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医療費抑制政策と原発推進政策

2011年07月03日(日)

なんと日本医事新報に、2週連続で掲載された。「緊急寄稿」ということで。
「原発作業員と勤務医」。一見無関係に見える両者の本質は極めて似ている。
我々は本質を見つめるべき。7月2日号から、転載させて頂く。
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医療費抑制政策と原発推進政策  長尾和宏

 

1 脱原発が世界的潮流へ

 脱原発が、世界的潮流になりつつある。「フクシマ」は、多くの犠牲と引き換えに世界の歴史を変えつつある。政府と学者とマスコミが一緒になって推進してきた「原発の安全神話」が、一瞬にして壊れた。壊れたあとの余りにも大きな代償を前にして、今後の選択肢は自ずと限られてくる。医療も決して無関係ではない。医療と生活は、表裏一体だから。脱原発の代償として、さっそくこの夏の熱中症対策がどれだけ重要になるのか、論を待たない。医療界が一丸となって取り組むべき課題だ。

 どうやって、原発安全神話が推し進められてきたのか。端的に言えば、原発マネーという利権構造にあった。誰がその利権を貪ってきたのか。「原発」を売ることで、見返りとしての巨額のお金が動いてきたことは衆知の事実。官も民も美味しい果実をかじってきた代償が、今回の結末だった。結論から言えば、原発推進政策を選択した立法府、すなわち歴代の政権にあったことを決して忘れてはいけない。第二次世界大戦後の東京裁判で時の指導者の責任が問われた。もし「フクシマ裁判」が行われるなら、糾弾されるべきは一体誰なのだろうか?

本誌は医学雑誌なのでこれ以上の言及は避けるが、医療者は常に事象の本質を診る目を競う集団であって欲しい。東北の医療過疎問題や福島の放射線医療問題。長期的課題となるこれらの根底に、いったいどんな歴史があったのか。眼の前の小さな現象に眼を奪われることなく、本質を見つめ続けなければならない。

 

2 医療崩壊の本質

さて、「医療崩壊」という言葉が使われて既に久しい。その原因は、医師不足なのか医師の偏在なのか。どちらも真実だろうが、私は「医師の志の変質と低下」にあると考えている。専門分化と専門医志向を変えるのは医師にとっても患者にとっても容易ではない。そんな想いを託した本「蘭学医・関寛斎という生き方」(共著、エピック)がこの夏、世に出る。では、医師の志が低下した原因は何か。医学教育システムと医師のやる気を無くす政策にあったと考える。すなわち、医師側の要因と政策的要因の2者が絡み合っている。特に、後者の「医療費抑制政策」の本質とは何だったのか。米国から毎年寄せられる「年次改革要望書」の中に書かれている「要望」にそのまま応えただけの結果だった。毎年2200億円の削減が忠実に実行されたのだ。誰がどうやって、どのようにその「要望書」に応えてきたのかについては、「奪われる日本」関岡英一著、等を御一読頂きたい。2200億円削減政策のしわ寄せがどこに来たのか。それで得をしたのはいったい誰だったのか。「医療費抑制政策」の本質を見誤ってはいけない。

医療費抑制政策と原発推進政策、という一見、無関係に見えるタイトルに戸惑われた方も多いだろう。しかし、両者の構造は極めて似ている、と私は考える。結論から言えば、国益より私益を優先した結果だった。誰が私利を得たのかは、ここでは言及しないが、医療者はここでも常に本質を見つめたい。

 

3 東電社員と勤務医

開業医も勤務医も出るのは溜息ばかりだ。我々末端は、中央の意向に振り回されている。その中央の意向は、どうやって決められてきたのか。どのような「欲望という本能」が働いた結果だったのか、近いうちに検証されるべきだろう。医療と政治は決して無関係ではない。無関係だと思っている医療者が大半に思えるが、無関係どころか、直接に関係している。そんな簡単な構図を知ったのが、私自身、恥ずかしながら最近だ。

そんな町医者が偉そうに書く資格は無いかも知れない。しかし、敢えて言わせて頂くなら、医療者は文句ばかり言う割には自分からアクションを起こさない人種だと感じる。また、医師会や病院団体は、労働組合か公益法人なのか。両方が真実だろうが、本当のところ、どちらが優先するのだろうか。例えば、医療費抑制政策に本気で文句を言うなら、その政策の本質をあぶり出して、そこに向かってアクションを起こさないと意味が無い。

世間の批判は東電社員に向かっている。しかし現場の東電社員は身を呈して頑張っている。この構図は、医療事故や受け入れ不能の際の勤務医への非難とどこか似ていないか。頑張っている東電社員や勤務医を叩いて、いったい何の意味があるのか。一般大衆はどうしても本質を見誤りがちだ。仮想敵ではなく、本当の敵はどこにあるのか。医療者は枝葉末節に目を奪われることなく、本質に向かって行動を起こさなければいけない。

 

4 医療費抑制政策と原発推進政策の類似性と、光明

東日本大震災は日本を変えた。特に「フクシマ」は世界を変えた。世界は、常に過去には戻れない。文明学者・梅棹忠夫氏の「文明は破局に向かうしかない」という指摘に謙虚に耳を傾けながらも、「光明」を探し求めるしか道は無い。

下町の町医者に身を置いているが、「光明」を探すにはいいポジションだと感じている。生活者の生の声を訊くには充分だ。医療費抑制政策と原発推進政策の類似性は、いずれ本質探究の格好の教科書になるだろう。町医者のこんな過激な意見などは、以前の日本医事新報では決して取り上げられなかっただろう。しかし医事新報とて時代は変わったのだ。こうして意見を述べられるうちに、末端医の過激な意見を聞いて頂きご批判を仰ぎたい。

我々は、過去に戻れない。戻るべきではない。今回の震災で日本中、いや世界中から寄せられた「無償の善意」を「光明」として、新しい本質を探すべきだ。具体的には、原発推進政策にも医療費削減政策にも関与していないリーダーを応援すべきだろう。放射能汚染、医療崩壊の代償は余りにも大きい。それを修復できるのは、ニューリーダーしかいないだろう。決して特定の人物を想定して書いているわけではない。しかし過去の過ちとは無縁の指導者を応援するしか道はない。民主主義国家においては、常に思考しアクションを起こすこと。それが、医師としての広義の使命だと思う。

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この記事へのコメント

確実に確実に高齢化が進み、そんなに建物も建設できない現状で医療についても行政がなんとかせねばと思い始めているのかもしれない。

その波も介護保険についての波も
今何とかしなければこの機会を逃せばおそらく立ち上がれない。
街に志のある医者がたくさん増えればよいのに・・・。
強く感じる今日この頃です

Posted by きみきみ at 2011年07月03日 03:28 | 返信

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