認知症があるかな？と思っていたら、無い！
俳句などは完璧。
私よりなんでも知っている。

普通にしゃべれるということは、飲みこめるということ。
これは私の長年の経験から見出したこと。
本当は嚥下内視鏡をしたほうがいいのだが。

さっそく、水を飲ましてみた。
ゴック・・・　という音が響き渡り
「おいしい」と呟く。

家族は涙を流して喜んでいる。
「長尾先生、本当はたべさせてやりたかったの・・」
当然の感情だろう。

食べなくても誤嚥はする。
生きるとは、食べること。
だから、食べさせていい。

３段論法にもならないが、それでいいのだ。

今は、ゼリー食を食べている。

「どうや、味は？」
「まずいな」
一同爆笑。

なにはともあれ、自宅に帰ってきて本当によかった。

帰りがけに家族が追いかけて来て、真剣な顔でこう言った。
「先生、今度肺炎を起こしても絶対に入院させません。
　家でダメでも仕方がありませんので最期までお願いします」

私は黙って頷きながら聞いていた。