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胃ろうの自己抜去にて今夜も緊急往診

―「管もの」在宅の宿命―

2010年02月14日(日)

今日は久々の休養日、と思いきや、夕方、寝たきりの患者さんの家族から「胃ろうを自己抜去した」と電話があり緊急往診しました。普段は気管カニューレをよく自己抜去するため両手は抑制されていますが、介護者が気づいたときには本人が胃ろうチューブを握っていたそうです。バルーンの水は抜けていませんでした。すでに私の到着まで1時間半位たっていました。バルーン型胃ろうを入れようとしても入りません。暴力的に入れることはできませんので、基幹病院に電話すると、偶然にも消化器専門医がいて内視鏡下に胃ろう挿入をトライしてくれるという返事をもらい救急搬送しました。

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しかし病院でも挿入できなかったため入院し、明日、再穿刺の予定となりました。3年間以上も無事故で管理してきた胃ろうなのに・・・。ああ残念!胃ろうが抜けても直後なら再挿入可能です。しかし時間の経過とともに再挿入の成功率は大幅に下がります。明日の朝まで待つと絶望的です。ですから病院にお願いしました。普段の脅しが良く効いているのか、今夜は若い医師でしたが大変気持ちのいい対応をして頂きました。

胃ろうや膀胱チューブ、そして気管切開など管がついた在宅医療が増えています。在宅医仲間では「管もの=くだもの」と呼んでいます。「管もの」は在宅医療でも施設でも一般には敬遠されがちです。

1) 「管もの」の管理に自信がない
2) 抜けた時の救急対応に自信がないか面倒くさい
3) 材料の調達に苦労するし保険請求が面倒くさい
などの理由です。3については国の課題ですので別の機会に詳しく書きます。

たしかに自然抜去や自己抜去で緊急往診することは現実に頻回にあります。これはどんなに頑張っていろんな工夫をしても中々防げません。その都度、迅速かつ丁寧に対応しなければなりません。今夜のように胃ろうが抜けた場合、再挿入しても先端が胃内にあることをしっかり確認しないと、万一、胃の外にあれば、そこから栄養剤を注入すると、患者さんは死んでしまします。

医学の進歩に伴い確実に「管もの」在宅が増えています。将来自分自身が「管もの」になるのは絶対イヤでも、両親や配偶者にイザそれが必要な時がくれば「管もの」を選択するケースが多くあります。倫理的にも大変難しい問題です。当院では何十人かの「管もの」の在宅患者さんがいますが、一旦入れたものには丁寧に寄り添って対応しています。

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この記事へのコメント

長尾先生本当にご多忙ですね。感服いたします。お疲れ様です。
管者・・薬剤師は医療用具の使い方をこれから学びたいものです。
薬剤師単独で在宅に向かった際にこんな場面に出会ったときの対処法など必要ですね。
まだ見たことすらない医療用具が沢山あります。

Posted by 狭間紀代 at 2010年02月15日 04:59 | 返信

狭間さま。
長尾です。
私もそう詳しくはありません。
若い医師たちがよく勉強しています。
このような「在宅くだものの、非常時の対応マニュアル」が
あればいいですね。
薬剤師さんやご家族にも1冊ずつ配布しておけばちょっとは違うかな。
このケースの場合、新しい胃ろうをそっと差し込んでくれていたら
よかった。
普段から、非常訓練のようなシミュレーションをしておかないとね。
なかなか時間的な余裕がありませんが。
本当はこれこそが、「退院調整」なのですが・・・

Posted by 長尾和宏 at 2010年02月16日 12:31 | 返信

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