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2月17日(火)

2009年02月17日(火)

病院信仰が止まらない―コンビニ受診はまだかわいい。コンビニ救急車、コンビニ入院が現実です―

 早朝に携帯電話が鳴りました。「家族が前日に足首を捻ったので今から救急車を呼んでどこかに入院させたい」という相談でした。緊急性はなさそうなので、クリニックに行く途中に往診したところ、ただの捻挫のようでした。それでもなんとか社会的入院させたいような気配も感じました。救急車と入院1回分が節約できました。

 今夜訪問した家では先週土曜日の午後、私が訪問したたった3時間後に「オシッコが出にくい」のが急に心配になり、タクシー代わりに救急車を呼んで大学病院を受診したそうです。唖然としました。「たいした事はなく1時間後には家に帰って来られました」とのことです。そりゃそうでしょう。

 このような安易な救急車要請や純粋な社会的入院があとを絶ちません。
これが日本の現実です。そして毎日が格闘です。コンビニ受診なぞまだかわいいものです。我慢強すぎて手遅れになる人がいる一方、たいした事もないのにコンビニ救急車を使い、家族の都合でコンビニ入院できることが当然だと信じている方が少なからずおられます。これが地域での実感です。「医療崩壊という現実」と「あまりにも肥大化した医療への甘え」との乖離に戸惑う毎日です。

 希望する病院に入院できないと「最近の医者は何を考えているのだ」と怒り、「お前のような力のない開業医はダメだ。俺が県会議員や市会議員の口利きでいい病院に入院させてやる」と時々言われます。「ハイハイ」と聞き口答えはしません。どうせ理解してもらえませんから。
いい病院に入院しても思った医療でないとまた文句を言います。私に文句を言われてもしょうがないのですが、時にはけ口になります。それで経過が悪ければ今度は「弁護士に相談する」に変わります。医療は崩壊して当たり前かなと、最近つくづく感じます。

 マスコミは現実を直視する責任があります。しかしいまだに「たらい回しは、けしからん」という論調の記事を見かけます。昔はそのつど抗議メールをしていましたが、最近はその気力がなくなりました。    
結局、国民の意識が変わらなければ医療崩壊は止まりません。一方、在宅医療推進というなら国がしっかり医療・介護に投資をする必要があります。政治家は「医療・介護に使途を限定した消費税増税」ともっと明確に言うべきです。 

  ところでこんな贅沢な悩みに喘いでいる国は、世界中でもしかしたら日本だけではないのか。そもそも日本はいつからこんなひ弱な国になったのでしょうか。未曾有の不景気にあっても「健康病という病気」が大流行しているニッポン。「健康であらねばならぬという強迫神経症」であるという自覚症状がないニッポン。いつのまにやらすっかり甘ちゃんになってしまったニッポン人。今日は思いっきり辛口です。

 「医療・介護を手厚く」という主張は「自分の健康は自分で守ろう」とセットでないと意味がありません。こんな当たり前のことですが、あまり言われません。辛口の話は特に政治家は言えませんし、普通の医者も同じです。私もこの日記の中でしか言えません。しかし時々、「介護保険クソクラエという感じのたくましい気概を持った後期高齢者」を見ると、それだけで嬉しくなってしまいます。

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この記事へのコメント

今日は2021年2月20日、長尾先生原作の映画「痛くない死に方」公開で、
先生が銀座の舞台挨拶に立たれる日です。マスコミで取り上げられるのが楽しみです。
地元での一般公開を待つ中、お財布と睨めっこ。買いたい本もあるけれど、ガマンガマン。
ふと思い立ち、過去のブログを順番に拝見しています(タダなので・・・けちんぼで恐縮なり)
新型インフルの記事では、昨年来のコロナの経過を思い出します。
この時の経験が、今の日本でどれ位生かされているのでしょうか。

ブログを辿る旅は2009年末まで行きました。興味深い記事が色々ありますが、
「いつのまにやらすっかり甘ちゃんになってしまったニッポン人」が強く印象に残り再訪。
長尾先生はじめ志ある方々が、医療や介護を改善しようと声をあげ尽力されているのに、
その足を引っ張る大きな手があり、無知なままでいる人(私も含め)がそれに手を貸しています。

2本の映画で知らないことを知る人が沢山増えて、甘ちゃんニッポンから脱却できるといいです。
12年前の先生が綴られたブログにコメントを入れるのって、不思議な感じです。

Posted by taco at 2021年02月20日 02:44 | 返信

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