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おひとりさまでも大丈夫?

2012年07月29日(日)

独居でも在宅療養は大丈夫?よくきかれる質問だ。
病気や医療需要、看護重要にもよるが、大丈夫なことが多い。
昨日の産経新聞・兵庫版より転載させていただく。
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在宅療養シリーズ第4回 「がん」と「非がん」の差

  おひとりさまでも大丈夫?

            

 「在宅医療」という言葉は聞いたことがあるけれど、イザ重大な病気になった時、どんな病気なら在宅医療を受ければいいのか、またどの段階で依頼すべきか?という質問をよく受けます。在宅医療の対象疾患は極めて広く、すべての病気がその対象になるといっていいと思います。ただし私は「がん」と「非がん」に分けて考えるようにしています。「末期がん」での平均在宅期間は1ケ月半と、あっという間ですが、「非がん」の病気の在宅療養は年単位の長期間に及ぶことが多く、両者の多少療養スタイルは多少異なるからです。誤解を恐れずに言えば、末期がんは短期決戦で、「非がん」は長期戦というイメージかと思います。「非がん」の病気の例を挙げれば、認知症、脳卒中後遺症、神経難病、骨粗しょう症や腰部脊柱管狭窄症、老衰、臓器不全症(心不全、腎不全、肺気腫、肝硬変など)です。「末期がん」では、緩和医療が中心になります。一方、「非がん」では、緩和医療に加えて通常の医学的管理が必要です。適切な医療があることで患者さんは長生きできるので、医療のウエイトは当然高くなります。在宅医療=手抜き医療、や何もしないとよく誤解されますが、検査や治療をやるメリットがある時にはやるのが「非がん」の在宅療養なのです。在宅医療は、一人で来院できない、通院に介助が必要な人が対象になります。ただ、できれば外来通院が可能な時から、かかって頂くと助かります。早ければ早いほどいい。

 
 「独居でも大丈夫ですか?」という質問も多く受けます。結論からいえば、全然大丈夫。今や単身世帯のほうが多い時代。上野千鶴子氏が書かれたような「おひとりさまの老後」がもはや普通の時代です。いくら仲が良い夫婦でも必ずいつか「おひとりさま」になります。また天涯孤独の独居の末期がんの方を何人も最期まで在宅で診ました。家族という「邪魔」が入らないので、本人の在宅希望が強いほど在宅療養の継続は容易です。率直に言って、最もやり易い療養パターン。この事実はまだあまり知られていません。在宅療養を阻害する因子として多いのが「家族」です。お金持や、家族が医療者である場合、本人は家にいたくても、家族が施設や病院に入れたがることがよくあります。在宅療養は、本人に加えて家族の同意が前提条件ですが、独居の場合は、その心配がありません。ただ看取った場合、死亡宣告を行う相手がいないのが少し寂しいですね。家族がいない分、私たちが頑張ろう、なんてスタッフも張り切ります。

 
 最後に年齢について。当院の在宅では、ゼロ歳から100歳まで在宅で診ています。出産年齢の高齢化に伴って、早産、低体重での出産が増え、赤ちゃんの集中治療室(NICU)から直接在宅に帰ってくる症例も時々あります。このような症例は日にちを重ねるほど元気になりますから、我々も嬉しいものです。在宅療養=どんどん悪くなる、とは限りません。在宅療養には、病気の種類も、病期も、年齢も全く問いません。「家にいたい」、「家で生活したい」という患者さん・ご家族の想いと医療者との信頼関係だけでほぼ決まります。もちろん介護保険の活用はいうまでもありません。

拙書「平穏死・10の条件」は、お陰さまで発売1週間で3刷りに。ありがとうございます。

 

キーワード 「おひとりさまの老後」

上野千鶴子氏著の同書は、70万部のベストセラーに。「長生きをすればみんな最期は独りになる。女はそう覚悟しておいたほうがいい。お一人様の老後にはそれなりのスキルとインフラが必要だ。夫を見送ってからが女の後家楽だ」という。

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