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母親を介護施設から自宅に連れて帰りたい

2021年03月18日(木)

母親を介護施設から自宅に連れて帰りたい。

コロナ禍のなか、そんな相談が増えてきた。

当院では、毎週1人は、自宅に帰ってくる。

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Q)

 今回は名古屋市在住、52歳の女性(独身、ソフトウェア開発会社勤務)からのご相談です。

 今年82歳になる母は重度の認知症で6年前から特養に入所しています。毎週土日は必ず面会に行っていましたがコロナの影響で面会禁止となり、以前ケアマネさんがコロナが落ち着いたら施設の面会は再開されるからゆっくり考えましょうと、言ってくださいましたが、母とはもう半年以上会えていません。父は30年前に癌で亡くなりました。


 私はフルタイムで仕事をしているため、この先も特養でお世話になるつもりでいましたが、このまま会えない期間がいつまで続くのかと思うと母の状態悪化も心配ですし、私自身もつらいので、在宅介護を考えるようになりました。上司に相談したところとても心配してくれ、完全に出社せず自宅で仕事ができるフルリモートワークにしてくださり、時間と生活費のめどが立ちましたので、母を自宅で介護しようと決心しました。しかし、地域包括支援センターの方に相談したところ、重度の認知症で日常生活を自分でこなすこともできず全面的に介助が必要な母を身内もいない独り身の私が仕事をしながら介護をするのは難しいと言われ、反対されてしまいました。


 やはり包括支援センターの方が言われたように仕事をしながら車いすを使用している認知症の母を自宅で介護することは難しいのでしょうか。介護と仕事を両立されている方はたくさんいらっしゃると思うのですが。長尾先生、ご意見、アドバイスをよろしくお願い申し上げます。



A)

 「親孝行したい」という想いがひしひしと伝わってきました。母親思いの貴方の決心を応援したいと思いました。お父様が亡くなられた後の30年間にいろんなことがあったのでしょうね。コロナ禍で半年も会えないし、今後も見通しもつかないし、万一の死に目にも会えないという切なさはひとしおでしょう。実はコロナ禍のなか、同様な選択をした方が私の周囲に数人います。


 看取った方もまだ療養中の方も、在宅介護を後悔している人は一人もいません。看取られた方は皆さん「良かった」と、言葉が間違っているかもしれませんが、大満足されています。 正社員でフルタイムの仕事をしながら要介護5の親を在宅介護している方をこれまで数名見てきました。皆さん、介護保険サービスやNPO法人のサポートや兄弟など身内の支援をフル活用しています。デイサービスやショートステイの活用は必須です。ただそれだけなのですが、そんな現実はまったく報道されていないので地域包括支援センターのスタッフはあまり知らないのかもしれません。

 ・

 貴方の場合はフルリモートワークが許可されたとのことのですが、これは大変な幸運です。テレワークは在宅介護者にとっては大変有利です。ちなみにコロナ禍のなか同様な選択をされた子供さんたちは全員がフルタイムで出社しながらの在宅移行でした。しかし貴方のようなリモートワークは在宅介護を担う上でたいへん有利になるかと思います。 しかし地域包括支援センターが在宅移行を勧めない理由は特養が狭き門で、そこを一旦出たら再度入所するまでには相当なハードルがあるあもしれないからです。どうしてもそのリスクを考えがちです。在宅介護は人によっては苦行かもしれません。しかしそうではなく、むしろ楽しんでいる人も沢山います。娘さんがそれを担う場合は、長年の親子関係によります。親子関係が良くないと絶対にうまくいきません。でも貴方の場合は良好な様にお見受けしました。


 在宅療養を成功させるコツはなんといってもケアマネと主治医と在宅主治医選びにかかっています。この3者が同一法人であることは通常は稀でしょう。たとえ法人が別であっても3者の連携が良好であることが絶対条件です。そしてなによりも貴方の選択を支持してくれないと困ります。医者とケアマネのどちらから入っても構いません。地域包括支援センターが地域の在宅スタッフの情報を豊富に持っているので是非頼ってください。 もしも介護が長期間に及び貴方が疲れたならばショートステイを利用して休養してください。それでもダメなら「ロングショート」を利用しましょう。ロングショートを何ケ月も続けている人もいます。元いた特養はお母さまをよく知っているので快く受けてくれるはずです。僕は絶対に大丈夫だと思います。


 最後にこの春、全国公開される2本の在宅医療の映画を紹介させて下さい。映画「痛くない死に方」は僕が原作と監修をしました。もう一本はドキュメンタリー映画「けったいな町医者」で、僕の日常が描かれています。もしも機会があれば是非ご覧ください。参考になると思います。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


