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「地域医療貢献加算」は要らない
2010年02月18日(木)
昨日配信されたMRICの文章です。開業医以外だれも興味はないと思いますが・・・。
「地域医療貢献加算」は要らない
長尾クリニック(尼崎市) 長尾和宏
診療報酬改定議論が続いています。診療所71点、病院60点の再診料を両者の中間に統一すると報道される一方、「地域医療貢献加算」という新しい点数の導入が検討されています。私はこれは第2の「5分間ルール」どころか、不用な混乱を起こすと懸念します。もしこのような財源があるなら再診料を据え置く方向に使うべきだと考えます。
【地域医療貢献加算とは】
地域医療貢献加算とは、「休日・夜間に、患者からの問い合わせや受診等に対応可能な体制を確保している場合」に再診料に加算する点数です。施設基準として「当該診療所において、患者からの電話問い合わせに対し、標榜時間以外も対応を行う体制を有していること」となっています。診療所と自宅が別の開業医が増えていますが、患者さんに電話番号を教えて時間外も対応しなさいという誘導政策のようです。
【これ以上応召義務を負わせるのか】
医師法には応召義務が定められています。昔の医師は昼夜を問わず往診していましたが、現在の医師も全員とは言いませんが、気になる患者さんには連絡先を教えて電話再診や往診という形で出来る範囲で一生懸命に対応しています。わざわざ点数を付けなくても医師として当然の行為として行っています。すでに廃止になった終末期相談支援料もそうですが、わざわざ点数誘導しなくても個々の医師の出来る範囲で自然と行われています。
【医師会員としての地域医療貢献】
そもそも日本医師会員は市町村医師会員として、夜間休日診療所出務や救急当番医、学校医、産業医、各種健診への協力、健康教室など診療所外でも様々な活動を日常的に行っています。新型インフルワクチン集団接種はその一例です。医師会員であること自体、それぞれの能力に応じてなにがしかの地域医療に貢献をしているという紛れもない事実を認識して頂きたいと思います。
【365日24時間対応の大変さ】
在宅療養支援診療所の算定要件は365日24時間対応です。当院も年間40余名の在宅看取りを行っています。しかしこれは在宅患者さんであって、もしすべての外来患者さんに携帯電話を教えたらどんなことになるでしょうか?まず名前だけでは病状や投薬状況を思い出せない場合も予想されます。もし診察を要請されて断れば、応召義務違反になるのでしょうか。応召義務を巡る裁判は必至です。以前、酒気帯びで診察した医師が大きく報道されていましたが、地域医療貢献診療所の医師は一生酒を飲めないことになります。全患者に365日24時間対応とは、考えただけで気が遠くなります。開業医がいくら個人事業主とはいえ、労働衛生の観点からもそのような労働環境は常軌を逸しています。
【いまこそ地域医療連携を基軸にした改訂議論を】
「診療報酬議論にもっと地域医療連携を」(2月6日配信MRIC、Vol40)にも書きましたが、病院へのフリーアクセス制限、コンビニ受診を減らす工夫に知恵をしぼるべきです。時間外救急には、地域救急医療体制の充実で対応すべきです。また診療報酬規則の簡素化にも逆行する行為です。このような姑息的な点数操作ではなく、もっと根源的な診療報酬改訂議論を望みます。どうしても地域医療貢献加算を付けるならすでに多岐にわたり地域医療貢献をしている医師会員全員とすべきでしょう。もっとも、もしそんな財源があるのなら、すでに臨界点にある診療所の再診料を据え置くべきです。
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