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放牧系介護

2013年04月03日(水)

お寺境内で認知症の方のデイサービスを行うと、夜がよく眠れる。
そんな「放牧系介護」を、「移動という尊厳」と絡めて書いてみた。
3月30日の産経新聞・認知症ケアシリーズ第二回から転載させていただく。
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産経新聞認知症ケアシリーズ第二回   移動という尊厳

     境内でデイサービス

 

 前回の「認知症って本当に病気なの?」に、度肝を抜かれた方もいるでしょう。第二回では、「移動という尊厳」について考えてみましょう。

世の中には、「牢屋」という場所があります。悪いことをした人が入る場所です。そこでは労働しなくても生きていけます。3食付いて、おまけに静かな環境で読書もタップリできます。日々、お疲れの私などはもし機会があればそこで一休みしたいところです。(笑)しかし、何故、そんな天国のような場所を「牢屋」と呼ぶのでしょうか?それは、そこから外に出られないからです。人間は、たとえ用事が無くても街中や自然の中を、勝手きままにウロウロしたいものなのです。私は、それを「移動という尊厳」と呼んでいます。しかし年を取るに比例して、行動半径が狭くなります。都会まで出ていた人が、いつしか近くの街中だけになり、やがて自宅の周囲、そして室内のみと行動半径は、生命エネルギーに比例してどんどん狭くなってきます。それでも人は、移動しようとする動物です。

 
 余命2週間の末期がん患者さんも、在宅療養している方は、近場の温泉に家族旅行に行かれます。筋委縮性側索硬化症(ALS)の方も人工呼吸器を装着しながら海外旅行に出かける人がいます。何日後には必ず家に帰るのに、わざわざしんどい目をしてでも海外旅行をするのは何故でしょうか?「移動」が人間の本能であるからであると、私は思います。

 
 さて、認知症の人はどうでしょうか?最近まで精神病院に入院という名目で「隔離」されてきた歴史があります。かつては統合失調症も同じでした。「隔離」といえば、病院以外にも介護施設があります。特別養護老人ホーム、老人保健施設、グル―プホームなどです。私が知っている施設の玄関口は、厳重に施錠されています。私が出入りする時も職員が電子キーの暗証番号を押してくれます。もし入所者が徘徊して施設外で事故にあえば、施設側は管理責任を問われるので仕方がないのかもしれません。しかし何度も「脱走」を試みる入所者さんのお顔を見るたびに「移動という尊厳」という言葉が頭に浮かびます。「脱走」は、人間、いや動物の本能かもしれません。施設に入れられた認知症の人の多くは、当初は必死で「脱走」を試みます。2階から脱走した人もいました。しかししばらくすると、徐々に大人しくなります。「順応」ないし「適応」なのでしょう。まあ、「諦め」と言ったほうが適当かもしれませんが。

 
 デイサービスもどこか似ています。多くは半日間、施設の中に高齢者を「監禁」します。一方、知り合いのあるお寺の住職さんは、広い境内でデイサービスを行っています。認知症の人を、境内に「放牧」するのです。ある人は、砂遊びをして、ある人はその辺でお昼寝をするなど、各自が思い思い、好きなことをして半日を過ごします。広い境内で「移動という尊厳」が確保され、太陽光を浴びながら好きなことをして過ごすと、夜がよく眠れるというデイサービスもあります。私は思わず、「放牧系介護」と命名してしまいました。認知症ケアの基本は、「移動という尊厳」の確保であると考えます。実は、これは認知症に限らず、すべての人に共通であると思います。

 

キーワード  精神病院

認知症の周辺症状(暴力や暴言、徘徊、妄想)がひどくなった場合、多くは精神病院への入院が受け皿になっている。一方、入院期間の長期化や症状が改善しても6割が退院できない現実が問題になっている。

 

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