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二風谷ダム物語に見るアイヌ民族からの奪取は、アボリジニやアメリカインデアンの歴史と全く同じ

2010年02月07日(日)

昨年来、ダム治水の専門家、京都大学名誉教授の今本先生や「脱ダム宣言」の田中康夫議員らの影響で八ツ場ダム問題について考えるようになりました。今夜のNHKスペシャルでは、北海道の苫小牧の東を流れる沙流川に建設された二風谷ダム建設を巡る諸問題が見事に検証されていました。またアイヌ民族の貴重な記録映像でもありました。自然を崇拝しながら静かに暮らしていたアイヌ住民は、「沙流川総合開発計画」に描かれたダム建設という国家プロジェクトの下、自然も生活も土地もすべて奪われてしまいました。もちろんその過程においては色んな議論がありました。しかし結果として、誰もダム建設を止めることが出来なかったのです。これは誰も第二次世界大戦突入を止めることができなかった悲しい歴史を彷彿とさせます。

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日本の公共事業の在り方の根源を問う本質的なテーマが示されていました。自然環境を取るか公共事業というお金を取るのか究極の選択を迫られた時期があったのです。結局、選択を間違いました。その結果、1996年3月26日、着工から10年で二風谷ダムが完成しました。しかしかつては究極の清流であった沙流川の水質のみならず沙流川流域の土地の地質が大きく変化し、農作物の劣化に至りました。無用な自然破壊に当然の天罰が下ったわけです。

アイヌ人たちは国を相手に奪われた土地と死裁判を起こしました。あるアイヌ人が呟きました。「アイヌにとっては、ダム建設は民主主義という暴力にしか過ぎない」と。

これは、メイフラワー号でボストン近郊のプリマスに降り立ち次々とアメリカインデアンを略奪していったニューイングランド(=アメリカ合衆国)の歴史や、カメハメハ王朝を暴力で終わらせたキャプテンクックのハワイの歴史、アボリジニを略奪したオーストラリアの歴史と全く同じです。

話を元に戻すと、日本政府は沙流川総合開発計画を巡って
●ダム行政の間違い、と
●少数民族迫害の間違い、と
●自然破壊という間違い、の
3つの間違いを犯してきたのです。

国を訴えた裁判の結果は「アイヌを先住民族とはじめて認めた」画期的な判決でした。そして「二風谷ダムは日本でただひとつの違法なダム」としての道を歩むはずでした。しかしどっこいダム計画はまだ生きていたのです。2007年、さらに500億円というお金がダム整備事業にまだつぎ込まれていたのです。なんだかJAL問題と同じです。どこまで意味のない延命工作をするのでしょう?イヤ、意味がないではない、人畜有害でした。田中康夫氏が叫んできた「脱ダム宣言」は本当だったのです。

さらに追い打ちをかけたのが、予想をはるかに上回る速度(予定では100年分の予定がわずか5年という速度)で上流から土砂が流れ込み、ダムの50%が埋まってしまったのです。もはやダムではありません。洪水を防ぐという目的で造られたダムのせいで洪水が起こり易くなったのです。なんとも皮肉な結果です。ダムを造ってから何もいいことは無く、悪くなるばかりです。しかし国は絶対に認めません。ゲリラ豪雨のせいにして逃げています。これはこれまでの政治をまさに象徴しています。

不要な美容手術をしたばっかりに別の致死的な病気が惹起されたような感じです。この迷路となった難問は誰が解決できるのでしょうか?これは専門家に入ってもらわないと素人では解決できないでしょう。今本教授にはまだまだ頑張って欲しいです。

アイヌ人は木を「シリコモカモイ」と呼んで崇拝します。

木を切れば大地が暴れる。
大地が暴れれば川は死ぬ。

アイヌの教えはまさに自然の真理です。一度切った木は二度と戻りません。自然の循環が途切れることで、すべてが狂います。一度壊した山を取り戻すのに、300年もかかります。

