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「医学博士」と「専門医」
2012年04月08日(日)
若い医者はみんな「専門医」を目指して、専門分化が加速する。
昨日(4月7日)の産経新聞朝刊に寄稿した文章を転載させて頂く。
医者選びシリーズ第6回 「医学博士」と「専門医」
遠くの名医より近くの「かかりつけ医」
医者の名刺によく「医学博士」と書いてあります。一般の人には、本当はどのような肩書きかよく分からないでしょう。実際、私自身もよく分かりません(笑)。25年前、大学の医局に帰った時に偉い先生から聞かれました。「君、もちろん医学博士は取るつもりだね?」その時は、恥ずかしながらまだ「医学博士」という言葉さえ知りませんでした。それでも5年間の研究生活の結果「医学博士」を頂きました。医学博士とは論文を書いて大学の学位審査会で認められた称号です。だから何だ?と聞かれても、町医者にとって特に意味はありません。名刺に書くのと、ある期間、試験管を振っていたという証拠でしょうか。現在、医学博士は大学院生からが主流で昔より減少しています。一方、多くの若い医師は専門医を目指します。専門医制度は2階建てといわれています。まず内科や外科などの土台となる認定医を取得してからでないと、たとえば日本消化器病学会の専門医は取れない仕組みになっています。
医学博士という称号は一生ものですが、専門医は期間限定です。数年毎に更新が必要。学会にこまめに参加して研鑽を重ねて初めて専門医資格の更新ができます。私は現在、5つの専門医・認定医を有しています。しかし現場の町医者は忙しくてどうしても学会に参加できない時が多い。せっかく専門医を取得してもそれを維持するには相当な気力・体力が必要です。近い将来、維持できなくなり専門医を捨てる時が来るような予感がします。
さて、専門医になれば何かいいことがあるのでしょうか?よく聞かれる質問です。これも医学博士と同様、特にメリットはありません。駅の看板などに表記することが認められているくらいです。医療機関の広告は法律で厳しく規制されています。従って「○○学会専門医」という表示は、自分の専門性を患者さんにアピールできる貴重な機会です。標榜科目と専門医資格は、現時点では明確に規定されていません。では専門医はどのような意味があるのでしょうか?専門医は、非専門医より当然、その分野での腕がいい。当然その分患者さんの窓口負担も高いのでしょうか?実は専門医を持っていてもいなくても診療報酬は変わりません。日本においては研修医の診察代も、いわゆる名医の診察代も同料金です。専門医制度がまだ充分に整理されていません。今後、真に国民のための専門医制度にすべく議論されています。以上のような現状を知った上で、専門医表示を眺めてみてください。
テレビでは「神の手」のようないわゆる「名医ドラマ」が好まれます。患者さんは、どうしても名医を求めがちです。本屋さんには「名医図鑑」が並んでいます。しかしそもそも名医に客観的な基準などありません。「専門医」のほうがずっと現実的だと思います。また名医は、遠くにいた方が期待度が高くなる傾向があります。患者さんは不思議と近くの医療機関には行きたがりません。しかし患者さんにとっての本当の「名医」は案外、近くにいるものだと思います。自分にとっての「名医」を、かかりつけ医として持つべきです。ちなみに私はよく「迷医」だと言われます(笑)。
キーワード 専門医
医師は自由に標榜科目を選ぶことができる。日本専門医制評価・認定機構では、加盟している各学会と協調し、5年間以上の専門研修を受け資格審査と専門医試験に合格した医師を専門医と定義している。
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この記事へのコメント
前略。いつも、ブログ読まさせて頂いています。
今回のテーマ「医学博士」「専門医」について、先生ご自身のことについて一切触れておられなかったら良いブログだったと思います。このブログの中で、自分は博士であり専門医であることを告知する必要があったのでしょうか?資格を持っている人がその資格について議論した所で、所詮、嘘っぽいです。
私の同級生に医学博士も専門医も一切持たない心臓外科医がいます。腕は一流です。術後のICUでの管理も非常に理にかなっています。学会発表はほとんどしません。資格に頼らない本当の名医だと思います。名医の評価は別に広く知られなくても良いのではないでしょうか?なぜ、先生は、それほどまでに、在宅医をアピールしなければならないのですか?いつも不思議に思います。
Posted by oshige at 2012年04月08日 05:00 | 返信
先日は「末は博士か、大臣か」等と失礼な事ヲ、申しあげて、すみませんでした。
ところで、以前のブログで、医師会の方が「在宅医療は総合診療になるから反対」と言う意味の事を仰ったと記憶しています。
総合診療というのは、NHKの総合診療医ドクターGの、総合診療医の事なんでしょうか?
あれは、戦前とか、地方の腕のあるお医者さんみたいに、あらゆる知識を持っていらっしゃる名医に近い医師ですね。
NHKのドクターGは内容はあんまり分かりませんでしたけど、すごいなあと思いました。
テーマを出して、医学生に質問して、最後に診断していく、医師も凄いけど、答える、医学生も色々な地方から、かなり、臨床経験のある秀才が参加して驚きの連続です。
確かに、介護保険のお年寄りの状態を見るのは、老化のデパートですから総合診療ですね。
勿論、ケアマネジャーは医師ではありませんが、初めのアセスメントで、どのくらい沢山、自分のケースを持っているかで、それを伝える、医師の診断に影響が出るのじゃないかなと思いました。
Posted by 大谷佳しk at 2012年04月10日 01:49 | 返信
長尾先生のブログを、よく読んでいなかったので、、先生の仰る意味を取り違えていました。長尾先生ご自身は沢山の専門医の認定をおもちなんですね。
それは、一人の患者を診るのに、色々な専門的知識を持った方が、より、患者の症状の原因を見つけることが出来るから、専門の学会に参加して、知識を得ようと思われたのですね。
専門医である事と、generalであることは一体なのでしょう。
先生は国立病院の勤務医では無く、町の開業医である事と、考えが臨床に密着して、より、患者の希望に沿ったものでありたいので、治療方針を説得する為に、専門分野も標榜も必要なのかもしれませんね。
結局、私には医師の世界の事は良く分かりません。
とにかく、私が申し上げたいのは、「家族は居ない方が良い」とかあんまり、思った事をズケズケ言わないで欲しい。
それと、何事も焦らずに、時間をかけて、例えば、医師会にも説明して、話し合った方が良いと思います。
労働者には、労働組合が必要ですし、医師には医師会が必要なのだと思います。
私はどちらにも、入ったことはありませんが、自分を守るものが無いと、悲惨な事になるとおもいます。
Posted by 大谷佳子 at 2012年04月12日 12:36 | 返信
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