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12月10日(水) 「救急を呼ぶということ」が読売新聞に掲載されました

2008年12月10日(水)

 眠れない一夜が明けて目を擦りながら朝刊をめくると、自分の写真と記事が載っていました。先月から取材に来ていた記者さんが上手にまとめて下さいました。

  少し気を取り直して朝の往診に出ました。さっそく知人から「見たよ」とメールが届きます。以下、読売新聞の記事から引用します。
 

                                                                                        


[生活アングル]終末期の救急搬送 看取り進まず、常態化 経験不足と訴訟回避2008.12.10
 大阪朝刊 23頁 写有 (2,523)   
 
 終末期の回復の見込みがない高齢者が、救急車で病院に運ばれるケースが目立っている。特別養護老人ホーム(特養)などの高齢者施設や自宅での看(み)取り体制が整っていないことが背景にあるとみられる。穏やかな最期を迎えさせたいという家族の思いをかなえ、過密化する救急医療の現場を改善しようという動きも出ている。施設や自宅での看取りと救急搬送について考えてみた。(中舘聡子)

  消防庁の調べでは、2007年に緊急搬送されたのは488万人で、65歳以上の高齢者は46%の226万人。急病が半数で、一般負傷や交通事故を大きく上回った。全年齢に占める割合は、この10年で12ポイントも上がった。

  ◎高齢者施設
神戸大医学部付属病院救急部の中尾博之医師らが、04?06年に神戸市消防局が心肺停止として搬送した事例を調べた。全体で3042件あり、1割の304件が高齢者施設からだった。さらに施設からの約200件を調査すると、1か月後に生存していた人は4%で、1年後はゼロとなった。がん末期で残された時間が日単位だと判断された人や、寝たきりで意思疎通が難しい人の最期を確認するだけの“看取り搬送”もあった。

  また、救命措置で心拍が再開したものの、数日後に亡くなったり、意識が戻らないまま転院したりしたケースも。中尾医師は「施設に再び戻れる状態に回復できた人はほとんどいないのでは」と推測する。「延命措置は行わない」と施設と申し合わせていた家族から、救命後に「訴えてやる」と迫られた経験もある。「患者の年齢に関係なく助けたい。でも、過密な救急医療の現状を改善させるためにも、急変時に延命措置をするかどうかといった点を、施設は本人や家族と事前によく話し合ってほしい」と訴える。 

  救急搬送を依頼した施設は112か所あり、件数の上位11位までが特養だった。なぜ、特養からの搬送が多いのか。特養には医師(非常勤も可)の配置が義務づけられており、搬送について適切な判断は可能だ。さらに国は06年、介護保険に、看取りをした場合に報酬を受けられる「看取り介護加算」を新設し、財政的な支えも整いつつある。しかし、三菱総合研究所が同年に実施した特養での医師の夜間対応状況調査では「必要な時に訪問してもらえる」と答えたのはわずか29%で、「対応してもらえない」も13%あった。

  また、人材不足などから同加算の算定施設は約3割にとどまるなど、施設側の体制は十分とは言えない。同研究所主任研究員の吉池由美子さんは、施設が搬送を依頼する理由として、▽経験の少ない介護職には対応への不安が大きい  ▽対応が万全ではなかったと家族から訴訟を起こされるリスクの回避などを挙げ、「看取り体制を整えていない施設ほど、搬送依頼が常態化しているのでは」と話す。

  特養には要介護度の高い高齢者が入所しており、年々重度化している。吉池さんは「今後、看取りはより重要となる。看護職の配置や医師との連携の充実が必要で、施設基準の見直しも検討する必要がある」と指摘する。

                                 

