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腰痛で来院した肺炎

2010年03月25日(木)

激しい右腰痛で休日夜間診療所を受診した患者さんが一昨日来院されました。当直医に「尿管結石か胆のう炎だといわれた」と言うので、エコー検査をしましたが、どちらも否定されました。血液検査をすると強い炎症所見、細菌感染所見を認めました。胸部のレントゲンを撮るも原因不明なため、翌日、承諾を得て腹部のCTを撮ると、右肺の一番「底」の部分に肺炎が見つかりました。肺がんの可能性も少しあります。

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内科とは何か?診断学です。一方、外科とは治療学。
極論かもしれませんが、診断が得られればおのずと治療法が得られます。従って、内科診断学が内科学の根幹です。開業医の命は「診たて」だと思います。実際、私は数々の珍しい病気を見つけては学会や研究発表、なかには論文発表してきました。

この患者さんは初診の夜に電話で血液検査結果を説明し「原因は今のこところ、全く分からない」と言いました。私は分からない時は、はっきり「全く分からない」と言います。あまりありませんが。患者さんは指示どうり翌日、遠方より来院され、お金の相談もしたうえでお腹のCTを取って診断が確定しました。

胸部単純レントゲンでは見落とされる病気が時々あります。肺の下部は、腹部CTを撮ると自然に見えてきます。それで偶然肺がんが見つかることもあります。この患者さんは、肺の「底」に起こった肺炎が胸膜を刺激して、放散痛として激しい腰痛を訴えました。発熱も咳もなぜか全くありませんでした。

時にこのような非定形的な肺炎に遭遇します。老人が多いのですが、この方のように比較的若い人もいます。もちろん、肺がんも鑑別していきます。さらに即日、禁煙も命じました。患者さんと握手で約束しました。お互いいいご縁だと思います。

もう肺炎とわかればさっそく抗生物質での治療開始です。仕事は当然休ませるのですが、この患者さんは「休むとクビになる」と泣きそうな顔になりました。「肺炎で働いていいと言う医者はどこにもいない。ここは自己責任で判断してください」と説明しました。

もしこの患者さんを病院で診たなら、泌尿器科⇒消化器科⇒整形外科⇒循環器科⇒呼吸器科と、ドミノ倒しのようにいくつかの科を巡り巡って、初めて確定診断に行き着きます。しかし自慢するわけではありませんが、当院のようなフットワークのいい高機能診療所では、すぐに(遅くとも24時間以内)に診断がつきます。

それも365日、年中無休でそれが可能です。日曜日などは病院から内視鏡検査を依頼されることもあります。総合診療、複数医師制(10人前後)だから可能です。在宅患者さんも同様です。在宅患者さんの救急対応もしっかりします。特に非がんの在宅医療には、最新医療をうまく応用するべきです。

検査が早すぎて、初診して1時間以内に、胃がんのステージ4、紹介病院まで決定している場合も、いくらでもあります。病院の速度の10倍です。あまりにも早すぎて、「あっけなさすぎる」とも言われます。「もっと、もったいつけたらいいのに」と忠告してくれる同業者もいます。そんなことは気にしません。

その結果、何百人という癌患者さんと関わることになります。ちょっとした癌センターのような感じにどの見学者も驚きます。もちろん、早期、時には超早期の癌もたくさん見つかります。超早期すぎて専門病院に紹介しても「どこに癌があるか分からない」と言われて、つき返されたことが何度もありました。すべてあとで謝ってもらいましたが。

少しは地域医療に貢献していると内心、自負しています。しかし4月からは「貢献していない」グループに所属します。それどころか保険者から見れば、当院のような高機能診療所は平均点数が高いため「悪」と認定され、きっと厳しく取り調べられることでしょう。想像しただけでウンザリします。もちろん身の潔白を証明すればいいだけですが、証明すること自体に多大の労力を払わなくてはいけません。何も検査しなければ目をつけられません。「キジも鳴かずば撃たれない」ですが、この性格上、無理です。

保険者からみれば、検査=悪、検査をしない=善、です。しかし、患者さんから見れば、
検査をしないで見落としすれば、悪であるどころか訴えられます。数年間にわたる不毛な争いに巻き込まれます。きっと私は堪えられないでしょう。こんな私でもあとで振り返ってみて「ああ遠慮せずに検査しておけばよかった」と悔むことはシバシバです。
 

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