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台湾の小林村は、一瞬にして壊滅しました。
山が８５ｍの深さ（ビル２０階に相当）で、巾１ｋｍにわたり、
３ｋｍも滑り落ちたのです。これを、岩盤クリープと言います。

時速１００ｋｍの速度の山崩れが、高台にある避難所であった小学校を
一瞬にして飲み込みました。そして５００人の命が一瞬にして奪われました。
傾斜２５度という比較的なだらかな斜面は、どの専門家もノーマークでした。

単なる「地滑り」ではありません。
これは「表層崩壊」にすぎません。
今回、恐れられているのは、「深層崩壊」です。

台湾と日本の地形は非常に似ています。
日本から１７人の大調査が現地入りして調査が終わりました。
台湾の苦い経験が日本に活かせることができるかどうかの瀬戸際です。

鹿児島県出水市や熊本県水俣市などでも、大規模な「深層崩壊」が起こっています。
実は、１日本でも、１９９０年から２０００年にに１３ケ所起きています。
しかし、この１０年では、なんと２０数か所と、およそ２倍の頻度で増加しています。

岩盤クリープは、航空写真で予想できます。
誰も予想だにしなかった実に意外なところが危険なのです。

崩れ落ちた土砂は、のみ込まれた村だけでなく、１０ｋｍ下流の村にも
天然のダムを壊した大量の水が流れ込み、村全体を飲み込みました。
小林村では、天然ダムの高さ８０ｍまで水位が増えたそうです。

土砂に埋もれることと、下流での水害の両方が起きます。
深層崩壊の起きる前に、安全な場所に避難することが大切です。
かつ、大雨の予測も非常に重要です。
予測精度の向上も至急の課題です。

思わず、田中康夫氏が指摘していた「脱ダム宣言」を思い出しました。
民主党政権に変わりましたが、「八ん場ダム」ひとつ、まだ解決できていません。
人間が作るダムは、もちろん、「深層崩壊」なぞ想定していません。

国土交通省は、深層崩壊の危険個所をすでに把握しています。
ならば、「脱ダム宣言」から、「深層崩壊対策」への急速な政策転換が
求められます。でなければ、これからの人的被害は「人災」となります。

選挙が近い今、耳ざわりのいいスローガンばかり、流れていますが、
政治家の本当の仕事とは、こうして国民の命を守ることです。
一人くらい、そのような地味な政治家がいてもいいと思います。

政治とは、「国民の命を守ること」