「病院行けば」思い強く「在宅主治医信じて」

◎自宅
 救急搬送が目立つ理由の一つに、“病院信仰”があると、在宅医療の関係者は言う。「病院に行っても、必ず治療してもらえるわけではない。そのことは分かっておいて下さい」兵庫県尼崎市で看(み)取りなどの在宅医療に取り組む「長尾クリニック」院長の長尾和宏さんは、「病状が悪化したり、急変したりしたら入院させたい」と言う、がん末期の女性患者の夫にこう話しかけた。そして、「奥さんがどういう最期を迎えたいかも考え、もし不安があったら、何でも聞いて下さい」と続けた。

  地元の医療関係者らでつくる「在宅医療を考える会」代表でもある長尾さんは、患者や家族に「病院に行けば何とかなる」という思いが強く、「自宅で死んだら事件として扱われる」と誤解している人が多いことに驚いた。

  同会は2007年春、「はじめての在宅医療」と題した小冊子を作り、患者らに配っている。「救急車を呼ぶとどうなるのか?」と題したコラムを掲載し、搬送事例を紹介しながら、在宅での看取りを望む家族が不安に思う点を分かりやすく解説した。

  自宅で看取りたいと思っていたが、苦しそうな姿に気が動転して救急車を呼んだため、病院で家族が望まないような処置をされたというケースでは、「救急車を呼ぶという行為は、積極的治療をしてほしいという意思表示だという認識が必要」と助言。
また、朝になって家族の体が冷たくなっているのに気づき、あわてて救急車を呼んだところ、救急隊員が警察に連絡。警察に遺体の写真を撮られ、事情聴取されたという事例も紹介した。

  しかし本来、医師が診察をしていた患者が診療中の病気で死亡したことが明らかであれば、臨終に立ち会わず、死後に訪問しても死亡診断書を発行できる。こうした知識があれば、事件として扱われることはないという。

  長尾さんは「看取りと決めたら、呼吸が止まっても救急車を呼ばずに、在宅主治医を呼んで下さい。そして、主治医を信じて少し待っていてほしい」と訴える。

  国は、在宅看取りを進めるため、24時間往診体制を整えることなどを条件とする「在宅療養支援診療所」を06年に制度化。現在、全国1万か所以上が届け出ているが、過去1年間に1人も看取っていない診療所は07年6月現在、全体の3割を超えた。信頼できる在宅医を身近で探せるとは限らないのが実態だ。

 「在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク」(東京)事務局長の太田秀樹さんは「訪問看護師が、患者の生活情報を在宅主治医に報告できれば、救急車を呼ぶに至る高齢者の急変の大部分は回避できる。国の制度に登録している開業医は、往診しようという意識は持っているはず。在宅での看取り体制の整備は十分に可能だ」と話している。

yomiuri081210.3.bmp患者の体調の変化を注意深く診察する長尾さん(左)家族には「いつでも連絡して下さいね」と声をかける(兵庫県尼崎市で)

http://www.nagaoclinic.or.jp/fck/yomiuri
081210-2(2).bmp


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この記事へのコメント

学校教育や市役所、町役場などを通して延命治療について、入院時にはっきり
施設側に断るよう啓蒙する必要を感じます。
本人は胃瘻までして延命を希望する人は私の周囲では少ないです。
国の財政を考えても高齢者の延命処置は本人及び家族の意向で断る
方向へ啓蒙すべきです。

Posted by 今田  誠 at 2011年12月08日 12:57 | 返信


>延命治療について、入院時にはっきり施設側に断るよう啓蒙する必要

啓蒙は必要と思いますが、断るというより、
むしろ自分の死生観をふだんから確かめ、それを医療側に伝えることを
啓蒙するのが大切と感じます。
延命治療は、自費診療とし
それで患者が倖せと信じられる方(看取る側の自己満足でなく)は
実行する自由があっても良いと考えます。

金で命を買うのか、という反論も予想していますが、
人工的に引き延ばされている「命」とは何か、
医療経済とは違う視点でも考えるべき命題と思います。

Posted by 梨木 at 2011年12月09日 12:22 | 返信

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