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開業医にも武器を!

2020年07月09日(木)

開業医でも、PCR検査や治療ができたらなあ。
在宅や施設患の者さんを診ていたらそう思う。
日本医事新報7月号にそう書いてみた。

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Web医事新報
「ウィズコロナ」に変わるため開業医にも武器を!
[長尾和宏の町医者で行こう!!(111)]
 
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14836

  週刊誌は7月18日号に掲載。

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日本医事新報2020年7月号 

「ウィズコロナ」に変わるため開業医にも武器を! 長尾和宏  →こちら
 


検査という武器
 
 7月に入り、東京都では連日100人以上の新型コロナウイルス感染者が出ている。北海道、大阪、鹿児島などでも感染者が出ており、本当に「ウィズコロナ」の時代になってきたんだなと感じている。コロナ患者さんは発症の前後2日間のウイルス排出量が最も多いことが分かっている。つまり感染力が強い。だから発症2日前のコロナ患者さんを捕捉して隔離できれば感染拡大を最も効果的に防げるはずだ。しかし現実には無症状者に大規模検査をしない限りそれは不可能である。少なくとも発症から間もなく検査ができれば隔離が可能である。しかし第一波においては、発症から診断まで1週間以上もかかっている。これは治療開始の遅れだけでなく、感染拡大阻止の観点からも大きな問題であった。さんざん話題になったPCR検査のハードルの高さは今後も続くのであろうか。

 第一波においては多くの開業医が「発熱患者さんお断り」であった。もし院内感染が起きれば2週間の診療停止だけでなく甚大な風評被害にあうからだ。当初はまったく未知の感染症であったので仕方がないことだろう。しかし感染者の8割が軽症~無症状であり、高齢者や基礎疾患のある人がハイリスクであることが判明した今、検査戦略を練り直すべきではないか。

 発熱患者さんが保健所に電話をすると必ず「かかりつけ医を受診してから」と言われる。しかし、かかりつけ医でPCR検査はできない。医師会がPCRセンターを立ち上げて開業医が手上げ方式で検体採取をしているところもあるが、かなり煩雑である。検査要請から結果判明まで時間がかかりすぎるため患者さんの不安が大きいし、何よりも診断までに重症化する恐れがある。インフルエンザと同様に開業医が検査を行えるようにすべきだ。厳重に個人防護具(PPE)を着用して屋外等で、空間的・時間的に動線を分離すればできるのではないか。唾液を用いたPCR検査も同様だ。インフルと同様に開業医で抗原検査を実施できればいい。もはやコロナ患者さんから逃れて医業を営むことは不可能である。だから希望する開業医にも「検査という武器」を与えて欲しい。

 
 
治療薬という武器
 
 PCR検査で陽性が判明しても無症状~軽症であれば入院せずに開業医がフォローする場合がある。感染者数が増えるほど、そうなるだろう。あるいは在宅患者さんや介護施設においてはそうなる場合が必ず増える。もちろん厳重な経過観察が必要である。白血球とCRPだけでなく、致命的な症状である血栓症を早期に探知すべくDダイマーも必須検査項目である。しかし開業医では新型コロナの診断ができない。もし診断ができても治療ができないことは、患者さんにとって大変不幸なことだ。

 イベルメクチンは開業医でも使われている薬だ。在宅や介護施設では疥癬が発生するが、その治療薬である。ノーベル賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授が発見した薬だ。なぜ効くのかはまだ分かっていないが新型コロナへの効果が実験室レベルで確かめられているということで、現在治験中である。一方、フサンも比較的使い慣れた安全性が高い薬である。万一、在宅や施設でDダイマーが高値の陽性患者を見つけたらすぐにでもフサンを点滴すべきだろう。しかしイベルメクチンもフサンも新型コロナに保険適応がない。つまり命を助けるために使いたくても使えない。武器はあるのに使えないとは殺生な話だ。アビガンやレムデシビルはよく分からない。しかし汎用薬ともいえるイベルメクチンとフサンは新型コロナへの保険適応を望む。開業医にも「治療薬という武器」を与えて欲しい。
 

 
施設患者は誰が守るのか
 
 介護施設から毎日、発熱往診の依頼がある。普段なら「誤嚥性肺炎かな」であるが、今は違う。内心「コロナかも?」と胸をよぎる。しかし介護施設でそんな言葉を呟いたら蜂の巣をつついたように大騒ぎになる。クラスター発生→テレビ報道→謝罪→風評被害→倒産、という最悪のシナリオに彼らは怯えながら今も面会を制限している。介護施設において医師は安易に「コロナ」という言葉を発してはいけない。

