救急車読んでイイヨ、の世界です。
24時間365日対応なんて綺麗事並べてあるけど中身はこんなもの。
患者側が電話をしても、素人の事務員に話をしなければならない。

私の父はこの「たらい回し電話」で命を削られました。
その後2年経って、今は、それで、良いのではないかと、思います。
その、「名目だけ24時間365日在宅診療」の医師達は、「ボクら医療者が倒れたら患者さんが困るので、前もってご承知おきください」と、堂々としていましたよ。

長尾先生もまずは、直接電話に出るのはやめたらいかがですか。

私は、医療者を頼みの綱として、医療者にすがりついて、そうまでして生きていたいとは思いません。父も、同じだったと、思います。

Posted by 匿名 at 2019年11月21日 12:05 | 返信

ほとんどの人が知らない事実?!どうすれば、…。

Posted by K-mira at 2019年11月21日 10:11 | 返信

 いや~、こんな対応してくれるのは長尾先生だけですよ。
 こちらの地域は開業医は電話しても時間外は不通ですし(末期がんだろうとなんだろうと)、繋がったとしても救急車よべと言わるのが関の山です。どっちかというとこちらの地域では訪問看護ステーションやヘルパー事務所、居宅介護支援事業所にこういう電話は多いのではないでしょうか。

Posted by 兵庫県民 at 2019年11月21日 02:17 | 返信

先生・・お身体大事にして下さい、死んでしまいます

Posted by 小林ひろえ at 2019年11月22日 09:18 | 返信

随分前に、読んだ本。(タイトルは、忘れた。)長尾先生の、所へ、遠くから患者さんが頼って来て、長尾先生に見て欲しい。ってことで、長期滞在中??また、有るときは長尾先生が、車の中で御結び、パン等々を購入して食べながら、連絡まち。暑さで、頭がボーッとする。夜間の、往診は大変だと思った瞬間。

Posted by ひろっち at 2019年11月23日 07:11 | 返信

再投稿します。乳ガンになって、訪問医、訪問看護師さんが来るようになりました。訪問医は、3週に1度、訪問看護師さんは、毎週です。今回の、緊急入院(救急車利用)呼吸が酷く苦しかった。車ではなく、息が苦しいので立ち上がれませんでした。身内は、タクシー??の質問されましたが、それど頃では有りません。「息が出来ない。苦しい。苦しい。救急車だってば。立てないよ。」これで、コース決まりました。ICU「意識がない」→身体拘束→オムツ→点滴→投薬→酸素マスク→気がついてみたら、トイレは全てオムツの中に。→無理、絶対無理→我慢してICU 最終日に、いっぱん病棟に移動。ふと、考えた事は本来なら、訪問医に連絡して、夜間の搬送先を教えて貰えるか?訪問医の、訪問看護師さんの、立ち位置はどうなっているのだろう??ケアマネさんに、今後いかに何かあったら「個人で、救急車を頼むのか? 医師は、夜間どうするか?訪問看護師さんは、連絡取れたとしてもどうなるのか??これは、医師、看護師さん、ケアマネさんに質問しました。然し、迷惑を掛けるので、それらの人々に声を出さない。それが、希望です。一瞬意味不明になっていました。ケアマネに何度となく話ましたが、無駄話ですね。どうしてが、先に立ちます。私は、長尾先生を、基準にしていたのです。訪問医は、夜間にも動く。訪問看護師さんは、夜間にもサポートする。どうやら、私が間違えていたようです。訪問医と、言っても長尾先生の用に、スタッフが大勢要るわけではないし、看取りは都会ではそんなに多くは無い。地域で温度差が有ると思いました。この病院の若い看護師さん達が、出来る。と言うのも、夜は基本的に眠れるから訪問看護は、出来る。というのだろう。どうですか??長尾先生。
PS: 救急車利用。搬送後は、身体拘束はしない。薬で、ロックしない。「基本的な、事から。」

Posted by ひろっち at 2019年11月24日 09:05 | 返信

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