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東京で「感染症フォーラム」の勉強会。大倉集古館で「根来」を鑑賞。夜は待ちに待った「坂の上の雲」の初回。

2009年11月29日(日)

   今日は東京で開催された「感染症フォーラム」に参加しました。2つの講演を聞きましたので、以下、その要点を書きます。ちょうど講演中に今日、当院でもついに職員に新型インフルが出たとの電話報告を受けました。まあすでに1000万人の国民がかかったそうですから、麻疹のように早くかかった方がいいかもしれませんね。

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基礎再生産率(Ro)という概念があります。
これは1人の感染者が誰も免疫を持たない集団に加わったとき、平均して何人に
直接感染させることができるか、いわば感染力を表す指標です。

季節性インフルエンザ           1.2?1.4
新型インフルエンザ  欧米        1.2?1.7
           日本(神戸と大阪) 2.3
天然痘   5
ムンプス  4?7
風疹    6?7
水痘    7?12
SARS   12?18
麻疹    20

どうでしょうか。一番強いのは麻疹なのです。
新型インフルの10倍、感染力が強いのですね。

●新型インフルエンザについての講演要旨(矢野邦夫先生、浜松医療センター副院長)
1) 妊婦へのインフルワクチン接種は強く勧めるべき。催奇形性はない。
2) 微熱やアレルギー性鼻炎があってもワクチン接種して問題ない。
3) 妊婦へのタミフル投与はCDCは安全と言っている。
4) 授乳中の母親が感染した場合。母乳は汚染されていないが乳房は汚染されている。
授乳時は母親はマスクをして手指を消毒する。
5) インフルエンザ後の肺炎球菌性肺炎で人は死ぬ。
6) 予防には咳エチケットとこまめな手洗いしかない。
人は誰でも10分に1回は自分の手で目か鼻か口を無意識に触っている。
7) 肺炎球菌ワクチンの接種率は米国では65歳以上の
白人は60%、黒人とピスパニックは40%。だが、
日本の65歳以上の接種率はたった5%である。
8) 肺炎球菌ワクチンは19歳?64歳であっても、喫煙者と喘息患者には
接種すべき。また、2?64歳であっても慢性心不全や免疫抑制剤投薬中の
患者さんは接種すべきである。

●難治性上気道炎、耳鼻科感染症についての講演要旨(山中昇先生、和歌山県立医大教授)
1)小児の発熱では、必ず鼓膜も見ること。
2)中耳炎の鼓膜所見と臨床所見は乖離する。鼓膜所見の改善は遅い。
5日で治りきらず、10日間の抗生剤投与を要する人も多い。
軽症例は抗生剤不要だが、重症例はやはり鼓膜切開を要する。
中等?重症例が増えている。
3)耐性菌が増えているが、母親には「耐性菌」という言い方をしない。
  ドクターショッピングの原因となる。耐性菌への対処はまずペニシリンの増量。
4)欧米では中耳炎は小児科医が診ている。
5)子供の夜間の湿性がいそうを見たら「急性副鼻腔炎」を疑う。
  難治性の咳を訴える子供の83%は副鼻腔炎である。
  頭痛、顔面圧迫感、後鼻漏を見逃さない。これはCTでも診断がつく。
  ちなみに大人では30歳代の子育て中のお母さんに多い。
6)インフルエンザ菌と肺炎球菌が慢性副鼻腔炎の起炎菌であるが両者とも
  耐性菌が増加している。ワクチン接種は耐性菌対策にも有効である。
7)中耳炎はペニシリン(アモキシリンなど)がファーストチョイスであるが、
  重症例や1日2回しか服薬できない場合は2倍量を使う。
 アモキシリン=40mg?60mg/kg
  再発例には多めのメイアクト、ロセフフィンの点滴も行う。
  セフェムは1日3回飲まないと効果が出ない。2回では効果が大変薄い。
9) 子供の咳=クラリスとなっているが間違い。
  クラリスの少量長期が流行っているが耐性菌が増えている。
10)クラリスロマイシンとアジスロマイシンは全然違うもの。
  アジスロマイシンのフロントローデイング(最初に血中濃度を上げること)
は耐性菌によく効く。⇒ジスロマックSRが適している。

●私の結論

1) 子供はもちろん大人でも「中耳炎」と「副鼻腔炎」を絶対に見逃さない。
もちろんインフルエンザと誤診しない。
2) 中耳炎も副鼻腔炎にもジスロマックSRで良い。
3) ジスロマックならSR(1回飲みタイプ)だけで良い。
⇒在宅医療にとても向いている。服薬管理は最初の1回のみで済む。
4) 重症度にもよるが、ジスロマックSRを在宅でうまく使うべき。
  ジェニナックとの使い分けが今後の課題では?
5) 中耳炎を含めて、呼吸器系感染症(扁桃腺炎、気管支炎、肺炎)に対して
ペニシリンやセフェム、キノロンから入るのは良いが、効かない場合は
次はジスロマックSRを考えるべき。もしくは最初からジスロマックSRを使うべき。
クラリスの漫然投与は良くない。
6)従来のジスロマックはもはや不要ではないか?

 

勉強会だけでは勿体ないので大倉集古館で「根来」展を鑑賞しました。これらは中世の紀州、根来寺で作られた大変しぶい食器や家具です。漆の食器類がたくさん展示されていました。

夜は待ちに待った「坂の上の雲」の初回を見ました。NHKのオンデイマンド配信でも見たいと思います。ちなみに最近のオンデイマンド配信のトップは、以前ブログで書いた「素数」の番組で「魔性の難問―リーマン予想―」だったそうです。伊勢白山道さんもこの番組を見ていて、同じようなことを彼の人気ブログに書かれていましたのでビックリしました。さらに伊勢白山道さんのニックネームが、サラリーマンから取られた「リーマン」ですから、このシンクロニシテイに2度びっくりした次第です。
 

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