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終末期医療の法制化研究会IN名古屋

市民、医療界、法曹界、3者の連携で国民的議論へ

2011年12月04日(日)

終末期医療の法制化研究会(第2回シンクタンクの会)が愛知県医師会館で開催された。
日本尊厳死協会の井形理事長、青木仁子・東海志部長らが中心になった熱心な研究会。
岩尾總一郎・副理事長のご講演に続いて、有識者による100分間の熱い議論がなされた。

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師走の名古屋は、とても活気があった。
名古屋の繁華街を歩いていると、東北の震災のことを忘れそうになる。
栄にある愛知県医師会館では、市民、弁護士、医師らが熱心な議論をしていた。

尊厳死議連、日本医師会、尊厳死協会の3者で、2007年から
法制化議論が継続されてきた。
今年後半、ようやく法制化への活動が活発化している。

11月24日に議連から提出された第3案のタイトルは大きく変わっていた。

「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」と、
患者さんの権利法を前面に出た名前に変わった。
いいことだと思う。

何点かの論点が議論されている。

・「差し控え」という言葉は、開始のみなのか、中止も含むのか?
・家族とはどこまでか?定義は?
・本人の意思確認をどの程度行うのか?・・・


名古屋(東海支部)では、素晴らしい終末期議論が展開されていた。
がんセンターや病院の現場の医師から、素晴らし意見が出た。
懇親会では、市民や司法関係者も沢山発言されていた。

高名ながん専門医や神経難病専門医などが、この大切な命題に
熱心に取り組んでおられる様子に深い感銘を覚えた。
今は、その時、なのだ。

関西でも、「終末期医療研究会」にようなものを
作らなくてはならないと感じた。
名古屋まで足を運んだが、収穫満載だった。

まさに、「医療と司法と市民の連携の会」だった。

ちょっとした法廷のようだった。
青木仁子支部長は弁護士さん。
支部長さんのリーダーシップがとても勉強になった。

100分間のフリーデスカッションは、以下のⅠ~Ⅳの順番で行われた。
非常にタイムリーな討論テーマだと思う。

Ⅰ 自己決定権 
  1 基本的人権との関係
  2 能力(認知症)
  3 代理
  4 家族
Ⅱ 差し控えと中止
Ⅲ 不治かつ末期
   1 時期
   2 判定方法
Ⅳ 延命措置 特に栄養補給・水分補給



Ⅰ 自己決定権
1 憲法13条、基本的人権、幸福追求権との関係

○意見
 医療を受ける権利と、医療を受けない権利。
 大腸がんの肝転移の場合に
 肝切除すれば数年の延命が可能な場合があるが
 本人が拒否したとき、どう考えたらいいのか。

○ 「自分の医療費を自分は使わない」という意思表示をした患者さん。
  それで浮いた医療費を10人の中等度の患者さんに使って欲しいという
  意見をどう評価するのか。

○また自殺願望の家族性乳がんの患者さんに乳がんが発見された場合。
 「これで自殺しないで病気で死ねれる」と喜び、治療を拒否した場合に 
 どう考えればいいか。

○自己決定権は確立しているか?
 余命告知、予後告知をしたら、うつになる患者がいた。

○ある在宅医の言葉
 基本的に、全例予告している。
 ただし患者さんに関わるスタッフによる「告知カンファレンス」を行ってから行う。
 そうでないと、予期せぬ悪い結果に繋がる場合がある。

○ もっともインフォームドコンセント(IC)をすればいいというものではない。
  結果が悪い場合のICに、現場は悩んでいる。
  ICで大切なことは、患者さんの顔色を見て説明すること。
  米国は、ICが無いと訴えられるからICをするが
  日本は、患者さんのレベルによって、知識のレベルが様々。
  ⇒ICは、誰のためのICなのか

○ バッドニュースのICに関するガイドラインはあるのか?
  患者さん側の受け取り方、理解度はさまざまだ。
  阿吽の呼吸で行っているのが現状、

○ 人間は「絆」で生きている。絆は家族や友人を問わず。
  法制化するとその辺がおかしくなるので注意が必要、という意見。

○ 脳血管性認知症の患者さんが、胃瘻の是非に関して
  NO から YES に意見が変わった場合。
  しかし、家族の総意で決定するように伝えた。
  本人の意思決定権は無いのでは?

