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3万2千人の無縁死。薄れゆく家族の絆と「生涯未婚」の時代
2010年02月02日(火)
日曜日のNHKスペシャルは重いテーマでした。今、日本には年間3万2千人の無縁死があります。亡くなった後、誰も引き取り手が無い孤独な最期です。「薄れゆく家族の絆」がキーワードです。家族に引き取られない遺骨は増えており、将来も増え続けます。そこで家族に代わって死後の手続きをしてくれるNPO法人が設立されました。設立後間もないのに入会者は千人を超え、50歳代で入会する人も増えています。私も在宅医療で時に経験しますが、決して他人事ではありません。
「生涯未婚」というもう一つのキーワードがあります。少子高齢化とは、生涯未婚も含まれています。生涯未婚の場合、頼れるのは兄弟だけです。しかし兄弟の絆も昔の日本より薄れてきています。20年後、女性の4人に一人、男性の3人に一人が生涯未婚になるという推計もあります。「生涯未婚の無縁死」は男性の方が多いのですが、非正規雇用制度やリストラという社会情勢も大いに関係しています。大きな政治課題でもあります。
一部の遺体は家族のサインで献体に回り、医学部の解剖実習室に並ぶと聞き、思わず30年前の解剖実習の風景を思い出しました。どこのどなたかは分からないけど半年かけて1体を解剖しました。そしてあともう1体を半年して解剖しました。あの遺体はいったいどこから来ていたのか?無縁死の方だったのか?
医学部1年生での解剖実習は今思うと凄い教育です。医療者になるための登竜門です。そこで合わないと感じる人は方向転換します。なによりも医学教育が「死」から入っているのが良いですね。しかし、今だから言えることは、出来ることなら「死体」からではなく、「死」から入る医学教育であれば、どれだけ医療が変わるでしょうか?医学生と一緒に在宅現場を回ることは意義深いと思い直しました。ちょっと脱線しました。
葬儀を行わず火葬する「直葬」も増えています。呼吸するお寺・大阪のおう典院の秋田住職も何十年も世話をすることのないお墓の扱いに大変困っていると言っていました。山積みにされた墓石は淡路島に運ぶそうです。その廃棄予定の墓石でできた山は、ちょっとした古墳のようでもなり、「無縁死」の象徴にも見えます。
「絆」という言葉が死語になりつつあるようです。医者の世界でも、医局、医師会、学会でも絆は確実に薄れています。医者と患者の絆も薄れています。この言葉の意味を、自分自身も含めて問い続けねばなりません。
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この記事へのコメント
NHKスペシャル、私も拝見しました。遺品整理の専門業者(特殊清掃業者)があると知りました。
3万2千人の無縁死が現代社会に投げかけるメッセージを、真剣に受けとめなければならない気がしました。 長尾先生が仰っておられる「死体ではなく、死から入る医学教育」、賛成です。
Posted by 内藤純子 at 2010年02月03日 02:26 | 返信
「家族の崩壊」は、なるべくしてなった問題だと感じてます。
教育に関する定義づけができていなかったのが問題なような気もします。
家族形態やライフスタイルなど、色んな問題があるんでしょうね。
Posted by MARUMARU at 2010年02月03日 10:48 | 返信
内藤先生
教育するには内藤先生のように大学にいなければなりません。
私も大学で教えたいですが、そんな能力もチャンスはありません。
今は幸いにもクリニックに学生が来てくれます。
一期一会ですが、しっかりと伝えたいと思っています。
スタッフには「長尾学校」と呼ぶものもいます。
私は本気で「長尾学校」だと思っています。
毎日、勉強会を重ねています。
Posted by 長尾和宏 at 2010年02月04日 02:35 | 返信
私も 同じです 不安で 不安で悩んでいます 死にたいと お望うことも何度もあります。毎日なやんでおります。
Posted by wakui kayoko at 2010年04月03日 10:35 | 返信
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