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痛みの治療の進歩

2011年11月20日(日)

痛みの治療は年々進歩しているが、まだまだ痛みに悩まれる患者さんが多い。
非がん性疼痛に対してオピオイドの使用が解禁されたが、まだまだ啓発が足りない。
今日は「慢性疼痛」特に、神経障害性疼痛の勉強会に参加した。(以下医療者向けサマリー)
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プライマリケア医のための神経障害性疼痛の診療
(11月20日 9時半~12時)

 

1 プライマリケア医が神経障害性疼痛の診療を行う際のコツと留意点

日本大学 加藤実教授

 

「神経障害性疼痛」とは、単に神経末端が障害されるのではなく、

神経伝達経路のどこかが障害される痛み。

 

・腰部脊柱管狭窄症

・外傷性頚部症候群

・糖尿病性神経障害

 

●プレガバリンを段階的に始めることの意味と重要性

プレガバリン=「神経障害性疼痛」に対する新しいお薬。

 

プレガバリンは必ず少量から開始する。

25mgから開始する意味は、副作用の有無を調べること。

副作用として眠気、めまい、浮腫、体重増加

オピオイドと違い、副作用に慣れないことも多い。

 

プレガバリンは25mg眠前から開始する。

50、75、100mgと1~2週毎に効果を見ながら増やしていく。

NSAIDSと違い、その日から効かない。

2~3日後から効き始めることを予め説明しておく。

少量から始めると、中止、脱落の頻度が少ない。

自覚所見が無くなれば、暫減する。

 

現在、神経障害性疼痛の第3選択薬となっているが

長期治療では、痛覚過敏になることもあり連用には注意が必要。

 

●トラマドール(アセトアミノフェンとの合剤も含む)

非がん性疼痛(侵害受容性疼痛)

プレガバリンと同様に有用

 

●ペインクリニックへの紹介のタイミング

薬剤治療効果不十分な時に、硬膜外ブロックを行う。

しかし、ペインクリニックはブロックを行う場ではない。

薬物療法も含めて各科の叡智を結集させて痛みを取る場である。

 

抗うつ薬、オピオイド、プレガバリンの併用が有用。

それぞれのレスポンダー、ノンレスポンダーがいるので

それを見極めることも大切。

 

神経障害性疼痛のガイドラインに基づいた治療の大切さ。

薬物療法の実際と留意点について教えていただいた。

 

Q 三又神経痛にはどうか?

Aカルバマゼピンの適応で、プレガバリンの適応は無い

 

Q 片頭痛にはどうか?

A バロプリ酸が適応で、プレガバリンの適応は無いが、治験中。

 

Q プレガバリン投与のタイミングは?

A 早期であればあるほど良い。

  アロデニア(触っただけで痛い)ならば、早期に投与する

 

 

2 糖尿病神経障害に伴う痛み、しびれの診断と治療

  愛知医科大学 中村二郎準教授

 

陰性症状(感覚低下)とともに、陽性症状(しびれや痛み)が起きる。

 

【糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準】

1 糖尿病が存在し、それ以外の原因が除外できる。

2 アキレス腱反射の低下と振動覚低下

3 両側性、下肢ら起こる(足裏)

上肢のみのものは糖尿病性多発神経障害と取らない

(糖尿病性神経障害が、上肢から始まることは少ない)

 

有痛性糖尿病性神経障害は、「慢性」と「急性」に分類される。

そのタイプを見極めることが重要である。

 

慢性疼痛治療薬として従来は、

・三環系抗うつ薬:トリプタノール、トフラニール:副作用高い

・SNRI:サインバルタ

がファーストチョイス。

 

・プレガバリンは第三選択薬だが、痛みの結果によるうつを合併した場合は、第一選択薬にしてもいいのではないか?と感じた。

 

国際疼痛学会の有痛性糖尿病性神経障害の治療薬

第一選択 ・三環系抗うつ薬、

・SNRI(デヂュロキセチン=うつ病のみの適応)

     ・ガバペンチン(てんかんのみの適応)

      ・メメキシチール

・アルドース還元酵素阻害薬(これは本来は、根本治療薬)

の5剤が横並びで記載されているが、具体的ではない。

今後、プレガバリンの評価確定、新たな位置ずけ、が待たれる。

 

急性の有痛性糖尿病性神経障害とは?

高血糖を急激に改善した場合に起こる痛みのこと

メキシチールが有用

 

糖尿病性筋委縮症

・大腿筋の委縮など

・片側性で始まる

・髄液たんぱくの上昇

・免疫能の低下が関与

メキシチールの有用性

 

 

3 運動器疾患と神経障害性疼痛

  富山大学 川口善次教授

 

ロコモテイブ症候群の啓発が急務である。

(変形性膝関節症、変形性腰痛症、腰部脊柱管狭窄症・・・・)

 

侵害受容性疼痛=炎症や手術後の疼痛

神経障害性疼痛=神経障害の疼痛。

 慢性疼痛の大部分、難治性の事が多い

 

 

腰部脊柱管狭窄症の手術=固定と除圧、 後の痛みがある場合

手術が成功しても、足のしびれや痛みが持続することが多い。

神経根圧迫による痛み⇒疼痛性側湾が見られる

 

腰椎椎間板ヘルニアの痛み

椎間板は無血行性、
高感度CRPの上昇がある。

混合性疼痛に分類されることが多い

 

急性期 炎症主体なのでNSAIDが主役

慢性期 プレガバリンが主役となるべきであろう 

 

プレガバリン:

2000年 米国FDAで承認

2007年には、線維筋痛症の治療薬としても承認

2010年 日本でも神経障害性疼痛に承認を得る

 

使用経験 半数例の有用であった。SF36が有意に低下。

 

どのような整形外科領域患者さんにプレガバリンが有用か?
についてご講義頂いたが、大変有用なお話だった。

 

Q しびれにも、プレガバリンは有効か?

A よく分からないが、効く症例もあるのではないか?

 

Q 腰部脊柱管狭窄症に、オパルモンにプレガバリンの併用はどうか?

A 間欠性は行にはオパルモンが主体であるべきだが、併用しても良いのでは?

 

冒頭で、日本医師会常任理事 今村聡氏先生が

慢性疼痛を取り巻く状況についてお話しされた。

 司会は、東北大学の後藤由夫先生


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「慢性疼痛」という概念ができた意義は極めて大きい。

痛みの治療は、がんのみならず。すべての疾患に広がってきた。
従来は、がんだけだったが、疼痛の原因を見極めることが重要。

痛みの治療は、地域のプライマリケア医が担うべき。
痛みの原因精査は専門医に。

痛みは、生死に関わる症状。
逆流性食道炎は、QOL病に留まるが
慢性疼痛は、うつ、自殺に至る場合がある。

慢性疼痛の理解は、医師全員に共通の課題。
逆に言えば痛みに無関心な医師は、臨床医の資格が無い。

医学部教育の中で、「緩和医療学」や「疼痛学」を
さらに充実すべきであると考える。

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