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この春はインクレチンの咲き乱れ

2010年02月18日(木)

この春、糖尿病治療に大きな変化が起きます。「インクレチン」という新しい薬が続々と登場するのです。大阪大学第二内科では25年前からインクレチンについて研究されていました。インクレチンとは腸から出るインスリンのような働きをするホルモンの名前です。遥か昔から続いてきた研究が今頃やっと日の目を見たのです。実はメタボもそうです。25年前に内臓脂肪に着目してきたのが最近大ブレイクしたのです。阪大2内のもうひとつの花が咲きはじめました。この春はインクレチンの咲き乱れになりそうです。

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今夜の生活習慣病研究会はまさに阪大2内の勉強会でした。まず「市立川西病院における生活習慣病センターの現状」のお話を聞きました。ゆったり時間をかけた医師による生活指導で生活習慣病の驚くべき改善が見られたとの発表でした。私は「その患者さんは特定検診や特定保健指導は受けていないのですか?」と質問しました。演者の答えは「特定保健指導も横でやられているが、そんな画一的な指導では効果が出ない」でした。偶然にも昼の企業のミーテングと同じ結論でした。

メインは兵庫医科大学の宮川潤一郎準教授による「糖尿病治療の新展開―インクレチン治療薬―」の講演でした。インクレチン研究の第一人者、宮川先生は今や超売れっ子です。以下は医療者向けのサマリーです。

【インクレチンとは】
インクレチンという名前はIntestine secretion insulinから由来している。ブドウ糖濃度依存性に分泌される消化管ホルモンである。血糖が高いときだけ分泌される。低い時は分泌されない。おもに血糖刺激で小腸上部から分泌され半減期は短い。

【インクレチン効果とは】
GIP(ペプチド42ケ)とGLP1(ペプチド36ケ)がインクレチン効果の主な物質である。それぞれK細胞、L細胞で産生されるが、同じ細胞でも作られることもある。GLP1は消化管からの満腹シグナルでもある。β細胞massを増やす。

【GLP1の多彩な生理活性】
GLP1は複数の作用でインスリン分泌を増強する。摂食抑制、体重減少、学習効果増大、脳には保護的に作用する。心血管系に対する作用も注目されている。内皮細胞機能も改善する。肺や腎臓にも作用するし、血圧も5ぐらい下げる。

【インクレチン治療とは】
GLP-1やDPP-4による血糖治療をインクレチン治療と言う。海外ではすでに2種類の薬が出来ている。他にも10種類位開発中である。

●ExenatideはDPP4によって切られないGLP-1である。注射薬として米国では既に使われている。欠点は抗体が出来やすい(49%)。半減期は2.4時間と短いので1日2回注射しなければならない。
●Liraglutide =long-acting GLP-1 derivativeは半減期が14時間と長く、1日1回の注射として用いられる。抗体が出来にくい(8.6%)のが利点である。

【DPP-4阻害薬】
NativeなDPP-4を阻害する薬。DPP-4 familyと呼ばれている。シタグリプチンとビルダグリプチンに加えて、アログリプチンも6月に武田製薬から出る。従って年内に3つのDPP―4阻害剤を使えるようになる。HbA1cを1.5くらい下げる。DPP-4阻害薬は空腹時血糖も下げる(平均2~30も)。ブドウ糖濃度依存性に分泌されるので血糖コントロールが高い人ほど効くと予想される。DPP-4阻害薬はGLP-1と違って、グルカゴン分泌も抑制する。HOMA―IRも改善する(=インスリン抵抗性を改善する)。

DPP-4阻害薬はGLP1のみに作用するわけではない。Substance Pも作用するのでACE阻害薬との併用には注意を要する。

【GLP-1かDPP-4阻害薬か】
両者は一長一短で今後の検討が待たれる。前者は食欲を抑え体重減少作用がある。嘔気は効いている証拠である。

【小分子GLP―1も働いている可能性がある】
GLP-1が分解された代謝産物も生理活性を持って血糖降下に働いている可能性がある。
また将来インクレチン抵抗性糖尿病が同定される可能性がある。
 

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