 全国各地で介護施設における集団感染が起きて多くの人が亡くなっている。その検証はこれからだろうが、本当に「感染症対策の不備」だろうか。筆者はそう思わない。介護職員は医療機関に負けないくらい感染症対策を講じている。それよりも「検査の遅れと治療の遅れ」のほうが大きい、と筆者は想像する。「ギリギリまで保健所に知らせたくない」とか「なるべくなら隠蔽したい」という気持ちが働くのではないか。介護スタッフ不足や経営基盤の脆弱性は医療機関よりもひっ迫している。だから集団感染して何人かの死亡者が出るまで表に出ない、出せないのであろう。

 多くの高齢者が暮らす介護施設の医療は誰が守っているのか。特別養護老人ホームと介護老人保健施設は嘱託医と管理医師であるが、それ以外は多くは開業医である。ショートステイ、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、小規模多機能、お泊りデイサービスなどの患者さんは開業医が診ている。肺炎症状の患者さんの連絡は開業医に来る。しかし開業医には検査という武器も治療薬という武器も与えられていない。もし与えられたら、そこで命が救えるかもしれないのに。丸腰のまま、最悪、施設や在宅で看取ることになるケースも想定しておくべきだ。新型コロナは指定感染症(2類感染症相当)である。感染症法2類とは「強制入院させることができる」であり、「強制入院させないといけない」ではない。要介護5の意思疎通ができない90代の感染者は、強制入院させたくてもできないことがある。また意志がはっきりしていて「入院したくない」「人工呼吸器を譲るカードを持っています」という高齢者もたくさんおられることも忘れてはならない。
 
 

医療も「ウィズコロナ」に
 
 「ウィズコロナ」という言葉があちこちで使われている。これは新しい生活様式のことを指すらしい。マスクや手洗い、ソーシャルディスタンス、三密の回避は、多くの日本人が守っている。またテレワークや時差出勤なども含めて「ニューノーマル」という言葉も使われている。そのたびに「医療におけるニューノーマルとは何だろう?」と考えてしまう。まさか「初診からのオンライン診療だけ」ではないだろう。いずれにせよ「ウィズコロナ」という言葉に「コロナはもはや市中感染症になってきた」というニュアンスを強く感じる。

 果たして医療の世界は今後、「ウィズコロナ」に変わるのだろうか? 緊急事態宣言時のまま時計の針が止まっているような気がしてならない。政府関係者に聞くと、新型コロナの感染症法2類指定は1~2年間は続くらしい。保健所にお伺いをたてないと開業医の判断では何もできない「オールドアブノーマル」状態のまま、来年まで本当に行くのだろうか。

 国や自治体のコロナ対策は感染症病床や人工呼吸器、人工心肺(ECMO)の数合わせにばかりに苦心しているように映る。しかしそこに至るまでの最前線の兵士でもある開業医に検査法や治療薬という武器を持たせたほうが、ずっと効率的ではないのか。もちろん志願制である。そのほうが国民も高齢者も幸せではないのか。開業医をこのまま丸腰で放置して自然淘汰を待つだけだと言われたら返す言葉はない。しかし10万施設もある社会資源として有効活用する方策を練るべきではないのか。これは政治家や厚生労働省だけでなく、執行部が交代した日本医師会にもお聞きしたい質問である。「かかりつけ医」にとってのコロナ診療とは保健所にFAXしたり検体採取センターに出務したりするだけで本当にいいのですか? と。秋になるとインフルも流行ってくるだろう。だから、今夏にこそ医療も「ウィズコロナ」に変容すべきではないのか。是非多くの先生方のご意見を賜りたい。
 


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PS)
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その薬はアカン!  間違いだらけの認知症コロナ対策
https://youtu.be/TxiH_DtUQB8

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この記事へのコメント


 先生のところでも検査ができるかもしれませんね
神奈川モデルのスマートアンプは7月いっぱいは神奈川県の医療関係
だけに配られるそうですが、7月以降は他府県にも出すと言っていますから。
アタッシュケースタイプで1基が200万円です。同時に24検体(8X3)
調べられ、1時間で検査は終わるそうです
 新兵器と言ってもいいほどの性能ですね。神奈川県と理研の共同研究の
成果だと・・。 すでに政府によって保険適用が決定していますし。
あとは・・・法整備との関連はあるかとは思いますが。拡大解釈でやれるかも。

Posted by 中原武志 at 2020年07月10日 04:50 | 返信

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