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南相馬市の近況、憂国の日
2011年09月13日(火)
南相馬市の医療者は、今日も複雑な思いで奮闘されている。
近く緊急時避難準備区域が解除されると報道されているが、本当にそれでいのか?
残っている人たちのことを考えたら、解除しないほうが、「支援」になるかもしれない。
多くの医療者は、これを運命、使命と思って働いているのではないか。
逃げてもいいなら逃げたい、と迷っている職員もおられるだろう。
小さな子供がいる親は、今からでも逃げたほうがいいのではないか。
本来、ここらは、もっと強力な国の援助下におくべきではないのか。
医療者も、国家の責任で、派遣すべきではないのか。
何もかもを、地元の善意に頼るのは、限界に近いのではないか。
自分がこの病院で働いていたなら、どうしているだろうか。
そんな気分で以下の文章を眺めていた。
あるMLから今朝、流れてきた文章。
南相馬市大町病院麻酔科の佐藤先生が書かれた近況。
タイトルには、「憂国(郷)の日」とあった。
国を憂いて故郷を憂いておられるのだ。
やはり国のリーダーが動くべきだろう。
以下、佐藤先生の文章を転載させていただく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
入院患者数は48名となりました。文字通り満床です。入院必要な患者さんが来ても、入院できずに外来で点滴で様子をみたり、輪番でも救急隊からの救急要請を断らなければいけない事態が生じています。本院(と市立病院、小野田病院)で受け入れられなかったら、入院規制が掛かっていた時と同じように相馬市や福島市まで搬送しなければいけなくなります。以前なら入院ベッド数を制限した県を悪者にできたのですが、今は自分達が恨まれ役になりそうです。もっとも、断るのは外来当直看護師(9月から24時間大勢の外来看護師の当直が始まりました)の仕事、肉体的より精神的なストレスが心配です。南相馬市は夜間は小児科医がいなく、子供さんの熱発などの対応にも神経を使います。
緊急時避難準備区域が今月中に解除されると噂されています。噂というのは今までも解除されると報道されていても延び延びとなっているからです。当初南相馬市は、同じく緊急時避難準備区域の指定を受けた広野町や川内村とは異なり、復興のためには緊急時避難準備区域の解除が必要と避難民に帰還勧告を行ったり、幼稚園や学校の除染に努めてきました。東京大学の児玉教授や本MLでも貴重な意見をいただいている坪倉先生、日本原子力研究開発機構の天野先生をお呼びし、実際に除染活動を行うほか市民に啓蒙活動(YouTube 2011年9月3日南相馬市「子どもと妊婦の健康を守るために」で見ることができます)を行ってきました。鹿島区まで1日1,000,000円かけて行っているバス通学は止めて、原町区内の学校に登校できそうですが、県外に転出した子ども達はすぐには戻って来ないでしょう。また中間処理施設が決まらない状態では汚染土や草木の処分に困っており、市内全体の除染というわけにはなかなか行きません。逆に、来月から県市民税が課税(今まで12ヶ月で納めていたものが6ヶ月で納めなければいけない)されたり、医療費の一部負担金が課されたり、高速料金の免除が無くなるなど都合の悪いことばかりです。いっそのこといわきと同程度(0.3μシーベルト/時以下)に環境放射線濃度が下がるまで緊急時避難準備区域の解除はしないで欲しいと思うのは私だけではないはずです。
そんな中、本日自衛隊による南相馬市の緊急時の避難訓練が行われました。動ける市民をマイクロバスで移動させたり、動けない介護老人をヘリコプターで搬送するというものでした。元々我々医療関係者には連絡はなく、一部の市民や救急隊との合同訓練だったようです。確かに爆発が数時間後と分かる場合は避難がベストですが、多くは突然の爆発です。そんな時は多くの学者は3日間コンクリート製の建物の中に避難する屋内退避の方が被爆が少ないと唱えていますが、1号機の爆発の時に双葉厚生病院の患者が校庭でバスやヘリを待っていて被爆したことは自衛隊の方は知らないのでしょうか。何よりも自衛隊がパニックとなったために多くの南相馬住民が放射線濃度の高いときに避難する羽目になりました。また、医療スタッフをつけずに双葉病院の患者を川内村の高校の体育館に置き去りにした搬送には自衛隊は関与していなかったでしょうか。頼りにされるべき自衛隊がマニュアル無き避難訓練を行ってはいけないのです。政府が安定してきたと言っているこの時期に、なぜ避難訓練を行わなければいけないのかも疑問です。
最近マスコミやm3.comで大町病院や南相馬の医療事情が採り上げられることが多くなりました。最後まで残った看護師を17名の戦士として、讃える記事もあれば、犠牲精神を戦時中の国家主義に例える記事もあります。私の投稿もマスコミの目を引く一因となっていることは否めませんが、少なくとも看護師に英雄気どりや玉砕精神はありません。自分も自衛隊(の医療チーム)かDMATが来てくれていたら、患者を置いて逃げていたかも知れません。事実が明らかとなってきていますが、双葉病院みたいなことはどこの病院でも起こりうることだったのです。
