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気管支喘息とCOPD治療の進歩を再確認
吸入合剤のさらなる可能性
2010年05月23日(日)
久々の東京でのおおきな勉強会に参加しました。
気管支喘息とCOPDについての最新情報を勉強しました。
COPD患者は、530万人もいるのに、認知が不十分です。
スピードスケート長野五輪金メダリスト・清水宏保師氏の
講演も拝聴しました。彼も喘息患者さんでした。
昨日の土曜日、重症気管支喘息の新患さんが来られました。
前医でメプチンエアーを、なんと週に2本も処方されていました。
初診時にいきなり「メプチンエアー10本を出してくれ!」と要求されて
ビックリしました。相談の上、8本で納得してもらいました。
喘息治療は、この20年間、飛躍的に進化しています。
私が研修医だった時、毎夜、重積発作の患者さが救急搬送されていました。
気管内挿管したことも頻回でした。
しかし最近、そんなことは記憶になりません。
喘息死が7000人から2000人まで減少しました。
これは医学の進歩、そのものなんでしょう。
現在、吸入ステロイドとβ刺激剤の合剤(ICS/LABA配合剤)がベース薬と
なっています。
さらに、合剤は気管支喘息のみならず、COPDにも有用です。
新しい吸入薬は、喘息の死亡率の減少QOLに大きく貢献しています。
以下、医療者向けサマリーです。(長文)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
●喘息と吸入ステロイド(ICS)
神戸市立西市民病院の石原亮介先生の講演
1)ICSが喘息治療のベース薬になって、喘息死が激減した。
2)ICS/LABA配合薬の登場で、喘息患者さんのQOLが向上した。
●小児喘息とアドエア
国立三重病院の藤澤隆夫先生の講演
1)気管支喘息の増悪の80%は、ウイルス感染である。
第一にライノウイルス、第二にRSウイルス。
増悪とは、「炎症」である。
2)小児のステップダウンはどうするか?
無発作状態が3ケ月以上続いたときに
アドエアの減量を考量する。
すなわち、フルタイドにステップダウンする。
●「COPDガイドライン」のポイント
京都大学の三嶋理晃教授による講演サマリー
1)COPDの定義=96%はタバコ病である。
日本呼吸器学会は喫煙医師は専門医になれません。
2)COPDとは、1秒量が70以下であることが前提だが、
1秒量は、病期であって重症度ではない!
3) CTでの分類
ジュライ「気腫病変優位型」と「気道病変優位型」に分けられたが
現在、「気腫型」と「非気腫型」に分類されている。
4) 2004年では0期COPDがあったが、現在は廃止された。
5)喘息とCOPD:オーバーラップも多い。(2、3割?)
6)問診での注意点
徐々に進行するため重症になるまで自覚症状に乏しい。
自然に運動量をセーブするため病気を自覚しないことが多い。
風邪を引きやすい=COPDないし喘息の像悪を示唆?
7)必ずフローボリュームカーブも見る
うまく吹けているかどうかも見る。
8)治療は単剤よりも多剤併用がポイント。
喀痰調整役が非常に重要。
マクロライドの長期投与も有用。
9)喘息合併例では
合剤(LABA)の併用、喘息治療薬のアドオンも考量
10)インフルエンザに弱い。肺炎ワクチンとの協働。
11)COPDは全身疾患である。
神経、消化器、糖尿病とも関係。
COPDはGERDが多い。
嚥下反射も落ちやすい。
喫煙の影響を除外しても、COPDには冠動脈疾患が多い。
COPDは、動脈硬化の危険
12)睡眠障害の合併にも注目
13)COPDでは骨粗しょうが有意に多い。
COPDは、寝たきりになる。
COPDは、予防、治療可能な疾患である!
COPDは、全身疾患である!
