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がん細胞にもある上下関係

2013年01月27日(日)

最近、「産経新聞、読んでるよ!」なんてよく声をかけられる。
3年以上連載してやっと認知されるのだなー、なんて思う。
1月26日の産経新聞から転載する。抗がん剤シリーズは、12回まで続けたい。

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産経新聞抗がん剤シリーズ第9回  抗がん剤治療のさじ加減

 がん細胞にもある上下関係

 

がんには、原発巣と転移巣があります。原発巣と転移巣の関係は、親分と子分の関係に似ています。子分は、親分の命令で動いています。親分は子分に「勝手に暴れるなよ!」という指示を出しています。実はがんの原発巣も転移巣に同じような指令を出しているのです。がんの指令はサイトカインという全身を巡るホルモンのような物質によって出され、末端まで制御されています。すでに全身に散らばった子分は、親分の指令で大人しくしています。しかし、その親分が、手術でしょっ引かれたらどうなるか?「大人しくしていろよ!」という指令が出なくなります。残った子分たちは、勝手な反乱を開始するのです。これまで抑圧されていた反動もあるのか、激しく暴れ出します。場合によっては、子分の中でも力がある「番頭」が新しく取り仕切ることもあります。2cmのたちの悪い肝臓がんを手術したことは、実はそんなことだったのです。小さくてもすでに全身に転移していたのです。親分を摘出してしまったばかりに、子分が暴れて親分の分まで復習をする・・・。経験ある外科医は「がんが暴れる」という表現をします。私は
 
 「触らぬ神にたたりなし」という言葉を思い出しました。このような「親分が子分を制御」しているメカニズムが徐々に解明されてきました。親分とは実は、「がん幹細胞」のことです。現在、がん幹細胞を標的にした、新しいがん治療が研究されています。


 さて、抗がん剤や分子標的薬でがんを攻撃しますそれぞれ絨毯爆撃とピンポイント攻撃に喩えられます。手術で親分を摘出し、仲間は放射線や抗がん剤で炙り殺す・・・。こう書くとがんの三大治療は、とても単純なものに見えます。しかし単純なのは、初回手術で完全切除ができた時です。多くの場合、親分ではなく、子分たちとの闘いに戸惑うのです。子分の中でも、賢い子分が次の親分になります。元祖親分は意外に人情味があったが、新親分は情け容赦ない場合があります。また、人情味があった元祖親分も、度重なる空爆(抗がん剤)を受けて、性格が変わり徐々に人情味を失う場合もあります。人間の世界と同様、がんの組織も常に揺れ動いているのです。腫瘍マーカーの動きとて、決して一定ではないことは、我々の血圧や脈拍が一定ではないことと似ています。人間の免疫能も同様に、常に揺れ動いています。冷えや睡眠不足は、免疫能を極端に低下させます。同じ人間でもライフスタイルによって免疫能は大きく変動するのです。


 がんの勢いも味方である免疫能も、すなわち敵も味方も、常に揺れ動いています。揺れ動かないのは、抗がん剤という薬剤だけ。抗がん剤治療は、「レジュメ」というものに従って行われます。料理でいうなら、「レシピ」でしょうか。医学界で認められた一定の手順に沿って、半ば自動的に行われます。しかし、それを受け止める「がん」も「免疫能」もどちらも常に揺れ動いていることをイメージしておくべきでしょう。抗がん剤治療においてもバランス感覚が大切です。ですから体調が悪い時は1回休んでもいいのです。その時の状況で抗がん剤治療の形は、異なってもいいのです。すなわち、抗がん剤治療もさじ加減が大切だと思います。

キーワード がん幹細胞

がん細胞のうち幹細胞の性質をもった細胞。がん幹細胞が分裂して、がんは増殖する。1997急性骨髄性白血病において同定され2000年代になって様々ながんにおいてがん幹細胞が発見されている。

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この記事へのコメント

「抗がん剤もさじ加減」。素敵な言葉ですね。

エビデンスに縛られる大病院ではできないことですが、個々の患者を診てくださる町のお医者さんであれば、抗がん剤を上手に使い、それこそ・・・料亭レシピではないけれど、お袋の味(?)のように優しい料理を工夫してくれるように思います。

そこには、暴れまわっている子分をなだめる作用も存在するのかもしれません。

体を痛めつけても何の解決にもならないと親を介護しながら思います。それよりも、皆で残されて時間を楽しく笑いながら過ごしたいものです。

Posted by よしみ at 2013年01月28日 09:39 | 返信

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