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南相馬の精神科医療状況
2011年05月11日(水)
なんとか再開されているようだが、今後大きな需要が予想される。
また、現在も、様々な医療チームが頑張っている。頭が下がる。
以下、上先生の地震MLに日向正光先生が書かれたレポートを
引用させていただく。
(1)○○クリニック
4月11日より再開している。当初は18:00まで開いていたが待ち時間が2時間以上となるなど夜遅くまで診察となってしまったため現在、診察時間は
9:00~12:00、14:00~15:00となっている。
平均1日50人の外来患者。患者数は震災前と変わっていないが、診療時間が短縮しているにも関わらず患者数が変わらない。新患は1日平均8、9人(最大16人)とのことで当初はかなり多かったが再開1カ月たって少しずつ通常体制になりつつあると(昨日は新患3人)。双葉・双葉厚生・小高赤坂・雲雀が丘、各病院の外来患者が新患の多くを占めている。
予約診療はしていないので先着順に診察するが、9時の受付で20人待ちの時もあったとのこと。子供のPTSDと考えられるのは現在の所2名のみ。水曜日はクリニック休診のため避難所を回り、被災者のケアや通院・入院が必要な患者さんを医療機関につないでいる。
○○先生が一番心配しておられたのは、やはり相馬地区に精神科のバックベッドがないこと。精神疾患患者さんは身体合併症があってもなかなか一般病院には引き受けてもらえないため、50km先の福島市まで山を越えて搬送するしかない。入院が必要な場合は保健所に連絡するとのことであった。紹介したケースは別件で1例のみだったが、今後は増えてくると思われる。相馬地区に7月ACT(多職種介入)を立ち上げる予定で話が進んでいるが、ACTを立ち上げるにも拠点となる精神科の入院ベッドがないことが不安とのこと。
(2)△△クリニック
4月18日から再開された。患者さんは1日平均約40人で震災前の約半分である。本日の新患は6人で子供のPTSDとかはいないそうだ。閉鎖した4病院の外来患者さん、震災前からの患者さん、震災前から症状はあったが震災後に悪化した患者さん等まんべんなく来院している。
△△先生が困っている事は、震災前5人いた職員はDrを入れて2人(1名は遠くに引っ越していてそこから通勤している)になってしまっているため、外来を9:00~13:00までしか対応出来ていないこと(本日は職員がおらず夫人が事務をされていた)。他はやはり精神科の入院ベッドがないことと、鉄道・バスのアクセスがない又は不十分で患者さんの通院が途絶え、再発のリスクが高くなっていることを心配されていた。
(3)原町1中(現在は鹿島小の体育館に間借り)
南相馬市の原発20~30km圏内の小中学校は圏外にバスで移動して授業を開始している。南相馬は鹿島地区にある4つの小中学校に12の小中学校が(津波で被災した小学校はホールを)教室や体育館を間借りして授業をしているそうだ。
原町1中は4月22日から鹿島小の体育館を借りて授業再開となったが、学校の荷物は全て教職員で軽トラックなどを手配して運んだので大変だったとのこと。体育館はパーテーションで8つに仕切られて授業を行っていて、職員室は体育館2階のスペースにある。トイレは上水道が出ているものの、下水処理が出来ないとのことで校庭に20以上の仮設トイレが設置されている。仮設トイレに水を汲むのは職員だそうでこれもとても大変とのこと。
通学方法は元々通っていた学校まで保護者が送り迎えを行い、そこから大型バス5台に乗って間借りしている学校まで行く。帰りも集団でバスに乗って帰るため、大変不便な生活を強いられている。放射線量も毎日測定していて、屋外は0.3マイクロシーベルト、屋内は0.1マイクロシーベルトと30km圏外の福島市よりもかなり低いにもかかわらず、校庭に出られず体育活動・部活動も出来ない。
全校生徒は510人だったが大震災で避難・転校などで197人に減少したものの、現在は徐々に帰ってきて214人に増えている。避難先での学校になじめないことや、保護者の仕事の関係で徐々に戻ってきているそうだ。避難先から戻ってきた生徒の話では、避難所の苦労を考えたらこちらで生活した方が心身ともに落ち着くとのこと。
給食に関してはおにぎり2個と牛乳・ヨーグルトなど栄養の不足・偏りがみられる。成長期の子供たちなので、生徒はあまり言わないがおなかをすかしている
ようだ。さらに野菜やスープなどは不足しているようである。被災前は学校毎で給食を作っていたため。
こどもたちの心のケアに関しては震災前からスクールカウンセラーが非常勤でいて、現在も週2、3回入っている。職員にも心のケアの対処を指導されている
など、現在のところは心配されているPTSDは殆どないようだ。
今後の心配としては夏の暑さ対策とのこと。体育館では相当温度が上がるが現時点で体育館にクーラーはない。
現在すぐに解決してほしい点は、放射線量が低いにも関わらずバスで20~30km圏外に移動し授業を受けて再びバスに乗って自宅に戻らないといけないこと。これが職員・生徒のかなりのストレスになっているため、何とか元の学校に戻して授業を受けさせられないかとのことであった。20~30km圏内でも学校の屋内なら現時点で放射能汚染のリスクは少ない。政府・自治体には放射線量の値に基づいた現実的な対応をお願いしたいという意見が職員・保護者の多数とのことであった。
(4)原町市保健センター
5月9日現在の避難者数
原町1小124名
石神1小94名
鹿島デイサービスひまわり41名
鹿島保健センター58名
原町2中139名
合計456名
避難所の医療支援チームは下記の5つが巡回している。
長崎大学病院
長崎医師会
心のケア 日本PSW協会
市立病院チーム
歯科医療チーム
避難所巡回で診察需要は徐々に減ってきているようだった。私が訪問した鹿島の2つの避難所の診療は本日なし(自分で避難所から通院出来る人もいるため)。避難所から通勤・通学していて、滞在していたのは高齢者が殆ど。他の避難所では巡回チームがケアされており、本日は特に大きな変化はなかったようだ。
精神科に関しては南相馬市内で自立支援医療を受けている精神疾患患者が少なくとも約1100人(統合失調症約250人、気分障害約450人、小児約150人、その他)いるようだが広域避難のため実態がまだ掴めていない。未受診者の調査を来週・再来週めどに行っていくとのこと。小児は主に郡山や福島に通院している方が多いため、特に統合失調症患者の通院中断を心配されていた。
(5)災害対策本部からの情報
罹災証明をこれまで1220件発行した。本日から20km圏内を自衛隊1600名、重機22台を投入して行方不明者の捜索にあたっている。20km圏外は捜索終了とのことであった。
現在の南相馬の問題として
①人口が戻って来ているのに精神科の入院ベッドがなく、一般科も入院ベッドが許可されないため 現場の医療スタッフが混乱している。
② 20~30km圏外の小中学校が30km圏外の学校に間借りしているため、職員・保護者・生徒のストレスがかなり強い。
③給食の栄養不足及び偏り。
があげられる。政府・自治体・その他多くの関係者に速やかな改善を求めたい。
日向正光
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