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12月11日(木) 脂質異常症について講演、その後A病院で退院調整、その後神戸で頸動脈エコーの勉強会
2008年12月11日(木)
今日は尼崎で「脂質異常症の最近の話題」について1時間半、講演しました。最近は政治や在宅関係の講演が続きましたが、純粋な学術講演をするのも楽しいものです。まあ、目立ちたがり屋には節操はないのです。
最後は、神戸に移動して頸動脈エコーについて国立循環器病センターの長束先生の講演を聞きました。途中、昨夜、急きょ退院という話が降ってわいた40歳代の末期がん患者Bさんの退院調整のためA病院に呼ばれました。・・・・正直、今日は最悪でした。ここからは本音で書いてみましょう。
主治医と看護師からの説明のあと、病室にBさんを診に行くと、酸素吸入してグッタリして肩で息をしており、あと2?3日の寿命かと思われる状態でした。それでも彼女は重い瞼を少し開いて私に「先生、帰りたい。今すぐ家に帰りたい」とかすかな声で訴えてきました。夫も「こんな所にいくらいたってしょうがない。一日も早く家に連れて帰りたい」とはっきりと言います。
私は、若き主治医と看護師に在宅医療のイロハとその準備の話をしましたが、彼らは在宅医療のザの字も知りません。「人間は病院で死ぬのが当たり前」と信じているようです。がん拠点病院ですから上から目線が抜けません。
10年前からそうなのですが、病院に私を呼びつけて介護保険の準備を言い渡すことが退院調整だと思っています。余命1日の患者さんの説明をするためだけにわざわざ日を取って呼びつける神経は理解できません。そんな暇があったら「1日でも早く退院させてくれ」と言いたいところです。
紹介状の紹介目的欄には「在宅看取りをお願いします」と書いてありました。私を葬儀屋さんか、はたまた映画「おくりびと」の納棺師と思っているようです。せめて「在宅ターミナルケアをお願いします」位は書いて欲しいのです。いつも言うのですが「看取り」は目的ではなく単なる結果なのです。彼らに決して悪気はないのですが、「世の中すべて病院が中心に回っていると完全に勘違いしています。」在宅医療=看取りでも決してありません。患者さんは生活者でもあるという視点も全くありません。
このがん拠点病院の医療者たちは、私に言わせれば信じられないくらい「自覚症状ゼロ」なのです。自覚症状がありませんから、人間学、死生学、在宅医療を勉強しようというモチベーションも低いように感じます。実はこれは医学教育、看護教育が悪いのです。さらにその医学教育のカリキュラムを作っている偉い先生に最も責任があるのです。本当に教育すべきは、大学病院や大病院の偉い先生方なのです。
しかし、そんな恐ろしいことはとても声に出して言えません。こっそりブログで書くのがせいぜいです。「がん対策基本法」が出来てお国からがん拠点病院が指定され、地域のレベルの低い開業医たちに「がんの知識や緩和医療の知識を啓蒙しなさい」という予算付きの指示が下りてきます。
国から指示されている多くの緩和医療講習会をどうやって開催するかの会議に呼ばれ、私は言いました。「緩和医療はホスピスだけのものではありません。むしろ地域で行うべきものです、開業医も対象にすべきです」と。しかしがん拠点病院の医師たちは無視です。11月23日の東京での在宅医療フォーラムの最後に、ある開業医がブチ切れて、がんセンターの偉い先生に言いました。「がん拠点病院はどうしてそんなに上から目線なの?」と。
私もこれまで何度も書いてきました。「がんを扱う医者はそんなに偉いのか?」「がんは決して特殊な病気ではない、むしろ最もありふれた病気じゃないか」と。がん拠点病院の医師は思っています。「開業医、とりわけ怪しげな在宅医なぞにがんの何が分かるのか」と。
