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福島に全国の医療者の叡智を結集させよう

2011年07月03日(日)

医療界のナンバーワン雑誌、「日本医事新報」に連載させて頂いている。
「町医者で行こう!」シリーズ。ここでも、「町医者」なのだ。
6月25日号から、転載させて頂く。

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福島に全国の医療者の叡智を結集させよう  長尾和宏

 

 1 恐れていた自殺者が・・・

福島県相馬市の酪農家が、自ら命を絶たれた。「原発さえなければ・・・」と壁に書き遺して。ついに最も恐れていたことが起きてしまった。彼は36頭の乳牛を飼育していたが、最近は、牛の乳を搾っては捨てる毎日だったという。昨年、堆肥小屋を借金して建てたばかり。農協から仮払いを受けたが、資金繰りに苦しんでいたようだ。多くの酪農家は、借金を背負っており自転車操業の事業者が多い。国家は個人補償には一切関知しない」。これは、16年前の阪神大震災の時の、国の方針だった。私にすれば、今回、まさにデジャブ・・・。阪神の経験が全く役に立っていない苛立ちを感じる。せっかく震災を乗り越えた人が、人災で死んでいく。人の命を守るのものとして到底納得できない。彼のような犠牲者を、今後、出してはいけない。日本中の医療者で、福島の痛みを少しでも感じて、声を出そう。「個人の生活基盤あっての復興」、だと。グリーフケアや子供も含めたPTSDへの対応も医療者の責務だ。さらに、生活基盤整備を支援する弁護士さんを支援するのも医療者の責務だと考える。「生活基盤あっての医療・介護」なのだ。あわよくばこれを機に、医療界と司法界が仲良くできればいい、と夢想している。

 

2 被曝の長期的障害は?

 さて、原発周囲では3ケ月経過した現在も混乱が続いている。相馬、二本松、三春、郡山、福島、いわきなどが「防波堤」になっていると感じた。自らが被災しながらも、周辺の被災者を沢山受け入れている自治体の苦悩は計り知れない。ひとつの学校に3つもの学校が入っている。教材に使う紙が足りないという声を聞けば、直ぐに送った。これが「民」の反応の良さ。相馬市に震災孤児支援条例ができればそこに集中的に義援金を呼びかける。ピンポイントでの顔の見える義援金を届けている。相馬市での成功事例が被災各自治体に広がることを願う。周辺部への避難が進む一方、避難準備区域にはまだ沢山の老人や子供までが残っておられる。要介護者も沢山おられるという。様々な事情があるのだろう。彼らの医療・介護は今後どうなって行くのか。誰が診ていくのか。周辺住民の内部被曝の実態はどうなのか、長期的な健康障害はどうなるのか。明確な答えはないだろう。「医療の不確実性」という言葉を真似るなら、「被曝による健康障害」も不確実性の中にあるのだろうか。自らの不勉強を晒すことになるのだが、内部被曝による長期的障害は本当のところ一体どうなるのだろうか。毎日、新聞や雑誌と睨めっこしている。

 

3 今後の被曝医療の在り方

 GW中に、相馬市役所近くにある東京大学・上昌広研究室にお邪魔した。4月には、不眠不休で働く相馬市職員の健康診断を実施。職員の血圧は軒並み20も上がっていたそうだ。6月には、相馬市、南相馬市など浜通りで健康診断や放射線説明会を精力的に行っておられる。住民が欲している情報は、「窓を開けてもいいのか」など具体的な情報だ。原発周囲の住民のみならず、多くの国民は、放射線が現在も花粉のように空気中を飛散していると誤解しているようだ。そうした誤解に基づく不安を軽減する住民勉強会は、意義が大きいと思う。上研究室は、こうした住民勉強会を何度か開催しているが、全国の医師も応援に行かれてはどうだろうか。5月28、29日の相馬市での検診と説明会には、全国から20人もの医師が参加したそうだ。参加した住民は、2日間で307人。検診受診率は80%と驚異的な高さだった。被災地に医療者が自分の足を踏み入れることはとても重要だ。テレビなどのメデイアだけでは伝わらない情報が沢山転がっている。放射線測定、健康診断のみならず、住民の疑問や不安を軽減する作業は大変重要だ。医師は、「説明して安心を与える」こともできる。相馬市ではあと7回、このような説明会が計画されているという。福島各地に医師が入って、住民の不安や怒りを肌で感じて、医師の立場から少しでも安心を与えられたらいい。これは私のような末端町医者でも可能だ。

 

4 医療者に何ができるのか

 こうした福島に、全国の医療者は一体、何ができるのだろうか?福島は、広島、長崎に並んでしまった。誠に勝手な想像だが、福島県立医大には放射線医療という大きな課題が課せられるであろう。広島の原爆手帳と同じように、福島県民にも被曝手帳が発行され、それに基づいて健康診断や長期的な健康管理が行われることだろう。しかし地元の福島県立医大だけで全てを診るのは不可能ではないか。できれば上研究室などのフィールド活動グループと上手く連携することが重要だ。少しでも時間が取れる医療者は、原発周辺都市で医療活動する団体に協力・参加を申し込んではいかがだろう。早急に受け皿となる窓口を作って欲しい。福島という広大な土地に、全国の大学病院などの継続的支援拠点が何ケ所かできれば、と夢見ている。さらに開業医も、交代で出向き、得意の在宅医療を行えればいい。気仙沼や石巻で行われていた在宅医療を、これからは、原発周辺都市で行う時ではないだろうか。まさに在宅療養支援診療所連絡会の出番ではないか。もちろん訪問看護師さんや薬剤師さんも一緒だ。できれば、診療所に「つどい場」があってみんなが食事をしながら交われれば最高だ。そんなイメージを持つ。

 

5 全国の医療者の叡智を福島に届けよう!

そこに教科書は無い。教科書はそこで活動する人たちが作る。放射線や検診データは、クラウド型コンピューターで管理し情報共有を図りながら、年単位での評価もきちんと公表する。クラウドはセキュリテイーへの懸念からまだ医療分野には充分に適応されていない。しかし福島から本格的に稼働してはどうか。放射線という見えない敵と戦う運命となった福島に、ITの恩恵を全国の医療者の叡智とともに結集できればと、これまた夢想している。こんなに大変な「福島」に全国の医療者が協力するのは、むしろこれからだ。そこには、医学会、病院団体、医師会、看護協会などが大同団結して、「叡智」を結集して欲しい。国の支援が前提となる。避難区域や計画的避難準備区域の住民は、バラバラになって避難しておられる。それぞれの集団に行政職員が付き添っているが限界があるだろう。自治体クラウドと医療クラウドが協働するのは、「福島」からではないか。福島には、まさに「医療のオールジャパン」、「医療と行政の多職種連携」で取り組むことを願う。

PS)GWに被災地を巡った時の記録映画「無常素描」(大宮浩一監督)が全国公開される。6月17日~東京オーデトリウム渋谷、7月9日~大阪十三シアターセブン、8月~名古屋シネマテーク。

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この記事へのコメント

ボランティアが阪神の時と比べても4割減少していると聞きます。
本当にこれからが支援。
毎日毎日自殺者やいろんな人が助かった命を落としていく
そんな悲しいことがないように
いろんな人が支えられる気持ちであればいいのに。
そう願わずにいはいられない・・・。

Posted by きみきみ at 2011年07月03日 03:31 | 返信

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