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認知症学会教育セミナー
2012年04月22日(日)
今日は、日本認知症学会の教育セミナーを受講した。
朝から夕方まで、缶詰め。遅刻、早退は許されない。
しかし、本当に楽しく有意義な1日だった。
しかし、町医者にそんなことができるはずもない。
そこで、今日の3つの講義を聞けば1年分の研修に相当するとのこと。
かなり良心的。
日本東洋医学会などは、専門施設での研修ができないので
永遠に専門医試験も受けられない。
認知症学会は、よく考えてくれている。
門戸だけは開いてくれている。
今日の教育セミナーは、専門医の更新研修でもあった。
非常に興味深い話ばかりで、飽きなかった。
・前頭側頭型の基礎
・認知症行政
・画像診断の進歩 の3題の講演。
膨大な内容は、とてもためになった。
秋にもまた同様のセミナーがあるそうだ。
是非、また受講したいと思わせる教育セミナーだった。
Ⅰ 前頭側頭葉変性症の分子病態とそれに基づく
診療の進歩 筑波大学精神医学 新井哲明先生
FTLD(frontotemporal lobar degeneration)
は前頭・側頭葉に限局して進行性の変性を呈し、
行動障害や言語障害を主徴とする非アルツハイマー型認知症の一群。
・FTD:前頭側頭型認知症
・SD:意味性認知症
・PNFA:進行性非流暢性認知症
の3つのサブタイプがある。
アリセプトは症状を悪化させるので使わない。
Ⅱ「わが国の認知症対策」
厚労省老健局認知症・虐待防止対策推進室
認知症対策専門官 堀部賢太郎先生
●認知症の増加は世界潮流
地球上では、4秒に1人が新たに認知症を発症。
世界的コストは6040億米ドル=50兆円。
日本の高齢化率=23%を超えている。
従って認知症対策の充実は至急の課題。
10/66
世界の認知症患者の66%は、低所得国。
しかし、10%しか調査されていない。
世界的データは不明な点が多い。
認知症ケアは類型化しにくい。
家族支援がキーワード
若年性認知症とは、今、65歳未満かどうかであって
65歳を超えると若年性とは言わない。
●認知症患者の死亡の場所
やはり病院が多い。海外はナーシングホーム主体。
患者さんは、4人中3人は、自宅がいいと言う。
「認知症になっても住み慣れた地域で
安心して暮らせるために」というスローガンは、
病院や施設が足りないためだけとは決して言えない。
国の経済的打算だけでは無い。
●精神科入院に関わる話。
5万人が精神科に入院している。
平均在院日数は300~600日と高い
出したくても出せない。受け皿が無い現状。
退院させようとすると家族が拒否する。
家族が燃え尽きないうちに早めに入院させることが重要。
退院先と言っても、特養と老健しか見えてこない。
退院支援部署が無い病院もある。
●今春の診療報酬改定について
介護 +1.2% =8兆に対して 億
但し、処遇改善交付金分 2%があるので
=-0.8%となる。
介護のかなりの部分が認知症に使われている。
・精神科リエゾンチームの評価
・抗不安薬や睡眠薬が3剤以上の時の減算
・認知症専門医紹介加算
●地域包括ケア
例えば、料理が出来ない人に対するサポートは2つ。
1)料理ができるようにする=自立支援型
2)代わりにやる=機能が落ちる=その財源はもうない。
●24時間、定期巡回型・随時対応型サービス
「定期」がポイント=パッケージサービス
田舎でも可能か?最初は、都会から始める。
認知症患者にはどうなのか?
選択肢が増えることはいいこと。
●小規模多機能型サービス=パッケージサービス
これまでは看護が無かった。
4月からは看護がついた。
●介護3施設に対して、BPSDを受け入れた時に
加算がついた。
介護職員の喀痰吸引
●これまでは、「地域は住むところ」だった。
中学校区単位がキーワード
全国に7000ケ所ある。
●早期診断の重要性。
掘り起こしには健康保険が使えない
医者に来るまでが問題なのだが。
●課題
認知症に対する抗精神薬投与の問題。
2005年FDAが「死亡率が上がる」ことを勧告した。
これを受けた新しいルール作りが必要。
●ケアサイドの医師への不満
医者の悪口が多い。
意見書に「前回と不変」と書く医師への不満。
また認知度の区分が、Ⅱであっても
病名欄に「認知症」が無いという理由で切る自治体がある。
⇒「アルツハイマー型認知症」と面倒でも書くこと。
●認知症疾患医療センター
偏在がある。
専任の専門医1名以上、臨床心理士が要る。
専門病院でもなるのは難しい。
●かかりつけ医の技量の向上研修
まだ約3万人しか受講していない。
まだ、診療報酬がついていない。
●認知症サポート医は、
プチ専門医では無い。
地域の相談役・アドバイザーである。
名簿を自治体への公表が予定されている。
既に2000人に達している。
素敵な3人組とは、
国と都道府県と市町村の3者が協働すること。
●2月30日に野田総理が国会で
サポート医の充実を演説した。
●サポーター100万人が目標だったが
300万人もいる。
一方、認知症地域支援推進員は、
まだ全国に、150人しかいない。
●市民後見人の活用
日本はドイツを見習おうとしている。
社協等に研修済の後見人をプールしておきそこに委託する。
後見監督も大切。
Ⅲ 認知症画像研究の最先端とその臨床応用
東京都健康長寿医療センター 石井健二先生
何故、画像診断が必要か?
100以上ある、鑑別し正確に診断する必要がある。
血管性か変性型かの鑑別。
2011年にアルツハイマー病の新しい臨床診断基準(NIA-AA2012)
が提案されアミロイドPET,FDG-PET,MRIが、
客観的画像バイオマーカーとして採用された。
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この記事へのコメント
患者さん用のメールで失礼します。私は明石市のまついe-クリニックの医師です。認知症学会の専門医試験を受けようと思います。脳外科ですし、長く医局を離れてしますので、試験を受けた方の経験をお伺いできません。どんな試験問題なのか?ご存知なら教えて下さいませんか?合格された方をご存知ならお伺いしたい思います。よろしくお願い申し上げます。
Posted by 松井 豊 at 2012年06月04日 12:37 | 返信
長尾先生が、お答えになったと思いますが、私は元職鍼灸師で、ケアマネジャーですので、認知症専門医の試験のことは、分かりません。
ケアマネジャーや介護職のための、認知症ケア専門士の資格試験も認知症学会が主催していますので、認知症学会に、お尋ねになれば、わかると思います。
私は、去年、認知症ケア専門士の講義だけ受けて、インターネットで認知症学会に申し込むのを、忘れてしまったので、アウトでした。
Posted by 大谷佳子 at 2012年06月08日 01:29 | 返信
Webで「認知症専門医試験」を検索したら,この長尾先生のブログに着きました.
認知症学会のセミナーに出席されてのノート,たいへん興味ぶかく読ませて頂きました.
→自分も今年は必ず受講しようと思います.
じつは自分も来年には専門医試験を受けなくてはならないので,認知症の勉強をしっかりやろうと
思います. →→→ でも個々の患者さんをよ~く診るのは,時間がかかりますねぇ...
でもよ~く診ないと患者の症状・家で状況などわかりませんしねぇ.
(おもわずぐちってしまいました)
Posted by 山田 武 at 2013年02月10日 11:43 | 返信
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