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待ったなしの「医療と介護の連携」
2011年12月02日(金)
しかし、そんな悠長なことも言ってられなくなってきた。日々、切実だ。
日本医事新報11月28日号に書いた、拙文を紹介したい。
町医者で行こう 待ったなしの「医療と介護の連携」 長尾和宏
1 「医療・介護サービスの連携に関する懇話会」がスタート
本年9月、厚労省で「医療・介護サービスの連携に関する懇話会」が開催された。医療・介護界から16名の委員が招集され、厚労副大臣、政務官、厚生省幹部および中堅・若手官僚が囲んで「医療と介護の連携」について現場からの意見が述べられた。第二回目の会合は10月に開催。副大臣、政務官が交代したので同様のスタイルで行われた。両会とも多岐にわたる意見が噴出し、興味深い発表ばかりであったが残念ながら非公開の「ヒアリング」に留まった。日々、医療と介護の整合性に悩む在宅現場の人間の一人として、今後この懇話会の発展に期待するものは大きい。
2 行き場の無い在宅患者さん
町医者のもとには、いくら汗を流し知恵を絞っても、どうすることもできない在宅患者さんが集まってくる。たとえば精神病と認知症と腰部脊柱管狭窄症でほぼ寝たきりの在宅患者さん。生活保護を受けている。背中がとても痛いが、ヘルパーが介護タクシーでペインクリニックに運んでも痛みが取れないので在宅医療を依頼された。麻薬を使いたいが、独居で認知症もあるので自分で服薬管理ができない。一方、要介護2の介護保険枠はすでにヘルパーさんで埋まっていて訪問看護は一切入る余地が無い。睡眠剤や安定剤や痛み止めなどのお薬はすべてヘルパーステーションで管理されている。家に置いておくと患者さんが全て飲んでしまうからだ。しかし麻薬は法律でそこには置けない。もっとも訪問看護ステーションにも置けないが。患者宅に作った「秘密の引き出し」に置いておくことにした。慢性疼痛に一部のオピオイドの使用が認可されたことは朗報だ。対象患者さんは大勢おられる。「緩和医療は病気の種類を問わない」と考えるものとしてとても嬉しい。しかしいくら処方ができても、肝心の管理ができない。在宅緩和ケアの難しさは、薬剤管理にもある。こんな局面で、医介連携の必要性を痛感する。
精神科からのお薬も大量に飲んでいる。1年以上、ヘルパーさんが代行して精神科に薬を取りに行っている。次回からは、私に処方してくれとケアマネからの依頼。しかしそもそもこの方は、在宅医療の適応だろうか?本人は判断できないし、家族もいない。しかし周辺の病院すべてから、認知症を理由に入院を断られた。ある療養病床では「緩和医療が必要」と言っただけで断られた。また、入院できる精神科病院はかなり遠くにしかない。市外に長期入院したら生活保護が打ち切られる。かといって在宅療養でも麻薬の服薬管理が困難、地域の病院には認知症を理由に入院できない、入院できる精神病院はあまりに遠い・・・ 。下町の現場では、綺麗事では通用しない。できることはこまめにただ寄り添うだけ。ただヘルパーさんの電話は夜中、鳴りっぱなし。結局、このまま在宅で診るしかないのか?大便まみれの部屋で、ヘルパーさんと一緒に悩み込む。医療療養病床もダメ、特養や老健もダメ、在宅も限界。まさに八方塞がり。と、悩んでいたら、ある特養が空いた!と連絡が入った。しかし特養は医療機関ではない。レントゲンひとつ撮れないし麻薬は出せないという。末期がんでもないので、在宅医(私)が外か入ることも出来ない。入所前には形式的な診断書を要求される。そもそも在宅患者さんにMRSAや梅毒の検査の必要があるのか?さらに、ケアマネさんに特養入所時にお薬を1ケ月分処方して欲しいと懇願される。使っている準オピオイドは新薬なので2週間投薬しかできないと説明しても、施設やケアマネさんには理解されない。入所後は大量のお薬を、ヘルパーが当院まで取りに来たいと言う。診察無しで投薬するのか?寝たきり患者さんの周囲では、医介連携に関する悩みは尽きない。
3 訪問看護が入れないショートステイ
老健にショートステイ中の患者さんの発熱や腹痛などで、電話が時々かかってくる。しかし普段入っている訪問看護師さんは、なぜか入れない。対応に苦労することがある。特養からも往診を頼まれることがあるが、原則、対応できない。介護施設における医療は最小限だが、いまどき、これで本当に対応できるのか?施設での看取り推進と言われるが、本当に可能だろうか?介護施設にショートステイ中ないし入所中の患者さんへの訪問看護や緊急往診に関しては、もう少し柔軟な対応ができるよう、改善の余地がある。在宅療養のみで非がん・慢性期の患者さんを管理することは、長期介護となると困難な場合が多い。在宅医療と療養病床、そして介護施設での連携を緊密にすることが肝要。また地域の既存の介護施設をより上手く活用できるよう制度の修正は必至だ。
4 2025年を確実に見据えた「医介連携」
八方塞がりのような在宅症例がたまにある。しかし、結局は我々在宅医が診て行くしかない。診るといっても、看護師とケアマネが診てくれるのだが・・・。訪問看護師が在宅医療の要であることに異論はなかろう。その訪問看護は介護保険下のマネッジメントなので、看護師が入れず困り果てる局面が多々ある。何のために、こんな変な規則になっているのか?私には理解できない。介護保険下でしか許されない訪問看護にしても、またがん拠点病院至上主義に基づく緩和ケア講習会についても現場のものには、違和感がある。緩和ケアはもっと広い概念だし、地域で行うという発想の転換も必要だ。また、訪問看護制度の簡素化やケアマネ業務の簡素化も提案したい。
増え続ける老衰や認知症終末期での胃瘻問題。医療機関で胃瘻を入れて、介護施設で管理する。胃瘻管理の流れは、医介連携そのものだ。一連の流れの源流(胃瘻の適応)における検証も、医介連携における検証も必要だ。さらに多職種連携の中では、嚥下口腔ケアを担う、歯科医師の役割は大きくなる一方だ。医師よりも歯科医師の方が、医介連携に意欲的であることが指摘されている。さらには、薬剤師さんがバイタルサインを測る時代になってきたことを直視したい。
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この記事へのコメント
>がん拠点病院至上主義に基づく緩和ケア講習会についても現場のものには、違和感がある。
同感です。
>緩和ケアはもっと広い概念だし、地域で行うという発想の転換も必要だ。
はい、その通りですね。緩和ケアは、がんに特化されたものではないはずです。
>また、訪問看護制度の簡素化やケアマネ業務の簡素化も提案したい。
現場を利用者さんに寄り添って走り回るケアマネには、形式的な書類作成至上主義が難儀です。
>増え続ける老衰や認知症終末期での胃瘻問題。医療機関で胃瘻を入れて、介護施設で管理する。
>胃瘻管理の流れは、医介連携そのものだ。
介護施設で胃ろうを外し、口から食べるという介護現場の実践が始まっています。
★胃ろうよさようなら―介護・看護・医療がかわる理論と実践 明日はおスシを食べに行こう (竹内孝仁の実践介護学 1) [単行本] 竹内 孝仁 (著)
Posted by ケアマネジャーいいじま at 2011年12月03日 11:38 | 返信
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