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公立病院と民間病院は、JALとANA

―日本の救急医療は民間病院の自助努力に支えられている―

2010年02月14日(日)

昨夜はある民間病院の理事長さんたちと遅くまでお話をしていました。日本の救急医療は民間病院の血がにじむような努力に支えられていることを再認識しました。多くの国民は救急医療はなんとなく公的なシステム、すなわち公立病院が主体となって運営されているように認識しています。しかしこれは大きな間違いです。以前に書いたように、民間病院の犠牲の上に成り立っているのが実態と言うべきです。
http://blog.drnagao.com/2009/10/post-211.html
お話を聞くうちに、多くの公立病院は一旦つぶさないと医療再生できないのかな?という気がしてきました。

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多くの公立病院は赤字を垂れ流しています。非採算部門もやるので赤字はしょうがないと説明されていますが、とにかく赤字なのです。それを延々と税金で補てんしています。そもそも赤字になるのは本当に非採算部門もやるからでしょうか?答えはNOでしょう。医師以外の給与が高すぎるのです。看護師や事務職員の給与が民間の3~4割も高いのです。田中康夫氏の言葉を借りるならまさに「労働貴族」です。そうした公立病院の労働組合が現政権の支持母体ですから、この構造は簡単には変わりそうにありません。

民間病院には税金からの損失補てんはありません。100%自分の借金で賄わなくては誰も助けてくれません。倒産寸前で自転車操業を続けています。なんだか、JALとANAの関係に似ていませんか?JALは法的整理に入りました。ゼロからの出発です。公立病院もそうしないとお役所体質は変わりようがないかと思います。

公立=善、私立=悪、というイメージで捉えられているように感じますが、そんな単純ではありません。今こそ、慢性赤字垂れ流し病の公立病院は一旦整理し、逆に頑張っている民間病院は応援するような発想の転換が必要です。一般の方やマスコミは、民間病院の惨状を御存じありません。

民間病院トップの間では、「もはや医療なんていっそ壊れてしまわないと現状は国民には理解してもらえない」という諦めムードが漂い始めています。私もそんな気になる瞬間が時々あります。
以下、昨年10月31日のブログから引用します。

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大阪府医師会理事の山本時彦先生の講演「救急医療崩壊は救えるか」を聴きました。大阪は日本でも救急医療が充実した地域です。しかしその大阪でも「たらいまわし」や「診療拒否」事件が報道されています。救急車が動き出すまでに20件以上の病院照会を要するケースは3倍に増えています。救急医療崩壊はまさに医療崩壊の象徴なのです。
救急医療は公立病院が主に担っているという印象がありますが、なんと90%は民間病院が受けています。公立病院には補助金があり、また大学病院などの3次救急にも政治的予算がついてきます。しかし民間病院は自力で2次救急を担っており。やればやるほど赤字になる構造です。山本病院の収支決算書を見せて頂きました。毎月、なんと250万円もの赤字が続いています。これは国の役人も我々開業医も知らない驚くべき事実だと思います。
山本先生はその解決策として、救急車1台ごとに2万円の収入があればなんとかやっていけると提言しました。1万円は病院収益に1万円は救急診療医にフィードバックすればいいのです。私は、さらに「救急搬送1件について2万円の自己負担をお願いしたらどうか」と思いました。みなさん簡単に救急車を呼びすぎです。単なる発熱であったり目まいでも簡単に救急車を呼ばれます。タクシー代わりに呼ぶ人も沢山います。そして搬送先がみつからないと暴れる人までいます。2万円提案は、全国で1000億円、大阪で90億円あれば実現します。これは結構、現実的な改善策ではないでしょうか。ダムを一つ中止すれば可能ではないでしょうか。
 
さらに消防隊と医療機関の連携にも予算をつけて強化すべきです。尼崎の在宅現場ではすでに亡くなっている人を乗せて走る救急車がいます。「看取りで話がついているからちょっと待って」と言っても救急車を呼ぶヘルパーが沢山います。「低血糖だから看護師をよこすからちょっと待って」と言っても、一介の在宅医の意見など無視して勝手に搬送する救急隊もいます。開業医なんて彼らの眼中にありません。「救急と在宅医療の連携について説明しますよ」と消防署長に申し出ても、断られるのが現実です。
 
「民主党政策は公立病院優遇に傾きすぎている」という指摘にも頷きました。たしかに2次救急の90%を担っている民間病院を助けない政策は間違っています。
またモンスターペイシャントについて聞きましたが、どこも同じなんだなと思いました。
95歳の老人が受診して外科医が診たら息子さんが「整形外科専門医が見なかったのは大問題だ」と新聞社に連絡した話がひとつ。
 持病が悪化して死亡到着した患者さんに心肺蘇生を試みるも生き返らず「残念ながらご臨終です」と家族に説明したら、いきなり110番された話など、ブラックジョークのようです。
志を持って進んだ救急医が現場から逃げ出すのはこんな市民がいるからです。
 山本先生は、最後に「臓器別に専門分化しすぎた医療」を指摘し、「専門医と総合医は半々ぐらいでいいのではないか」と述べられましたが、まさに我が意を得たりでした。妊婦の救急や精神疾患の救急などの各論についても触れました。懇親会では大阪市立総合医療センターの部長さんとも意見交換でき、大変有意義な夜になりました。

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