●COPD治療における、アドエアの位置付け
大阪市立大学の平田一人教授の講演サマリー
1)セレベントよりも合剤(アドエア)の方が、COPDのQOLに関して優れている。
2)トリプルセラピー(スピリーバー+アドエア)の、COPDへの有用性の
エビデンスが出つつある。
3)喘息合併COPDには、アドエアの併用が必須。
4)今後は、軽症COPDにもアドエアの
*「禁煙のエビデンスが抜けているじゃないか!」という厳しい指摘が
フロアーから出たが、私も同感でした。
重症COPDになってからの禁煙効果は低いので
そういう論文しか出ていない、と回答された。
** 「禁煙しなくてもいい薬がある」と誤解している医師もまだいる。(悲)
●「COPDの診断と治療における病診連携」
東北労災病院の三浦元彦先生の講演サマリー
1)開業医でできるだけ多くのCOPを拾い上げて
専門医療機関に紹介。診断し、また開業医で治療する。
2)エリア全体でのCOPDの啓発も重要。
3)まだ、診療所では、正しいスパイロが行われていないのが現状。
どこの医療機関でも使用可能な簡易診断ツールの普及。
4)簡易問診票の開発(11-Qの開発。5点以上で陽性)
5)「ハイチェッカー」の活用を!
55gと軽量。保険適応は無い。
薬局で市売されている。
仙台の開業医で、喫煙者に実施したところ、
かなりのCOPD患者が見つかった。
**当院の何でも相談室で、今週からやってみようか!
6)病診連携で、
7)病院での包括的呼吸器リハと地域の訪問リハの連携も有用
フロアーからの質問
Q「早期診断早期治療が大切だと言われえているのに、
何故、検診にスパイロメーターが無いのか?血圧はあるのに?」
A「指摘のとうり。ある会社で検査したら10%がひっかかったが、
精密検査ではあまり異常なしであった。この辺の課題もある」
●清水宏保氏(スケート金メダリスト)の講演
3月31日には結婚されて、現役引退された清水氏に
森川昭廣先生がインタビューされた。
子供の時から、喘息で救急受診したり救急搬送されていた。
しかし、心臓への負担があるとの理由で、親が喘息の薬を
飲まされてくれなかった。
発作予防の薬と発作止めと薬の違いがよくわからなかった。
高校生まで、運動誘発(笑)を意識しながら練習をやってきた。
大学から、吸入薬を使いながらの練習に変わった。
ハウスダスト陽性、環境の変化に対応する
医者に「肺の炎症」と言われても、患者にはわからない。
パネルなどで分かりやすい言葉で説明してほしい。
バンクーバーオリンピックのテレビ解説者をしたときも、
「スケートを全く知らない人にも分かりやすく解説してほしいと、
指示されたが、同じことを医師にも期待したい」と。
喘息患者であること自体が、大きなコンプレックスだった。
修学旅行でのまくら投げで100%喘息が誘発されていた。
旅行に行くこと自体が嫌で嫌でしょうがなかった。
喘息患者会から全面的に応援メッセージを貰ってきた。
嬉しい。
「喘息だったから成功できた!」
「喘息に感謝したい」
「喘息患者は常に肺に意識がある。その肺を筋肉に
移すことで、体調管理に敏感になれた。それがよかった」
「アドエアはドーピングに引っかからないのか?」と
質問するアホな医者がいる。
そんな医師の意識の低さが問題だ。
一見無敵に思える清水氏が、喘息の不安と闘いながら
オリンピックを闘ってきたことを初めて知った。
月並みだが、彼は相当な苦労人である。
清水氏の仕事は、まだまだあると感じた。
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この記事へのコメント
伊丹労働基準協会の衛生部会で、副部会長をしています。数年前から、11月に開かれる伊丹地区の労働安全衛生大会で禁煙ブースを設け、保健所からスモーカーライザーを借りたり、禁煙CMを流したりしていました。それが評価され、明日の基準協会の総会で表彰して頂くことになりました。
先生のこのブログを見て、ハイチェッカーを調べたら15,000円程度と安かったので、すぐに購入しました。さっそく昨日着きましたので、試してみましたが、ちょっと難しい所もありますが、明日も持って行き、色々な機会で試してみたいと思います。
使い方などについてもまた教えて下さい。宜しくお願いします。
Posted by 国見 at 2010年05月27日 12:45 | 返信
国見さま、長尾です。
私もさっそくハイチェッカーを買いました。
評価はまだです。
聞き所によると、擬陽性があるとか。
また、情報交換させてください。
Posted by 長尾 at 2010年05月27日 05:11 | 返信
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