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日本医事新報
2011年11月06日(日)
先週号には、「中医協委員を囲むフォーラム」について書かせて頂いた。
特に「受診時定額負担制」には強く反対し、署名を集めている。
日本医事新報 町医者で行こう
「中医協委員と現場医師の直接議論IN大阪」 長尾和宏
中医協の診療側委員5人が9月23日、大阪で開かれた医療フォーラムで診療報酬改定について現場の医師らと意見交換した。秋晴れの行楽日にも関わらず全国から300人もの医師が集まり5人委員の講演に引き続いて熱心な議論が展開された。フォーラムに登壇したのは、京都府医師会の安達秀樹副会長、国立がん研究センターの嘉山孝正理事長、日本医師会の鈴木邦彦常任理事、全日本病院協会の西澤寛俊会長、全国公私病院連盟の邊見公雄副会長の5人。予め全国から寄せられた10の質問を列挙すると、被災地医療支援、医療材料と薬剤費、7:1看護と地域格差、入院中の他科受診問題、慢性期入院医療費の評価、在宅医療の課題、有床診療所の将来、新薬創出加算、いわゆる柔整問題、医療と消費税、と多岐に渡った。藤森次勝氏、加納繁照氏、そして私の3人が司会を務めた。懇親会の最後まで質疑応答が続き非常に内容の濃い3時間半だった。今回、以下3点の論点について私見を交えながら、フォーラムの報告としたい。
1 被災地の特定例加算と補助金投入
東日本大震災で壊滅した医療機関から悲鳴が聞こえてくる。医療崩壊、医療過疎に拍車がかかっている。緊急時避難準備区域が解除された原発周囲は、特に深刻だ。今後、被災地の医療機関を支援する方法として、国の補助金と診療報酬の特定加算などが考えられるが、具体的にどうしていく考えなのか、東京大学の水野制靖大氏が質問された。
まず特例加算は受診者負担を増やさないことが大切との回答を得た。算定要件緩和、そして補助金や補償の順序で対応し、必要であれば加算も検討するという方向性を確認した。補助金を直接病院に出すという案も示された。筆者は阪神大震災直後に開業した。その想いは「震災が教えてくれた町医者力」(エピック)に記した。そして今回の被災地を巡り、「共震ドクター 阪神、そして東北」(ロハスメデイア社)を世に問うたばかり。今年5月、高台に建ったばかりの小さな仮設診療所とそこを訪れた患者さんの笑顔を見た。しかし壊滅した医療機関の再建は並大抵ではない。2重ローン問題もある。被災地の医療支援は町の復旧・復興と両輪だ。国庫からの補助金投入を至急に検討して頂きたい。
2 在宅医療の課題と有床診療所の再評価
大阪の中尾治義氏は、在宅医療の高度化とそれに伴う診療所格差について質問された。私自身も「24時間体制」の大変さを感じ「普通の開業医がもう少し気軽に取り組める在宅医療チーム作り」の重要性を痛感する。24時間対応と看取りを謳った在宅療養支援診療所(在支診)制度が出来てはや5年。現在12000以上ある在支診のうち1年間に1例でも看取りを行っている診療所は半数にすぎないこと、さらに在宅看取りのうち在支診は4分の1しか占めていない現状が示された。一方、都市部では高専賃などに特化した形の在宅医療機関も増えている。以上より、在支診とそれ以外の診療所の診療報酬格差の見直し、さらに在宅療養支援病院との関係整理は必須だ。さらに有床診療所の診療報酬についての質問があった。中医協としては、有床診療所の団体がもっと大きな声を上げて欲しいとの回答だった。筆者は、在宅医療において後方ベッド確保は大切だと考える。地域の有床診療所や介護療養病床の見直し、診療報酬上の評価をさらに検討すべきだ。
3 受診時定額負担制=保険免責制に反対!
受診時に通常の自己負担とは別に患者さんに100円を負担してもらうという受診時定額負担制が検討されている。既に多くの団体が反対表明しているが、中医協委員も反対を表明された。そのお金を高額医療費に充てると言う論理は詭弁ではないのか。高額療養費とセットで議論するのではなく、「保険免責制」として別個に議論すべきでもある。そもそも「免責制」という発想自体が、国民皆保険制度と矛盾している。国民皆保険制度は、自助、共助、公助の3者の組み合わせで成り立っている、世界に例が無い制度だ。全員加入、収入に応じた保険料、そして公費負担がその骨格。つまり保険原理と人権原理の協働で成り立っている。安達委員の言葉を借りると「免責制」という考えは、「保険原理として収支相等の原則」に背く概念である。受診時定額負担制は、国民皆保険の根底に関わる危険な思想だ。100円はやがて200円に、そして1000円になるかもしれない。これは「保険免責制」の導入に間違いなく、「保険免責制」導入に反対、と言う方が正確だろう。またこれに関連して、200床以上の病院に紹介状を持たずに受診した場合の負担金とは区別して議論すべき課題だ。本議論を大病院へのフリーアクセス制限の議論と混同させてもならない。
議論を聞きながら、思わず「医療の消費税問題」を想起してしまった。消費税10%への増税案を前に訴訟にまで発展しているこの問題。本議論の本質を市民に説明するのは難しく交渉は難航していると聞いた。このように最初を間違えば後世に大きな禍根を残す。「高額医療費」を人質にとった「受診時定額負担制」=「保険免責制」導入に、強く反対する。
中診療側委員全員が中医協外で揃ったのは初めてと聞いた。中医協の委員を実際に見るのは初めて、という医師が大半だった。「意外と親しみやすいな」「凄い論客ぞろいだ」「もっと沢山議論したい」など様々なご意見が寄せられた。今回は、梅村聡参議院議員(医師)のご尽力で本フォーラムが開催されたが、次回は是非とも日本医師会館での開催を希望したい。そして私のような末端開業医も参加できるような形であって欲しい。今まで医療政策はどこか遠いところで決められている気がしていたが、少しだけ身近になった。
最後にひとこと。医療費は中医協で、介護費は介護給付費分科会で議論される。では、医療と介護の連携は一体どこで議論されるのか?先日、厚労省で「第1回医療・介護サービスの連携懇話会」が開催された。この会ではお金の話ではなく、医介連携や医療保険と介護保険の整合性が議論される場だろう。中医協議論同様、本会に大いに期待してい- << 食後に採血する意味
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