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家族に怒られました

2013年01月08日(火)

毎日、朝から晩まで、訪問診療や緊急往診で走りまわっている。
産業医や会議や相談や来客やいろんな雑用を、外来の合間に受けている。
そんな中、ある在宅患者さんを訪問した帰りぎわに御家族にこっぴどく怒られた。
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状態が悪いので連日の訪問になったばかり。
時間をかけて看取りの説明もした。
しかしそれが家族の溜まり溜まった不満を爆発させてしまった。

「がんで死ぬのに、平穏死とは、ふざけている」
「がんになったのに、理想的な最期という言葉は許せない」
「デリカシーの無い言葉に、患者も家族も大いに傷ついた」
「最期までがんと闘いたいのに、緩和医療とは何事か」
「長尾先生は、家族の気持ちを全く分かっていない」
「来てもすぐに帰る」・・・・

ただただうなだれて、聞いていた。

患者さんのベッドサイドに座って、タコ焼きをを食べさせて、
ジュースを飲ませてみたら、美味しそうに口にしてくれた。
よく見ると、患者さんの大きな目から、涙が溢れていた。

たしかに私は、役に立たない、ズルイ医者。
訪問看護師がそんなインチキ医者をカバーしてくれている。

私は零点だが、看護師は200点満点との評価を頂いた。
実に正しい評価だ。

「どうします、病院に戻られますか?」

「いや、ヤッパリ、このまま自宅で看取ってください」、とのこと。

家族は寝ないで看病しているので、
疲れ果てて私に当たったことを素直に謝った。

家族が、死を受容できない気持ちも
私に当たりたい気持ちも、よく分かる。


年末も正月も、同じような、サンドバック状態が続いている。

胃ろうをしている患者さんが、誤嚥性肺炎を起こした。
ご家族は、私に怒り散らした。
「今すぐ、抗生剤を持って来い!」と。

元旦に開いている薬局はまず無い。
困り果てた。

大晦日までずっと抗生剤をやっていたので、
少し休みを入れないといけない、という説明を一生懸命にしたが
首をかしげるばかり。


別の患者さんは、正月から、1時間半くらい訪問して相談にのった。
会話を横の部屋で聞いていた家族が、昨日、何度も電話をかけてきた。
「あんたのヒドイ説明のせいで、家内は病気が悪くなった」と激怒された。

「説明で悪くなったのではなくて、病状が悪いと往診依頼があったので
 往診をして、病状を説明しただけです」と言うも、まったく納得されず
なかなか電話を切ってくれない。

「往診をしてイチャモンをつけるのなら、もう診療は勘弁してください」
と言うと、
「誰がイチャモンをつけた?!」と、また20分、イチャモンをつけてくる。


3例とも、患者さん自身は、平穏で穏やかなのだ。
激しく怒ってくるのは、すべて家族だ。

在宅医療の5割以上は家族にエネルギーを使う、と講演では説明しているが、
3例のようなケースでは、エネルギーの9割以上を家族に費やさないといけない。
そんな家族の怒りを受け止めるのも在宅医の仕事だが時間がかかるのが辛い。

そんな中、独居の方の在宅を訪問する。
実にのびやかに、世間話をして楽しむ。
パラダイスだ。

よく、がん専門や、神経難病専門を掲げる在宅医がいるが、
私は、「おひとりさま専門」を掲げてやろうかと思う時がある。

「おひとりさま」に、「おひとり医者」が、対峙する。

究極だが、一番、単純で純粋な医療ができる気がする。
ただし、お気に入りの看護師さん1名だけはほしいなあ。




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この記事へのコメント

ほんとにお疲れ様…
「おひとりさま専門」の在宅診療医志向、無理もない感じが伝わってきます。
それでもご自分のブログがあって、その向こうの分かってくれる読者に
ぶっちゃけられる長尾先生はまだ倖せ?

医師につなげる前に、その必要性を判断しながら、とっても丁寧に
家族からのお怒りや問い合わせをうかがう担当看護師がいたらどうなのかなあと。
昔メーカーのクレーム担当係のTVドラマがあって、すぐに「社長を出せ!」という
常連クレーマーもいたし、いろんなトラブルで大変な世界だった記憶があります。
でもドラマのせいか、担当者達は涙ぐましい忍耐をしてガス抜きに成功するストーリー。
もちろん対応が必要なほんとうのクレームには
社をあげて善処していた気がします(記憶薄れつつあり)

患者さん本人は満足して下さっているのが、何よりの喜びですね。
ストレスに負けない毎日をお過ごしください。
(産業医でおられるのでその辺は心配していませんが)

Posted by 梨木 at 2013年01月09日 11:10 | 返信

私は長尾先生の講義を受けて、一年半ぐらいしか、経っていないので、あんまりよく理解してないのですが、まあ、臨床医としては、優秀な方だなあとはぼんやり、感じています。
その長尾先生が優秀だと、お誉めになる訪問看護師さんは、優秀なのでしょう。
私の祖母も、大阪の赤十字病院で、院長に「部屋の温度が何度?」と聞かれて、「25℃です」と答えたので、随分誉められて、うれしかったけど、仲間の看護婦さんからは悪口を言われたと言う話を何度も、していました。
「だから、看護婦だけは、なるもんじゃないよ!」と言われましたけど、今は、梨木さんの仰るように、在宅医療と言う、新しい時代なのでしょう。
夜中に、いきなり、携帯で呼び出されて、高熱の出た患者さんに点滴をする為に寒い道を行ったり、或いは、不幸にして、亡くなられた方の清拭に行かれて、お医者さんが朝になっていらっしゃるのを待つなんて想像できないほど、大変なお仕事です。
誰にも、足を引っ張られること無く、お仕事に専念できるのですから、つらいけど、遣り甲斐のあるお仕事だと思います。
私の祖母の時代より良い時代になったのです。亡き祖母もそう思っているでしょう。
長尾先生も「役に立たない、ずるい医者」等と自己卑下してはいけません。
初めは、理解できない家族のパワーハラスメントに負けず、在宅医療に行って上げて下さい。皆さんお身体大切になさって下さい。

Posted by 大谷佳子 at 2013年01月10日 12:31 | 返信

でも、長尾先生も、いい加減、働き中毒だから、訪問看護師さんも、働き中毒にならないように、気を付けて下さい。
ケアマネジャーは今は、一人のケアマネに30件とか、制限されていたと思います。
自分で「ここまで」と制限しないと、息の長い、良い在宅医療は続きません。

Posted by 大谷佳子 at 2013年01月12日 02:39 | 返信

見ているのは、医者だけではありません。

Posted by 北の大地 at 2013年01月15日 12:41 | 返信

以前、TVで、病院勤務から、訪問看護婦になって、喜んでいたら、訪問先のお爺さんに虐められたと言う話を聞いたことがあります。
そんな話は、有りえないと思いますが、夜の訪問看護は、ヘルパーさんにもついて貰う必要はないのですか?
患者さんを疑うつもりはありませんが、家族が、長尾先生みたいな、りっぱな男性医師にまで、言いたい放題のことを言っているのを読むと、大丈夫なのかなと思う事が杞憂で有れば良いと思います。

Posted by 大谷佳子 at 2013年01月16日 02:55 | 返信

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