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関寛斎の志と医療連携

2010年12月20日(月)

日本医事新報11月21日号の、「プラタナス」という巻頭言に文章を依頼され、
書いて、掲載された。町医者には大変光栄なことだ。
いろんな人から、感想等の連絡を頂き、反響の大きさに驚いている。
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関寛斎の志と医療連携

 

町医者に身を転じて15年。最近、入り口横に「医療・介護よろず相談室」という小屋を構え、週末には怪しい占い師のように道行く人々の相談に乗っている。堅苦しい保険規則や訴訟リスクとは無縁の匿名相談は、大変楽しくやり甲斐がある。相談の多くは、認知症や介護関連だ。私は「午後から在宅」医でもある。在宅での最期はほぼすべてが尊厳死・自然死であり、実に素晴らしい世界だ。しかし、この素晴らしさを大半の医療者が知らないのだから、市民が在宅に関心を持たないも当然だろう。一方、8割の人が人生の最期を病院で迎えるという世界でも例を見ない現実を、医療者自身がおかしいと感じないのが不思議でならない。あまりに専門分化しすぎた医療、偏った医学教育の当然の帰結であろう。

在宅医療を、がんと非がんに分けて考えてみたい。非がんの代表格は認知症。末期がんの在宅期間が平均1.5ケ月であるのに対して、非がんはその数倍以上にも及ぶ。すると介護力が続かず当然レスパイト需要が出る。しかし急性増悪時やレスパイト入院先を探す日々の苦労は大きい。そんな中、「療養病床廃止が凍結」との知らせを喜んでいる。療養病床は日本人の文化だ。むしろ志の高い良質な高齢者病床を増やして「在宅医療の急性増悪」に素早く対応し、「看取りの文化」を国民と共有する、「在宅医療を核とした地域包括ケアシステム」を、広く啓発することが至急の課題ではないか。

日本の医療費の6割が65歳以上の医療費。だから医療問題とは高齢者医療そのもの。しかし本来主流となるべき老年期医学を本気で教える大学はまだ少数派だ。急性期ばかりに目を奪われ、慢性期は何でもかんでも在宅に丸投げという政策では困る。一方、特養、老健、療養病床の役割が不明瞭化した現状、これらの再編は必至だろう。さらに最近「高専賃」が隙間産業として繁栄している。一部は貧困ビジネスの温床となり、介護事業者のモラルハザードが問われている。医師のそれは介護系に比べたら格段高く、非営利と営利の差は想像以上に大きかった。その「施設での看取り」がなかなか進まないのも大きな課題だ。今こそ「日本人の死生観の復興」と「在宅と病院の密接な連携」を模索する時が来た。

去る1015日、北海道陸別町で関寛斎の没後98年の式典に参加した。関は佐倉順天堂で学び、長崎のポンペから最新医学を習得。その後、阿波藩御典医や戊辰戦争の際の官軍野戦病院長、徳島藩医学校一等教授、開業医を経て72歳にして北海道の開拓に入植。極寒の北の大地での開拓と医療活動に身を投じた。彼は先端医療、予防医療、総合診療、在宅医療、地域医療連携などを100年以上前に実践した日本の医聖だ。司馬遼太郎も小説「胡蝶の夢」で彼を描き高く評価した。私は、医師が「関寛斎の志」を持ち、「在宅と病院の連携強化」することで、日本の医療は劇的に変わると確信する。

 

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