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白血病の猫
2010年03月15日(月)
今日も医学生(実習生)を乗せて訪問診療です。肺が悪い母親を介護している子供さんの目が相当見えなくなってきました。手術を勧めました。介護者が入院する間だけは、「ADLの低下したお母さんを、ショートステイに預けましょうか?」と聞きました。ところが、2人とも笑って大反対されます。「そんな必要はない。べつに死んでもええやんか」とあっさり言います。本人も「そう、私、いつ死んでもいいから」と言います。よくよく聞くと、飼っている猫が白血病で死にそう、だから入所させられない、そうです。
猫は敏感で、家族以外の気配を感じるとどこかに隠れるそうです。昨年の夏、調子が悪いので獣医さんに診せたら「ウイルスによっておこる白血病」と診断されたそうです。思わずカルテに書きそうになりました。人にうつるかもしれないのと、臆病な猫だから一人(一匹?)にできないそうです・・・?
尼崎には人間より動物の方を大切にする患者さんが大勢おられます。私はいつ死んでもいい、飼っている動物のためなら自分の命と交換してもいい、と言われる方が大勢います。確かにこの患者さん家族も、本物の人間の病気は本当にどうでもいいようです。血液検査さえもさせてもらえません。少しは経済的事情もあるようです。しかし何万円もする猫の血液検査などは、しっかりしているようです。
生活保護の方を訪問すると、人間の医療費はゼロですが、ペットの医療費に月、3~4万円かけている方もおられます。人間よりペットが優先するのです。なんだか複雑な気持ちになります。もう理屈では説明できない、感情の世界です。
研修医時代、獣医と医師の両方の資格を持っている先輩がいました。ある日、病院の救急室で犬を治療していました。連れてくる方も連れてくる方ですが、診るほうも相当なものです。よくあることかな?と思っていましたが、後にも先にも、人間と動物を同じ場所で、同じように診察・治療していた医師は、あの医師のみです。今にして思えば大物です。犬は健康保険などないので、タダで診ていました。
私は白血病の猫の診察や治療をしないし、できません。するのは人間だけです。
「白血病の猫の命の方が大切だ」と、2人に明言され、返す言葉がみつかりませんでした。
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この記事へのコメント
先生スミマセン、私も同じ人種です(汗)
去年の夏に飼い猫が病気になり、家族全員で猫にかかりきりでした。この記事の方のお気持ち痛いほどよくわかります。(涙)
その時の病名や原因は不明でしたが、肝臓の数値が異常に悪かったです。14日間目を見開いたまま寝たきりで生死の境をさまよいましたがなんとか持ちこたえてくれました。
その渦中に母の介護に行ってる時、娘から「ミーコが血尿した!」と連絡があり、芦屋のオバチャンがいらしたので(←この方もネコ好き)母をまかせて飛んで帰って獣医さんに滑り込みしたこともあります。夏休みの二泊三日の家族旅行はキャンセルして病院代にあてました。完全に家族の一員です。しかも別格です。箱に入れられて捨てられてたコですから「箱入り娘」です。(笑)
今は動物も人間も同じ病気にかかるようですね。インスリン取りに来る飼い主さんも見たことありますし。
尚、うちの子は白血病の予防注射は打っております。猫エイズも先週打ってきました。尼崎の猫は予防注射は必須ですね。
思わず書き込み猫キチガイがばれてしまった・・・。
Posted by チズ at 2010年03月16日 08:22 | 返信
チズさま
コメント、ありがとうございます。
私の話が決して誇張ではないことを証明していただき、ありがとうございます。
インスリンを打つ猫ですか・・・。
人間(=飼い主)は、重症糖尿病なのに病院には行かず、猫には最高の医療を受けさせる。
こんな現実に混乱しながらも上手く対峙するのが、町医者かと思っています。
それにしても、日本人とは、相手が人間であろうが、無かろうが、とにかく
優しい人種だとつくづく思います。
Posted by 和 at 2010年03月17日 02:20 | 返信
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