今日も一人の職員が辞めていきました。家族を守るために選んだ道、誰にも引き留めることはできません。この地域の医療を維持するためには
長期の医療スタッフの派遣などの抜本的な解決策が必要です。
逃げてもいいなら逃げたい、と迷っている職員もおられるだろう。
小さな子供がいる親は、今からでも逃げたほうがいいのではないか。
本来、ここらは、もっと強力な国の援助下におくべきではないのか。
医療者も、国家の責任で、派遣すべきではないのか。
何もかもを、地元の善意に頼るのは、限界に近いのではないか。
自分がこの病院で働いていたなら、どうしているだろうか。
そんな気分で以下の文章を眺めていた。
あるMLから今朝、流れてきた文章。
南相馬市大町病院麻酔科の佐藤先生が書かれた近況。
タイトルには、「憂国(郷)の日」とあった。
国を憂いて故郷を憂いておられるのだ。
やはり国のリーダーが動くべきだろう。
以下、佐藤先生の文章を転載させていただく。
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入院患者数は48名となりました。文字通り満床です。入院必要な患者さんが来ても、入院できずに外来で点滴で様子をみたり、輪番でも救急隊からの救急要請を断らなければいけない事態が生じています。本院(と市立病院、小野田病院)で受け入れられなかったら、入院規制が掛かっていた時と同じように相馬市や福島市まで搬送しなければいけなくなります。以前なら入院ベッド数を制限した県を悪者にできたのですが、今は自分達が恨まれ役になりそうです。もっとも、断るのは外来当直看護師(9月から24時間大勢の外来看護師の当直が始まりました)の仕事、肉体的より精神的なストレスが心配です。南相馬市は夜間は小児科医がいなく、子供さんの熱発などの対応にも神経を使います。
緊急時避難準備区域が今月中に解除されると噂されています。噂というのは今までも解除されると報道されていても延び延びとなっているからです。当初南相馬市は、同じく緊急時避難準備区域の指定を受けた広野町や川内村とは異なり、復興のためには緊急時避難準備区域の解除が必要と避難民に帰還勧告を行ったり、幼稚園や学校の除染に努めてきました。東京大学の児玉教授や本MLでも貴重な意見をいただいている坪倉先生、日本原子力研究開発機構の天野先生をお呼びし、実際に除染活動を行うほか市民に啓蒙活動(YouTube 2011年9月3日南相馬市「子どもと妊婦の健康を守るために」で見ることができます)を行ってきました。鹿島区まで1日1,000,000円かけて行っているバス通学は止めて、原町区内の学校に登校できそうですが、県外に転出した子ども達はすぐには戻って来ないでしょう。また中間処理施設が決まらない状態では汚染土や草木の処分に困っており、市内全体の除染というわけにはなかなか行きません。逆に、来月から県市民税が課税(今まで12ヶ月で納めていたものが6ヶ月で納めなければいけない)されたり、医療費の一部負担金が課されたり、高速料金の免除が無くなるなど都合の悪いことばかりです。いっそのこといわきと同程度(0.3μシーベルト/時以下)に環境放射線濃度が下がるまで緊急時避難準備区域の解除はしないで欲しいと思うのは私だけではないはずです。
そんな中、本日自衛隊による南相馬市の緊急時の避難訓練が行われました。動ける市民をマイクロバスで移動させたり、動けない介護老人をヘリコプターで搬送するというものでした。元々我々医療関係者には連絡はなく、一部の市民や救急隊との合同訓練だったようです。確かに爆発が数時間後と分かる場合は避難がベストですが、多くは突然の爆発です。そんな時は多くの学者は3日間コンクリート製の建物の中に避難する屋内退避の方が被爆が少ないと唱えていますが、1号機の爆発の時に双葉厚生病院の患者が校庭でバスやヘリを待っていて被爆したことは自衛隊の方は知らないのでしょうか。何よりも自衛隊がパニックとなったために多くの南相馬住民が放射線濃度の高いときに避難する羽目になりました。また、医療スタッフをつけずに双葉病院の患者を川内村の高校の体育館に置き去りにした搬送には自衛隊は関与していなかったでしょうか。頼りにされるべき自衛隊がマニュアル無き避難訓練を行ってはいけないのです。政府が安定してきたと言っているこの時期に、なぜ避難訓練を行わなければいけないのかも疑問です。
最近マスコミやm3.comで大町病院や南相馬の医療事情が採り上げられることが多くなりました。最後まで残った看護師を17名の戦士として、讃える記事もあれば、犠牲精神を戦時中の国家主義に例える記事もあります。私の投稿もマスコミの目を引く一因となっていることは否めませんが、少なくとも看護師に英雄気どりや玉砕精神はありません。自分も自衛隊(の医療チーム)かDMATが来てくれていたら、患者を置いて逃げていたかも知れません。事実が明らかとなってきていますが、双葉病院みたいなことはどこの病院でも起こりうることだったのです。
今日も一人の職員が辞めていきました。家族を守るために選んだ道、誰にも引き留めることはできません。この地域の医療を維持するためには
長期の医療スタッフの派遣などの抜本的な解決策が必要です。
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