週に3~4人の在宅お看取りがある。

一方、週に3~4人の新規在宅が舞い込む。


そのうち1人は、介護施設から自宅に帰ってきた人である。


フルタイムで仕事をしながら要介護5の親の介護が可能であることは知られていない。

僕の周りにはいくらでもいるし、普通なのだけど、病院や施設のスタッフは知らない。


なによりも、「天涯孤独の要介護5のおひとりさま」でも最期まで在宅療養が可能だ。

そんな看取りも普通にやっているのだが、ケアマネさんでも知らないので書いている。


家族がいなくても可能。

だから、家族がいたら、なお可能。


とは、ならないことがある。

家族が必要以上に背負ってしまう場合がある。


まさに「家族よ、ボケと闘うな!」の世界であるのだが、

世間に知られていないので、あちこちに書いて話している。



コロナ禍の影響で親孝行娘や親孝行息子が増えているのは、

まぎれもない事実であるが、まったく報道されていない。



PS)

コロナチャンネル #333


置いてきぼりだよ!特養&老健のコロナ陽性者  →こちら


【緊急告知】

映画を観て、2時間のトークイベントの第一報

  映画や長尾への質問大歓迎、ハチャメチャになるような予感

  会場 大阪の十三の第七芸術劇場

  3月27日(土)12:20~の会で

  14:00~16:00、トークショーとサイン会   

  映画館のHP →こちら


  

  

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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

高齢社会をよくする女性の会・大阪の植本です。
3月27日の第七芸術劇場のトークイベントの告知有難うございます。
残念ですが、当日は「高齢社会をよくする女性の会」の全国総会の日で、東京参加とzoom参加の人が多くいます。私も七芸に行くことがかないません。本当に残念です( ;∀;)

Posted by 植本 眞砂子 at 2021年03月18日 04:42 | 返信

初めまして。毎日先生のブログとコロナチャンネルを拝読、拝聴しております。
私も51歳の独身、フルタイムで仕事をしており、7年前から要介護5の母親が特養に入所しています。
コロナの影響で昨年3月から面会が制限され、昨年12月に大阪府のコロナ警戒信号が赤色になってからはガラス越しに一目顔を見ることもできない状態が3か月も続きました。
今週からようやくビニールカーテン越しで15分だけ面会ができるようになりましたが、母に触れることはできません。
コロナ前は仕事帰りに毎日面会に行き、夕飯の介助を続けていました。生きているのに母に会うことができなくなるなんて思いもしませんでした。こんなに辛く苦しい毎日がいつまで続くのか・・・精神的にもう限界です。
特養に入所する前は父と二人で12年間在宅介護をしており、その間に長尾先生のご講演を拝聴したことがあり、母を在宅で看取りたいと思って先生のクリニックにご相談させていただいたことがあります。
尼崎には近いですが大阪市のため残念ながら先生の往診は叶いませんでした。
父が突然亡くなり、シングル介護となったため施設入所しか生きる道がありませんでしたが、施設入所を選択したことを今とても後悔しています。
どうすれば母に会えるのか色々考えました。在宅介護に戻すか、私が特養の職員に転職するかのどちらかですが、どちらも人生の大転換なので不安が大きくなかなか決断できずにいます。
長尾先生のような医師に往診をお願いできるのであれば心強く、決断できただろうなと思います。

Posted by つくし at 2021年03月18日 09:51 | 返信

コロナ過の光と影

今のメディアの報道は影の部分が多すぎて、私自身、嫌気がさしています
今回のブログを読んで、とても心が和みます
どんな時代でも光と影があると思う
メディアはフラットでいけないのにいつも、偏ってしまうことが悲しい事と、私の尊敬する方がいつも嘆いていました
そして、「誰の情報なのか」を大切にしなさいと教わりました
だから、長尾先生の発信にいつも耳を傾けています

それと、「対面で会話をする大切さ」
空気を感じながら、人と話すこと

オンラインが悪いということでなく、感じる事が出来るのは相手のぬくもりに接すること

私の知り合いの男性方ですが、兄弟や看護師さん等に助けられて、お父様の介護をされている方があるのも本当です
デイサービス等を上手く利用させているみたいです
少なくとも、私の知り合いは家事は得意ではありません

「介護」と言っても、人さまざまだと感じています
そして、私自身、どうしていいかと悩むことが多いのも本当です

Posted by ナオミ at 2021年03月20日 06:41 | 返信

老々介護で、認知症があって…
主治医は、おうちでみるのは、無理だよね…施設に入れた方がいいよね…と娘さんは言われたそうです。

簡単に言わないでよ‼︎と叫びたいです。
90歳台になって、確かに食べられなくなってきて、心配いですよ。
でも、ご本人は施設を望んでいないんです。
徘徊もしません。暴力も振るいません。

施設は楽園か?姨捨山か?…
コロナ禍において、家族の面会もままならなくて、環境が変わってしまったら、さらに認知症が進みますよね。「家族よ、ボケと闘うな!」もそうですが、「医者よ、勝手に決めるな!」と叫びたいです。
オイシャさまの言葉は、天の言葉なんです。神様と同じなんです。先生に任せとけば、、、と誰もが思っています。けったいなオイシャさまが増えると嬉しいです。まだまだ、痛いオイシャさまが多いなぁ〜。
賢くならないと、大事な最期の時間がめちゃくちゃになりますよ。と叫びたいわ。

Posted by 宮ちゃん at 2021年04月03日 11:22 | 返信

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