広葉樹は絶対に切ってはならないのです。今、全国からボランテイアが集まって、沙流川流域に世界中から集まった広葉樹を植える地道な作業が始まりました。

脱ダム宣言の意味は限りなく深く、ダム行政の在り方は国民全体で考える課題です。日本の行く末はダム行政に象徴されています。地元ではまだダム建設を望む声があります。しかし政権交代したからには、前原国土交通大臣や田中康夫議員には、縺れた糸を解す作業で頑張って欲しいものです。

結論はひとつです。
アイヌの教えに従うべき、です。
改めるに憚ることなかれ、です。
そして行動を起こすこと、です。

八ツ場ダムもそうですが、20~30年もかかってもつれにもつれた糸を解すために政権交代したわけです。しかしそんな短時間では解決できるはずはありません。解決案を模索するのに10年はかかるでしょう。それまで民主党政権には頑張ってもらわなくてはなりません。地味ですが医療より上位の問題です。小沢さんには気を取り直して頂き、まだまだ頑張って欲しいと願います。それが天命だと信じたいです。
 

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この記事へのコメント

私は昨日、この番組を再放送で見ていました。
こちらのブログ、私の感じたことがすべてつまっており、感服致しました。

秀逸なドキュメンタリーである中、アイヌの長老の、法廷でのスピーチは魂に響いた気がしました。
数の暴力という直接的な表現が使われたのが印象的でした。
結局、何でもそうですが、「時代の空気」という奇妙で形なきものに支配された絶対的大多数の前に、異論を持つ者は少数民族でしかありません。
先生がおっしゃるように、あの大戦を避けられなかったのと同じ「空気」です。
残念ながら、我々は歴史からあまり多くのことを学んでいないようです。

また、「異なるもの」を尊重しない、現在の空気も、非常に危険な香りがします・・・

しかしながら、先生のようなお医者様がいらっしゃること自体、ホッとさせられます。
私も自分にできることをします。

Posted by ガミガミ at 2010年02月22日 04:03 | 返信

ガミガミさま
長尾です。ガミガミ怒られるのかと、恐る恐る見ましたが、ホットするコメントでした。ありがとうございます。
私はめったにテレビを見ないのですが、一部のNHKスペシャルとETV特集はなるべく見ます。
その中でもこの作品は素晴らしく、ご指摘のように、現代日本人にとって大変根源的な命題を投げかけていました。
アイヌの歴史は見事にアメリカインデアンの歴史に重なり、国がどこへ進むか暗示的です。
またダム問題は、田中康夫氏の「脱ダム宣伝」と近藤謙次氏の「ナサラ農法」と全く同義でした。
オンデマンド配信で見れると思います。
重いテーマですが、日本人にとって大切なテーマです。ぜひ多くの人に見て頂きたい番組がと思いました。

Posted by 和 at 2010年02月22日 10:15 | 返信

先生、コメント有難うございます。
>長尾です。ガミガミ怒られるのかと、恐る恐る見ましたが、
爆笑です!

引き続きこの話題なのですが、あのドキュメンタリに関して検索していた際に、このようなものをみつけました。http://www.2kamuymintara.com/film/index.htm
首都圏に暮らすアイヌの生活に関するドキュメンタリ映画を製作中なのだそうです。作品は寄付によって成り立つことが前提だそうで、知ったからには私もしました。

が、圧倒的大多数の人にとっては、アイヌは自分たちとは関係のない話、歴史上の何か、といった認識であろうと推測され、上記HPの中に出てくる論調は、日本による不当な差別の歴史であったり、現状における権利主張だったりします。彼らにとって、それはしごく当然のことであると私は思いますが、ここに、世間の温度との大きなギャップが発生しており、ことの難しさを感じます。

まあ、とりとめのない話ですが、誰かと共有したかったので・・・

もちろん、この話題以外にも先生のブログ、今後も拝見致します。
有難うございました。

Posted by ガミガミ at 2010年02月23日 04:18 | 返信

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