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あとは野となれ山となれ在宅医療。病診連携とは絵にかいた餅

2009年08月26日(水)

  連日いろんな病院から在宅医療の依頼がきます。先日、神経難病で気管切開に人工呼吸器がついて胃ろう栄養の患者さんが先日、家に帰って来られました。病院からの家族への指導は、毎回、手術で使う清潔手袋でディスポの吸引チューブを1日10本以上使います。1日1本の消毒液と1本の蒸留水を使うように指導されて家に帰ってきました。

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  しかし実は全部そんなものは要りません。吸引チューブは1日1本、消毒液は不要で水道水で洗えばいいだけです。じょく創のラップ療法も全く同じです。天動説を信じている人に地動説を説くのと同じ作業です。麻薬などの痛み止めの使い方にしても病院の洗脳を説くのは本当に大変です。あの手この手、人海戦術でマインドコントロールを解いていきますが、とっても時間と労力がかかり、病院でアホな指導した人を本当にうらめしく思います。一言、「ご自宅に帰られたら病院のような消毒の必要はありませんから、主治医の指示に従ってください」と言ってくれればいいだけなのですが・・・ これが本当の病診連携なのですが、病院の医者は紹介状を書いて、完璧な処方、完璧な消毒法を指導することが病診連携だと勘違いしています。私は、尼崎の病診連携委員会の委員長をしていますが、病診連携ほど難しいものはないと実感します。病院の先生方にはもっと、家に帰ってからをイメージして欲しい。私の意見に耳を傾けて欲しい。

 いまや「消毒という概念は死語なんですよ」と説明しても、「そんなことを言う医者は信用できない」といった感じで、疑われます。「病院ほど危険な場所はないのですよ」と言うとキョトンとしています。病院では、MRSAやバンコマイシン耐性菌など死に至るかもしれない怖い病原菌がウヨウヨいます。しかし自宅には常在菌しかいないのですよ。と、説明してもまだ半分疑われています。さらに、在宅では無菌とう概念は成立しないのですよ、と延々と説明しました。少しは納得された感じです。まあ時間をかけて信頼関係を築いていきます。

 もう一人の患者さんも寝たきりで全く食べられない患者さんですが、胃ロウを入れずに鼻からの胃チューブ栄養で家に帰ってきました。考えられないことです。退院前カンファレンスで、文句を言おうと思いましたが、患者さんの前で根源的な誤りを指摘することもできないため、しかたなく径鼻チューブのまま家に帰ることになりました。そしたら案の定、先週土曜日深夜には、チューブを自己抜去し、日曜朝に再挿入。本日もほとんど自己抜去してチューブ先端が気管入り口にあるまま、栄養剤を注入していました。激しい咳の異変に気がついた家族がパニックになって電話をして私が直行して、吸引などの応急処置で事なきを得ましたが、家族が栄養注入を続けていたら、ほとんどが肺に入り窒息死していたでしょう。予想される怖さは病院でも退院直後にきっちり指摘していましたので、さすがに御家族も納得されました。情けないのは病院の方です。また胃ロウ入院をする必要がなります。いまどきの医学常識を無視して手間を省いて、とりあえず厄介ものは早く家に帰せ、てな感じで放り出します。要するに手抜きです。引き受ける立場の人間からみれば「あとは野となれ山となれ在宅医療」という感じがします。このギャップはなんとかならないのでしょうか。私に意見を求めるだけでいいのですが。それはプライドが許さないのでしょうか。

さらに言うなら、形ばかりの退院時カンファレンスなど時間の無駄です。呼びつけられて、意味のない説明を聞かされますが、これはまるで下請け業者です。この方の場合も、ご家族の前で主治医や看護師から一方的な説明を受け、最後に「先生は何回往診に来てくれますか?」と聞かれました。まだ患者さんの顔も見ていのに、どうやって分かるのでしょうか。思わず切れそうになりました。家に帰す処置そのものに問題があって、在宅医療の形も出来ていないのに、若いドクターに偉そうに上から目線でアホな質問をされると本当に、病院医療者の意識を問いたくなります。私が勤務医の時は病院に来られた年配の開業医にはもっと敬意を持って接したものです。退院時カンファレンスは、まず患者さんの顔を見せて頂き、病院と在宅スタッフ同士で激論を交わし、最後に家族をも交えた話し合いをすべきです。そんな基本中の基本も分からないのです。病院スタッフには私の本でも読んで勉強して欲しいと思います。

うば捨て在宅ならそれなりに準備をして、正しい形で家に返して欲しい。麻生総理が言った「医者は常識がない」という言葉が思わず頭に浮かびました。「在宅医療の問題点」を何十回と講演しても、何冊も手づくりの冊子を配っても、病院医療者自身がもっともっと勉強してもらわないと、日本の医療は片手落ちのままです。在宅医療は進みません。
急性期医療と在宅医療は本来、車の両輪です。ならば、シャフトになるようなルールを私の手で作りたいと思います。

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この記事へのコメント

おっしゃる通りだと思います。医療従事者の洗脳を説くほど難しいものはありません。
最もコモンな高血圧治療はですら、利尿剤で十分などと正論をいうと、恐らく臨床の現場では拒絶されそうです。
先生のような考えに賛同している医師は、勤務医にも少なからずいうますのでご安心ください。
先生の文章を、日々の臨床の力にさせていただいています。
いつもありがとうございます。

Posted by COCCYJP at 2009年09月01日 12:15 | 返信

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