4 家族とは
法律的には「6親等内の血族、2親等内の姻族」を言う。
しかし、内縁関係や事実上の家族のようなケースはどう扱うのか?
家庭裁判所の調停委員からのご意見もいただいた。

【終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン(厚労省2007年5月)】

医療チームが終末期と判断
1 患者の医師明確な場合
2 患者の医師不明の場合
  (1)家族あり 
  (2)家族無しの場合 医療ケアチームで決定する。

素朴な疑問として、家族の同意は本当に必要なのか?

(4) 代理   法律上、人の生命・身体に関わる意思表示の
          代理ができるか?(例 成年後見人)
         ⇒現行では、司法では効力を持たない。
          しかし、ほんとうに 家族の意思をどう扱っていくのか?


○ある小児外科医からの問題提起
 現在の法制化は、15歳以上を対象としているが、
 新生児の尊厳死の問題もあることを忘れてはならない。
 治療をした主治医が恨まれることもある。

○個人の意思と家族の意思の折り合いになってくる。
 欧米は、個人の意志尊重で家族は関係無い。
 日本は、歴史的にも家族重視が残っている。

 緩和医療学会の「鎮静」のガイドラインのは、
 「家族の同意が必要」となっている。

 しかし、そもそもなぜ家族の同意が必要なのか?
 本人の意思のみでいいのではないか。

 一方、「グリーフ」という問題もある。
 その観点からも、家族の意思確認も無視できない。


Ⅱ 差し控えと中止 : 同じか違うか?

○現場では、全く違う、という意見
○がん終末期と認知症では、際し変えの意味が違う。
 がんにおいては、すでに差し控えも中止もすでに実際にされている。
○差し控えと中止では、言葉のニュアンスが異なる。
 差し控え=やるべきではあるが、本人の意思でやらない、という印象
 中止=やるべきではないという印象。
○「差し控え」を辞書で引くと「徐々に減量するという意味もなっているので
 「差し控え」には、「中止」も含まれるのではないか
○現行のままでは、「中止」という概念は含まれていない。
 ALSの方の基本的人権はどうなるのか。
○現場では、家族が受け取る「死」の原因 は全く異なる。
 やらないで死んだら、「病気」と考えられる。
 中止したら「殺人」と捉えられて、殺人罪に問われる。
○法案は3年後に見直しされていることになっている。
 脳死法案の時も3年後に見直しといいながら、12年もかかった経緯がある。
○「差し控え」という表現ではいけないという意見が多数だった。

 「中止」をというい文言を是非入れて欲しいというのが、東海支部の意見だった


Ⅳ 延命措置とは?
○栄養補給と水分補給は入れるか

○  家族への精神的配慮で、200ml程度の点滴をする場合が現場では多い。
   それ以上の、過剰な輸液がここなわれているのが現状。

その他

不治かつ末期の判定に
主治医を入れるのか、入れないのかという命題もあった。


例によって、日曜日の夕方は携帯電話が鳴りやまない。
10本ぐらいかかってきた。
帰阪して深夜まで往診だ。




 






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この記事へのコメント

自殺願望の人に癌が発見された時、
「これで自殺しないで病気で死ねる」と喜ぶ事例。
分かるなぁと思うのです。
年に一度、婦人科の先生が施す子宮頸がん検査。
頼んだ覚えはないけれど、
受けるからには、どんな結果でも聞く心づもりがいる。
もし癌が見つかったら、と思うと、
ホッとします。
死ぬことより生きることのほうが、
よほど勇気がいる。
不治の病であればあるほど、
恵みと化す人も、中にはいるのかもしれません。
これをどのように捉えるかに、
正解は無さそうですね。

Posted by 國本 直子 at 2023年03月17日 08:45 | 返信

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