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精神病院から在宅医療へ

2013年04月07日(日)

産経新聞の「認知症ケアシリーズ」第3回は、在宅医療について書かせて頂いた。
精神病院から地域へという流れは間違っていない。
4月6日の産経新聞朝刊から転載させていただく。
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産経新聞・認知症ケアシリーズ第3話 認知症を地域で診る

  精神病院から在宅医療へ

 

今回、まず「認知症患者」という呼び方が、最近だんだん使われなくなったことからお話しします。「患者」ではなく「認知症の方」とか「認知症の人」と呼ばれるようになりました。その背景には、第1回にも書いたように加齢に伴う認知機能の低下は本当に病気なのか、そして認知症になっても誇りや尊厳を持った普通の人間じゃないか、という考え方が根底にあります。


 とはいえ認知症が進行すると、暴力や周囲の方を困らせる行動をとることがあります。本人にとっては、生きがいや誇りの喪失、不安や孤独の表現型であり、時にはお薬の副作用でそうなることもあります。従来(もしかしたら現在も?)、そのような方は精神科病棟への入院がよく見られました。しかし本当に精神科に入院することが、本人にとってどれだけの意味があるのでしょうか?むしろ生きがいや誇りを奪ってしまうと感じることが多くあります。

 
 日本には約35万床の精神科病棟があるそうです。かつてその多くは統合失調症の方が入院されていました。現在は、統合失調症の方は積極的に地域に帰っています。地域で暮らす方が、病気の経過にも本人にとってもいいことが分かっています。当院のような町医者にも精神病院から紹介状を渡された統合失調症の方が来院されます。最初は精神科専門の訪問看護師が付き添って来ますが、すぐに不要と分かります。みるみる地域に順応して普通に生活されています。日本の精神科入院は先進諸国平均の17倍、平均300日と非常に長期です。なかでも認知症の平均入院期間は、なんとその3倍の944日に及びます。


 認知症の方も精神病院から地域に帰ろうという動きが本格化しています。不穏な行動のため入院しても短期間にしましょうとなってきました。では、認知症の方が、地域に帰ってきたあとの医療はどうなるのでしょうか?元気な統合失調症の方は外来通院されますが、認知症の方は高齢化のため通院が困難な場合が多く、通院を嫌がる方も少なくありません。「認知症は病気じゃないから、医療なんて要らない」という声が聞こえてきそうです。たしかに、認知症に対するお薬の是非に関しては次回以降あらためて述べますが様々です。


 私が医療が必要だと言うのは、地域に帰って来た認知症の方が「腰が痛い」とか「熱が出てぐったりしている」といった場合のことです。また介護の方はどうでしょうか。介護保険制度を利用しようと思えば、必ず「かかりつけ医の意見書」が必要です。すなわち、認知症の方が地域で穏やかに暮らすためには、痛みなどの苦痛への対応のみならず、介護保険などの社会制度を利用するための両方の理由で、医療は不可欠なのです。そのためには、もし外来通院が無理であれば「在宅医療」という選択肢があることを是非、知っておいてください。医師が訪問診療と往診を行う「在宅医療」を利用するのが大変便利です。認知症ケアの勉強に精を出す開業医が、どんどん街に出ています。実際には、訪問看護師さんが細かな認知症ケアのノウハウを教えてくれます。しかしまずは在宅医選びから始めてください。

 

キーワード 訪問診療

在宅医療は、訪問診療と往診から成り立つ。訪問診療とは、1~2週間に1回、定期的に医師が自宅を訪問し診察すること。往診とは24時間対応の携帯電話等に連絡があり、その必要があれば自宅に行くこと。

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この記事へのコメント

日本ケアマネジメント学会ニュースVol.23に、論壇「措置制度への回帰を案ずる」と題して、日本ケアマネジメント学会 理事長橋本泰子氏が、載せています。
“「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会(座長、慶応義塾大学教授.日本ケアマネジメント学会理事)における議論の中間的な整理」(平成25.1.7日)が発表された。この報告書は日本ケアマネジメント学会のホームページにアップされているので、ぜひご一読いただきたい。
 この検討会は、社会保障審議会介護保険部会報告書(平成22.11.30)での「より上質で効果的なケアマネジメントができるケアマネジャーの資格のあり方や研修会カリキュラムの見直し、ケアプランの標準化等の課題について、別途の検討の場を設けて議論を進めることが必要である」、また、同審議会介護給付費分科会審議報告(平成23.12.7)での「根本的なケアマネジメントの在り方の検討が求められる」などの指摘、さらに「社会保障.税一体改革大綱(平成24年2月17日閣議決定)における同様の指摘を受けて設置されたものであった。 
 介護保険制度の効率的運用が問われ、介護支援専門員の資質向上が課題とされる背景には、増嵩する社会保障関係支出の効率化.合理化という課題がある。生活保護法は改正が
求めながらも、改正には多面に及ぶ課題があって長い間棚上げされてきたが、ついに制度改正に着手した。人口構造の変化のなか、状況はそれほど逼迫しているということである。
 しかし、なぜ介護保険制度において、居宅サービスだけを給付抑制のターゲットとし、その利用を支援する介護支援専門員の資質向上を問うのであろうか。社会保障制度としては、医療保険には原則的に給付制限がない。介護保険においても介護保険施設に対して、「保険給付の利用抑制に努めること」などという(御触れ)を聞いたことがない。居宅介護における介護給付の効率化に努めないのは介護支援専門員の資質が低いからだとし、居宅の介護支援専門員だけに原因を求めるという考えは妥当なのであろうか。事実、実務研修受講試験受験該当者に、ケアマネジメントを担うために必要な基礎的な知識.技術を持っていない職種も少なからずあり、今のままでよいとは思わない。抜本的な検討が必要である。
 今、一番気になることは、限りなく行政主導型の制度に戻りつつあることである。介護対策を社会保険としたのは、保険料によって財源を拡大したかったからであるが、サービスの利用については、個人の尊厳の保持を旨とし、利用者がサービスを自由に選択できるようにしたのであった。経費の抑制を図りながらも、利用者個人の意思が重んじられる制度でなければならない。地域ケア会議の運営の在り方について、丁寧な検討を願っている。”
ーーーーーー以上、日本ケアマネジメント学会ニュースVol.23の日本ケアマネジメント学会理事長橋本泰子氏の論文より転載しました。

Posted by 大谷佳子 at 2013年04月08日 03:26 | 返信

ケアマネジメント学会理事長橋本氏の論文は、よく仰って下さったと、私は思います。
何年か前はヘルパー2級の資格を持っている人に窓のガラス拭きをさせる話を聞いたことがあります。現場を見たわけではありません。
最近は「女の家族が、いてはるんやったら...」というわけで、生活援助サービスは使えないそうです。お風呂介助の身体介護は頼めるらしいです。
男の家族がいても、生活援助サービスは使えないそうです。
施設でも、サービスが切り捨てられているのかなと、疑問に思っていました。
朝日新聞では、家族による利用者への虐待があるから「虐待が無いか」調べる必要があると書いてありました。
我が家も、そのうち、取り調べを受けることになるんじゃないでしょうか?
「あの家族は、母親を虐待してるにちがいない」とか通報されて...。

Posted by 大谷佳子 at 2013年04月09日 02:44 | 返信

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