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町医者と終末期相談

2012年07月24日(火)

医療タイムスにも連載させて頂いている。
今月は「町医者と終末期医療」で書いた。
転載させていただく。
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医療タイムス
冬の時代の診療所経営 7月号 

終末期の相談も町医者の仕事    長尾和宏

 

 診療所は病院より敷居が低いのでしょう。患者さんは実にいろんなことを相談してこられます。最近多いのは、認知症の相談。家族にそれらしき人がいるがどこに、どうやって連れていったらいいのか分からないという相談、です。認知症医療の受け皿が貧弱な現状では、お答えに窮することが多く、正直困っています。もうひとつ多い相談は、胃ろうの相談です。胃ろう患者さんはこの10年間で10倍に増加。特に老衰や認知症終末期における胃ろうが現在問題になっています。「胃ろうを勧められたがどうしたらいいか?」「現在胃ろう栄養の親を、注入を止めて自然に任せたいのだが主治医にどう言えばいいか?」など。いずれもこの世に正解が無い難問ばかりです。

 
 私自身、訳があって医学生時代から終末期医療の勉強会に顔を出していました。30年経過したこの6月、日本尊厳死協会の副理事長職を拝命しました。日本尊厳死協会は1976年に設立された人権団体で現在12.5万人の会員がいます。リビングウイル(LW)協会とも呼ばれます。一般市民、難病をはじめとする患者さんや医師や弁護士など様々な市民が年会費2000円を払って会員になられています。私は当初は関西支部の「受容医師」でした。LWカードを持って受診された患者さんに理解を示すのが受容医師の役割です。しかし気がつけば関西支部長という重責を拝命する立場へ。さらにそのご縁で先月はスイスのチューリッヒで開催された「死の権利・世界連合総会」に参加しました。オランダの安楽死法案に携わった医師と食事をしながら意見交換をしてきました。正直な話、かなり先進的だと思っていた欧州でも日本と同じようにいろんなご苦労があることを知ることができ、貴重な体験をしました。医師と患者の話し合いと納得がどこまでも基本です。

 
 さて、家族が持ち込む終末期医療の相談にのることも町医者の仕事ではないかと思います。なぜならまだ明確な答えが無く、患者さんとご家族の希望にできるだけ寄り添って「満足医療」を指南するのが町医者の役割だと思うからです。「かかりつけ医」とは、終末期の相談が本音できる医師ではないでしょうか。そのためには大変活発になってきた、我が国の終末期医療事情をある程度知っておく必要があります。日本老年医学会が、人工栄養の撤退もあり得ることを立場表明しましたが、今度は2割の学会員が人工栄養の中止を経験しているという衝撃的なアンケート結果を公表しました。なんと同じ日に日本透析医学会は、同じく「本人の希望があれば透析の中止もあり得る」と立場表明しました。それぞれの医学会レベルでの終末期ガイドラインが検討されています。一方、民意としての動向として「LW法制化」の議論が超党派の国会議員らにより進められています。私は昨年からの尊厳死議連の会議に参加可能なものは全て参加してきました。機会があればまた詳しく書きますが、現在、障害者団体や弁護士会が激しく反対しており法案の見通しは不明です。

 
 7月17日に拙書「平穏死・10の条件」(ブックマン社)という本が発売され店頭に並びます。サブタイトルは「胃ろう、抗がん剤、延命治療いつやめますか?」となっています。宣伝になり大変恐縮ですが、是非ともご一読頂き、忌憚ないご意見を賜れれば幸いです。

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この記事へのコメント

長尾先生

福岡県で認知症医療を中心にしています勤務医です。『平穏死の10の条件』拝読しました。
ブログもいつも興味深くよませて頂いているのですが、そのブログの内容をギュッと濃縮し、もっと突っ込んで書かれた、渾身の一冊だと感じました。認知症の患者さんが多いということはご高齢の方が多いということで、それはとりもなおさず死をいつも意識していないといけない日常です。わたしも、患者さんご本人は認知症のあるなしに関わらず「寝たきりになって手を煩わせるくらいならサッサとあの世へ行きたい」という方が多いのですが、ご家族となると、延命処置などの判断に迷われるのも多いことを経験します。本音では「そっとしておいてあげたい」と思っていても、「冷たい家族だと思われるかも」「そんなこと決められない」という迷いが伝わって来ます。
病院での死の方が多い現代日本において、死についておおっぴらに語ることができにくかった、なので自分がどう死にたいのかということを考えなくなってきていた、考えないようにしていた、ということが、平穏死出来ない一番の理由だと感じました。
それでも、最近は少しずつではありますが、病院でも「出来るだけ何もしないでください」というご家族が増えてきたように思います。ですが、そこから家に帰すということが実際にはなかなかできておらず、歯がゆい思いをしております。この本の内容がもっともっと一般化して、家に帰ることは特別なことではないこと、寄り添うサポートを見つけることができれば、誰でも穏やかに死ねるんだよ、ということが普通のことになって欲しいと、強く思います。
乱文乱筆失礼しました。お身体に気をつけて、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。

Posted by 矢野香織 at 2012年07月24日 08:04 | 返信

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