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昨日は門前払い、今日は来て来て
―在宅医療とはピザ屋の出前か、はたまた押し売りか?―
2010年03月17日(水)
がん拠点病院から珍しく当院に末期がん患者さんを御紹介頂きました。退院前カンファレンスを経て、先週、退院されたその日から在宅医療を開始しました。医学実習生を連れて雨の中訪問すると、ご家族に「何をしに来たの、来なくていいの」と門前払いされました。しかし、今日は手の平を返したように「痛いからすぐ来て」です。なんで、たった1日でこうも変われるのでしょうか?
答えは「お金」でした。今朝、訪問看護師が訪問した時に医療費について聞かれたそうです。ご家族は「医者が来る度に多額の費用がかかる」とおおいに恐れていたようです。ところが、この患者さんは、身体障害者2級を持っていることが今日判明し、2級以上なので1ケ月に1200円が上限であることが分かりました。毎日看護師や医師が訪問しても、ほとんどタダです。
げんきんなものです。その瞬間から、「来て来て」に変わりました。今度は、ピザ屋の出前のような軽さです。痛みも相当我慢していたようです。想像したとうり「イタイイタイ」状態でした。さっそく、麻薬を用意しました。「お金はかかりません」と言いながら。
ずぶ濡れになって、車をぶつけながら訪問しても、まるで押し売りのように「シーシー」と追い返されました。同行した実習生もさぞかしビックリしたことでしょう。院長(=私)のメンツも丸潰れです。普通のお医者さんなら怒って、もう二度と行かないでしょう。正直、私も意気消沈しました。しかし、相手は末期がんとそれと対峙している家族です。寄り添うしか道はありません。
そして、寄り添えば、必ず心は通じます。経験的にそのことを知っています。
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この記事へのコメント
そうなんですね。やっぱ凄いですね。大変なのですね。
在宅医の先生方のすさまじい姿を私たち薬剤師は知りません。
「甘えていてはならないな」と感じました
Posted by 狭間紀代 at 2010年03月17日 11:27 | 返信
この件で不思議に思ったことを書かせていただきます。在宅にて生活されている場合、初めて関わった方(例えば、包括さんとか役所の方とか・・・かもしれませんが)CMさんが初回時に身体障害者手帳を所持されていることをなぜ聞いていらっしゃらなかったのかな、と思いました。医療依存度の高い方は特に私は使えるものは最大限に使ってただだいて負担を減らすことができるように色々思案します。全く制度のことを知らない方が多いです。「こういうことはまず役所で申請しないといけない・・・取るもんだけとって大事なことはお役所さんは提案してくれない。役所でたまたまいい人にあったら提案してくれる人もいるけど・・・。」と話します。お役所の方は本当に色々で最近は随分と優しくなりましたが。ともかくお金の心配が軽減されて必要な医療が本格的に開始されたことをとても嬉しく思います。在宅での皆様は大抵の方々が細々と懸命に生きていらっしゃる(ご本人様も介護されているご家族様も)お姿にはいつも心を打たれます。それと心を込めて現場で活躍されている方々にもいろんなことを教わります。
Posted by 山崎裕子 at 2010年03月18日 09:14 | 返信
昨日の実習では大変お世話になりました。こちらのメールの患者様が、今頃先生のおかげで痛みなく過ごされているんだろうなあ、と思うと心から良かったなあと思っております。
昨日のお車の中での話の続きですが、3月17日、朝日新聞に高校無償化の法案が、16日に衆議院を通過したという記事の内容に対する、怒りがまだおさまりません。
高校無償化の財源を確保するため、政府は税制改正を行い、16~18歳の子供がいる世帯の(特定扶養控除)を縮小する、とあります。そして、私の上の子供(21歳)のように、高3の時にいじめに遭い、中退せざるを得なかった(今は中退させておいてよかったと思っています。それはあのまま高校に通っていたら、今、生きてはいないと思うからです)。
いじめた側の人間が、高校無償化の恩恵を受け、私の子供のような、学校の事が原因で精神疾患にならざるを得なかった子供さんがフリースクール・定時制・通信制に通っている例はたくさんあります。
そして、どうして朝鮮学校・特別支援学校高等部も対象外になるのでしょうか。
私の下の子供は知的障害で、特別支援学校に通っております。特定扶養控除を縮小するとなると、増税になってしまいます。不登校や引きこもりの子供たちやその家族の気持ちを考えない、なんというえげつない政策なのでしょう!
障害の子供を持つ親でも私のように、離婚する時はします。養育費もありません。日々、子供よりも仕事を優先せざるを得ない環境です。私と同じような気持ちを持つ親は他にも、ざらにいると思います。私が働かないと、私を含め、家族3人は死を選ぶかもしれません。表面化していないだけで、障害を持つ親子の無理心中が相当数あると思われます。私はまだ働けるからいいのですが。
ただ唯一、ほっとしたことが兵庫県知事がこの政策に批判し、朝鮮学校を除かないと言う記事も書かれておりました(よく考えたら当たり前のことなんですが。差別なんてもってのほかです!)。川端達夫文科相が10日の衆院文部科学委員会で、「負担増となる家計については、適切な対応を検討する。」と述べたが、対策を先送りする考えを示した、とのことです。
私の思いが、国に伝わるといいのですが。どうぞよろしくお願い申し上げます。
昨日は、緊張の連続で体が固まっていました。先生の患者様に置かれた手の優しさを見ることができて、未だに感動が残っております。それが一番の先生から得た、上手く表現できなく申し訳ありませんが、宝物です。心より感謝申し上げます。
このメールをお読みいただけたら幸いです。そして先生と出会えたことを本当にうれしく思っております。今日も昨日の事を思い出しつつ、1日自分なりに仕事を頑張ることができました。
Posted by 山崎裕子 at 2010年03月18日 11:31 | 返信
山崎裕子様
>先生の患者様に置かれた手の優しさを見ることができて、未だに感動が残っております
研修医さまでしょうか?
細やかな感じ方に鋭く優しい医療者になられると頼もしく感じなから読ませていただきました。
長尾先生にお出会いになられましてとても幸運ですね。頑張ってくださいね。
Posted by 狭間紀代 at 2010年03月20日 01:33 | 返信
山崎裕子さま
長尾です。コメントありがとうございます。
子供さんの税金の話は知りませんでした。
しかるべきところに伝えておきます。
ご指摘の、在宅の医療費についても、私なりにもう少し考えてみます。
在宅も外来も、値段表のない寿司屋のような世界が、医療界です。
しかし値段表を見ても、内容が理解ができないのが、診療報酬規則です。
「制度の簡素化無くして、明細書発行は窓口混雑を増やすだけ」というのが、
私の考えです。しかし現実は、全く逆方向に進んでいます。
また、ご意見を聞かせてください。ありがとうございました。
Posted by 和 at 2010年03月22日 10:01 | 返信
私は研修医のような高いお立場でなく、一介のケアマネージャーです。励ましありがとうございます。感謝いたします。
Posted by 山崎裕子 at 2010年03月22日 09:48 | 返信
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