しかしこれは間違いです。私は病院の医者よりはるかに沢山のがん患者さんを見ています。正確に数えたことはありませんが常に100人は超えているでしょう。しかも最期の最期まで(看取りまで)診ているのです。経験だけは豊富です。ズバリ結論を書きましょう。「がん拠点病院が日本のがん医療のまさしくガン」なのです。(ああ、本当の事を言ってしまった)ガンと言うだけあって実に治しにくいのです。
医療崩壊の原因は、医療費削減政策であり臨床研修医制度であると、講演では私ももっともらしく説明していますが、本音を言えば、病院医療が間違っているから医療崩壊なのです。病院医療者の頭の中を変えてもらうことが実は医療再生の最大のキーワードであることは誰も指摘しません。
実際、A病院と同じくがん拠点病院であるC病院では、在宅医療について私は3回も講演の機会を与えられました。「病院の悪口を思い切り言え」と言われたので正直に言いました。(笑)「不幸な在宅医療」について話せと言われたので話したら「不幸なのは長尾先生で、患者さんは長尾先生に会えて幸運だったね」とも言って頂きました。「管理職だけではだめだ、次回は若い医師や看護師にも聞いて欲しい」という私の我が儘も聞いてもらい3回目の講演では、大勢の病院スタッフに聞いて頂きました。さすがに3回も文句を言うと少しは病院スタッフの意識も変わってきます。
最近では早期からの紹介を頂き、C病院の患者さんはスムーズな在宅移行ができています。私は患者さんはともかく、まず病院を治さんとイカンと思っています。(こんなこと言ったら益々嫌われるだろうなー)。
帰りがけに看護師さんに「もちろん介護保険は準備出来ているのでしょうね」と尋ねると、「介護保険は入っていますがまだ若いので(40歳代)使えません」と真顔で説明する看護師さんの顔を思わずマジで見てしまいました。「末期がんなら無条件に介護保険が使えること」という常識さえ知らないリーダー看護師が緩和ケア病棟で働いているという現実。もし自分のクリニックの医師なら「このどアホ」と怒鳴るところですが、ぐっと我慢しました。正確に言うと過去には結構言ってきましたし、怒鳴りこんだこともあります。だからA病院からは嫌われているようであまり紹介患者は来ません。当院を含めて阪神間に取材に来ていたTVデイレクターさん達が、余りにもお寒い兵庫県のがん拠点病院に怒りを覚えて帰ったのも当然です。
という訳で、このBさんは介護申請も何もないまま明日金曜日の17時から自宅に帰られるそうです。介護申請をしても1日で(認定調査が行われる前に)亡くなるかも知れないのです。毎度毎度の、最悪のパターンが今日も続きます。「ホンマ、どないセーちゅうねん」何ケ月も前からこの日が来るのが分かっているのに、1日前になって突然言い出し、準備も何もないまま放り出される患者さんたち。がん拠点病院の看板が泣いています。
これまでこんな患者さんが20名くらいました。話や準備だけで結局、家に帰れずに終わった患者さんはその倍以上います。週末の退院はやめてくれといくら言っても、全員何の準備もないまま週末に帰ってきます。ひどい例では週末に外泊させてそのまま月曜日に退院手続きを取ります。稼働率アップのため何の意味もない病院の経営方針の巻き添えを食らいます。その間に安易に関わってしまい直後に呼吸停止して、「すぐに在宅医が駆け付けなかったから死んだのだ」と訴えられそうになったこともありました。この事実は来年の在宅医学会で発表することにしました。
「こんな患者さんは半年前から準備するのですよ」と看護師に説明しましたがキョトンとしていました。詰所のカウンターには患者さんに取ってもらうための、私の書いた小冊子「はじめての在宅医療」が山積みされていました。「本当はあなたたちのようなあまりにも不勉強な病院医療者のためにこの本を書いたのですよ。でもプライドを傷つけないように患者さん向けのようなタイトルをつけているけんだどね」と言いかけましたが、さすがに言えませんでした。
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